連載「記憶の本棚」 第15回
加島祥造さんが亡くなった。新聞の追悼記事では「詩集『求めない』で知られる詩人」と書かれているとおり、老子に傾倒し、現代に生きる仙人のような風貌をした加島さんのその詩集がベストセラーになったことはまだ記憶に新しいが、正直なところその辺はわたしにはまったく関心がない。記事には、英米文学者として、「ウィリアム・フォークナーやマーク・トウェインの翻訳がある」という業績も紹介されていて、たしかに加島訳でフォークナーの『八月の光』などを読んだ記憶もあるが、それもわたしの個人的な体験の中