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木葉功一
2022年5月27日 09:13
がらんとした水族館の大きなトイレの中を歩く右足がずぶりと床に沈む汚物が滲んで靴下が汚れる若返った母親と手をつないで水族館の外へ出る我慢ばっかりしている人は自分で自分に怒ってる自分を虐めんのもうやめな母親がさらに若くなり少女に戻って怒鳴りちらすまたそれ しつこい もういやだ彼女の魂は体を捨てて走ってどこかへ逃げていく残された体は惚けるぶつぶつ何かをつぶやいて笑う砂丘
2022年4月8日 01:15
救急病院の入り口に 車を横づけして降りるどうしましたか、と女性医師デイジーが死ぬ死んでしまう手首を切って 首をつって屋上から飛び降り 電車に飛び込み 脳腫瘍で 心筋梗塞で 肺癌で感電事故で 感染症で アナフィラキシーショックで通り魔に刺されて ライフルで撃たれて毒ガスをまかれて 白燐弾にやられて凍えて 溺れて 火傷で死にそう殺さないで 死なさないで助けてください 命をとどめ
2022年4月7日 00:23
食糧難になりつつあるスーパーは暗くて品物も少ない米袋に囲まれた部屋の中にいるいつ備えたのか分からない米を研ぐと水に溶けて消える消えてない、ここにある半透明な男が横で言い排水口のゴミ受けを外して見せる何もない 研ぎ直すまた消える農家さんに電話する無くなるどころか余ってる価格がどんどん下がってくこれじゃ来年作れない苦い声を聴きながらロスタイムを生きていると知るぱぁん、
2022年4月6日 23:11
夜勤の仕事の休憩時間同僚と繁華街へ行く人生相談の看板で外壁がおおわれた黄色いビルの中に入るエレベーターが檻のよう同僚はいなくなりメキシコ人の女と双子の少年が乗っている同じ空気を吸っちゃだめだそう思って息を止めるSerían un buen cebo.メキシコ人の女が笑うエレベーターのドアが開くのに合わせて体の肉が右から左へ消える骨になって歩き出す外は春の牧場で双子の少
2022年4月5日 22:51
激しい雨が降っている雑居ビルの屋上で映画監督と影が喧嘩をしてるハンティングナイフを監督が振り上げ影の頭を上から突き刺す刃が顎まで貫通する二人の体が入れ替わりぎゃああと監督が悲鳴をあげるずぼり、と影がナイフを引き抜き監督の鼻と左目の周りをぐるりとえぐって切り落としそれから顔の右半分を顎に向かってざっくり削ぐ監督の顔は雨に流れて雨どいの中で詰まってしまう目玉が外れ 一階
2022年4月4日 17:34
海をひとりで泳いでるすぐ横の海中に大きな瞳が現れる歯が 口が 顔が現れ波を持ち上げ 水面を割るそれは大きなシャチの頭でイルカのようにじゃれついてくる遊びながらいっしょに泳いでいると口の中から木が生えてくるみるみるうちに大木になり壁のように視界を覆う抱きついてみる脈打っている深い森の中にいる(終わり)
2022年4月4日 04:01
瓦礫を積み上げて作られた違法建築の塔があるそこにいるのは男たちばかりであとからあとから 出入りが激しい階段はなく 外壁を登る錆びた取手を頼りに上がる何度もへし折れ 落ちそうになる何人も 何人も 落ちていく必死に頂上へよじ登る屋上のペントハウスから出てきた男が何がほしい、と訊いてくる分からない 忘れてるここへ何しにきたんだろうペントハウスの周囲には大量のズボンが脱ぎ捨て
2022年4月4日 00:54
占星術家の家へ行く金属の粉を吐きながら喋る男を紹介される一緒に駅まで行くけれど 電車には乗らずに俺だけ戻る面倒くさい奴だったから君に押しつけた、と占星術家に言われ酷いな、と思いながら非常階段を駐輪場へ降りる自転車がメチャメチャに壊されて植え込みに投げ捨てられている私が壊した、と占星術家が言い彼のお下がりの自転車をくれる俺は乗らずに肩にかついで今書けなくなってます、と言う
2021年8月22日 06:22
雨上がりの道を歩く駐車場の空きスペースに人のかたちをした水が立ってて俺はお前だ、 お前は流れだ、流れが枯れるまで生きろ、と言うわかった、と答えて歩くたっ たっ じゃたっ たっとくん とくん たくん たくん人のかたちの水の流れが自分の中に確かにある濡れて輝く立ち木の梢が顔をかすめてきらきら光る(終わり)
2021年8月11日 19:11
巨大なマンションに住んでいるメールボックスの前に立つ自分名義の小さなポストが高い所に増設されてる開くと請求書が数十枚レンタルソフトの滞納料金何年溜めたか分からない結婚を約束していた女医がキッチンで突然死してしまう心臓の疾患と思われる彼女の職場へ報告に行き中華料理を出されて食べる麻婆豆腐が異様に美味いいろいろ訊かれて答えられない彼女の死体を見た記憶がないマンション
2021年8月11日 18:36
大風が吹いて家の中がメチャクチャ家族は怖がり 自分は平気庭に出て植木鉢と 金髪のヘアウィッグと 水色のオウムを拾って戻る廊下に中華包丁を持った手配中の殺人鬼が隠れていて包丁の刃を 後ろから首に当てられる払って逃げる 手の平が切れる生命線がぱっくり開く殺人鬼が家の奥へと入り家族の誰かを襲ってる悲鳴が上がりどん、ごろごろ、と首が転がる音がする白い蛇革のスーツケースが玄
2021年8月11日 17:55
朝陽に染まった町並みの上を自分の影が飛んでいる他にもいくつか飛ぶ影がある家に戻ると生まれたばかりの赤ん坊が窓辺に置かれたベッドに寝てる栗色の明るい瞳むちむち太った白い手足太いしっぽが生えているメタリックな鱗が美しい龍のしっぽ、と妻が言う赤ん坊がにっこり笑う視界いっぱいに迫る岩肌青ざめた白とクリーム色流れる雲の隙間から尖った山の頂が見える高い空をいく飛行機のよ
2021年8月10日 17:51
子供が病気で入院する悪いことをいっぱい考え医者の前で取り乱し家に戻ってベッドに倒れ天井を見ながらはたと気づく嫌い続けてきた母と今の自分はそっくりだ不安と心配の区別がつかない同じ鋳型の魂だ彼女を嫌い 突き放し 縁を切って生きるのは自分を嫌い 突き放し 縁を切って生きること逃亡中の犯罪者かよ情けなくなり ふて寝する夜中に子供が退院しひとりで歩いて帰ってくるおかえり、と玄
2021年8月8日 15:59
真っ黒に日焼けした銀髪の女の子の家に泊まる四角い螺旋階段を地下へと下りる一階ごとに金や緑やピンクの髪の姉や妹が男といる地下四階から灯りがなくて父親と母親が廊下に立ってる挨拶するとあうう、と唸る地下五階が彼女の部屋朱色の石室朱色のベッドで銀髪の女の子と抱き合い 交わる熱い吐息と ひんやりした乳房何度も何度もささやかれる 理解できない短い言葉とろけるように達しながらこ