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ソムニウム(77)メールボックス


巨大なマンションに住んでいる
メールボックスの前に立つ
自分名義の小さなポストが
高い所に増設されてる
開くと請求書が数十枚
レンタルソフトの滞納料金
何年溜めたか分からない

結婚を約束していた女医が
キッチンで突然死してしまう
心臓の疾患と思われる
彼女の職場へ報告に行き
中華料理を出されて食べる
麻婆豆腐が異様に美味い
いろいろ訊かれて
答えられない
彼女の死体を見た記憶がない

マンションに戻って
エレベーターを使う
ドアが開くと
フランシス・ベーコンの絵のように
溶けて崩れた人が乗ってる
頭にべったり貼りついた
髪の下には顔がなく
首も 肩も 左手もなく
胸の位置に腹筋がある
右手を上げて立っている
メールボックスががたがた揺れる
エレベーターを閉めて 階段を使う
叫ぼうとして クスクス笑う

リビングの真ん中に
占星術研究家の老人が立ってる
大きなバックの中に入る
チャックを閉めて また出てくる
どうしてバッグに入ったか訊く
答えてくれるが
理解できない
老人と抱き合ってベッドで眠る
久しぶりに熟睡できる、
と思う


(終わり)

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