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TikTok ShopいよいよEU進出?スペイン、アイルランドで10月ローンチに向けて準備中か

当noteではこれまで、主にEUにおけるTEMUSHEINAliExpressといった中国発のECサイトの動向を追っています。

しかし、もうひとつ忘れてはならない中国テック企業があります。
それはTikTokを運営するByteDanceです。

TikTokは、TikTok Shopというソーシャルコマースプラットフォームを展開しています。このプラットフォームは、日本ではまだローンチされておらず、現在このサービスを利用できるのは、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、英国、米国の8か国です。(2024年7月現在/TikTok For Business

今年に入ってから、実はEUのEC界隈では、TikTok ShopがEUに上陸する!しない!と話題が飛び交っていました。
当時、米国でもTikTok Shopの存続が危ぶまれていたことで「米国に注力したい」と、ByteDanceがEUへのTikTok Shop進出を断念したと報道されたのは、奇しくもEUがSHEINに続きTEMUをVLOP指定した直後でした。

さて、そんなTikTok Shopに、また新たな動きが。



TikTok、10月初旬にスペインでショッピング・プラットフォームを開始

出典:TikTok lanzará su plataforma de compras en España a principios de octubre(merca2)

TikTokはヨーロッパでのEコマース活動開始を1分たりとも無駄にするつもりはなく、間違いなくスペインとアイルランドでヨーロッパでのショップ展開を開始する。同社は40人を雇用してスペインでのオンラインショップ事業の準備を始めており、マドリードとロンドンのオフィスでは、ソーシャルネットワークの新たな商業活動に関連するあらゆる機能を遂行するため、スペイン語を話す従業員を募集している。

人気のショートビデオ・ソーシャル・ネットワーク内のショッピング・プラットフォームは、10月初旬にスペインとアイルランドで利用可能となり、旧大陸で最も急成長している事業を拡大するために停滞していたキャンペーンが再開される。

ソーシャル・ネットワーキング・スタートアップのByteDance社は、ここ数週間、関係する加盟店やクリエイター・エージェンシーを含むパートナーに対し、TikTok Shopの2カ国でのデビューに備えるよう通告したと、プロジェクトに近い情報筋が伝えた。同じ情報筋によると、来年にはヨーロッパの他の地域にもポータルを導入する準備が進められているものの、立ち上げは以前の計画よりも小規模になるとのことだ。

TikTokによると、Shopのヨーロッパでの計画について、同社は「あらゆる規模のビジネスをサポートし、我々のコミュニティが彼らの好きな商品を発見し、交流できるようにするため、この新しい商取引の機会を試し続ける」とコメントしている。

人気のショートビデオ・ソーシャルネットワーク内のショッピングプラットフォームは、10月初旬にスペインとアイルランドで利用可能になる

TikTok Shopはスペインで約40人の従業員を採用し、同社にとってヨーロッパ最大級のEコマース拠点(現時点で)となったが、同社の求人ページによると、マドリードとロンドンでも物流からフルフィルメント、ショッピング戦略まで、スペイン語を話す従業員を募集している。

欧州でのデビューをより小規模なものにするという計画は、同社がこの地域の当局からより大きな監視を受けることなくリーチを拡大しようとしていることを示しているのかもしれない。EUの欧州司法裁判所(General Court)は、中国のソーシャル・ネットワーキング・プラットフォームは大手テック企業を抑制する新法から逃れられないとの判決を下し、規制当局はTikTokが子どもたちに有害な機能を提供していないか調査している。

米国でTikTokが禁止されれば、多くのインフルエンサーやその他のビジネスが台無しになるかもしれない。/出典:TikTok lanzará su plataforma de compras en España a principios de octubre(merca2)

Tiktokと米国の課題

TikTokは当初、今年初めにスペイン、ドイツ、イタリア、フランス、アイルランドにショップ機能を導入する予定だったが、月間ユーザー数1億7000万人と依然としてTikTok最大の市場である米国に注力するため、拡大を延期した。また、同社は地域経済により深く入り込むことで、事業売却や禁止法に対処しようとしている。

同社は今年、米国での製品取扱高を10倍の175億ドルに増やす計画だ。今のところ、共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏は、選挙で勝利した場合、TikTokを禁止する予定はないと述べている。

中毒性のある動画コンテンツと衝動買いを視覚的な方法で組み合わせたTikTok Shopは、アプリで最も急成長しているサービスだ。人目を引く動画、人気インフルエンサー、大規模な商取引の組み合わせは、Instagramや YouTubeのようなライバルとは一線を画し、Amazonと競合する道を開いている。

中毒性のある動画コンテンツと衝動買いを視覚的な方法で組み合わせたTikTok Shopは、アプリで最も急成長しているサービス

特筆すべきは、2023年末までにTikTok Shopは世界中で1,500万人以上の出品者を獲得したことである。このビデオネットワークは、親会社であるByteDanceの子会社が出荷・販売する商品を販売する「Trendy Beat」という新しいショッピングセクションをテストすることで、AmazonとSHEINに挑戦した。

この機能は現在イギリスのみでテストされており、中国企業が新たな商業活動を開始するためにAmazonの加盟店や従業員を仲間に誘い込んでいたため、競争力のある「悪知恵」を使った。

当時、このローンチに備えて、同プラットフォームは、当初2023年末を予定していたが、ほぼ1年遅れることになるこの新しいローンチに適合する重要なインフルエンサー(合計5,000人のフォロワーを持つ者のみがソーシャルネットワークから販売できる)を持つスペインの複数の代理店に連絡を取った。

TikTok Shopは、ByteDanceのトップクラスの有能な人材が率いている。DouyinのEコマース事業をゼロから立ち上げたBob Kangは、米国を中心にグローバルにShopを運営している。ByteDanceのToutiaoニュースアプリを運営していたKevin Chenは、現在ヨーロッパのShopを担当している。両経営陣は、SHEINやTemuなど、これらの市場で人気のある他のEコマースと競争しなければならない。

Source:TikTok lanzará su plataforma de compras en España a principios de octubre(merca2)

おわりに

〈考察〉なぜスペインとアイルランドにローンチするのか?

今回、なぜTikTok Shopの第一段階EU進出は、スペインとアイルランドが選ばれたのでしょうか。個人的に考えてみました。

eurostatによれば、アイルランドとスペインのSNS利用率は比較的高い国です。

2023年、ソーシャル・ネットワークのためにインターネットを利用した個人の割合/出典:59% of EU individuals using social networks in 2023(eurostat)

アイルランドについては、EUで英語が公用語のひとつとなっているのは、アイルランドとマルタです。その中でもアイルランドは、英国からほど近く、例えばAmazon.ukなど英国からのサービスを多く利用している国でもあります。
来年、アイルランドにはAmazon.ieがローンチされますけどね。

アイルランドは英国の他に米国とのつながりも強く、また、TikTok Shopはちょうどこの2か国で現在サービスを展開中であることから、言語もそのまま移行させやすく、候補に上がったのではないかと考えます。

さらに、アイルランドは、EUの中でも外国企業が比較的進出しやすいというのもあります。例えばTemuを運営しているPDD Holdingsの本社は、現在アイルランドの首都ダブリンにあります。

次にスペイン。
EUは各国様々な言語が話されており、スペインはスペイン語を話します。ただし、世界に目を向ければ、スペイン語圏はスペインだけではありません。中南米がありますね。スペイン語は世界で3番目とも4番目とも言われるほど、世界で最も話されている言語のひとつです。TikTok Shopはまだ中南米には進出していないので、言語という視点からも、今後中南米進出も視野に入れての、今回のスペインだったのではないかと考えられます。

また、スペインはEUの中で経済的な不安は多少あるものの、ECの利用においてはとても活発な国のひとつです。

今や米国、英国にも席巻している自国アパレルブランドZARAの世界的なEC展開と同時に、格安ECサイトTemuやSHEINへの食いつきも良いスペインは、越境EC展開のデータ収集には持ってこいな国かもしれません。

アイルランドとスペインを足がかりに、TikTok ShopのEU進出は成功するか、今後も動向が注目されます。


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