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ソムニウム(82)監督の眼球


激しい雨が降っている
雑居ビルの屋上で
映画監督と影が喧嘩をしてる
ハンティングナイフを監督が振り上げ
影の頭を上から突き刺す
刃が顎まで貫通する
二人の体が入れ替わり
ぎゃああと監督が悲鳴をあげる
ずぼり、
と影がナイフを引き抜き
監督の鼻と左目の周りを
ぐるりとえぐって切り落とし
それから顔の右半分を
顎に向かってざっくり削ぐ
監督の顔は雨に流れて
雨どいの中で詰まってしまう
目玉が外れ 一階まで
雨どいの中を落ちていく
一部始終の出来事を
見ていた自分は目玉だと気づく
切り落とされた顔の下には
肉も骨もなく真っ暗で
血が一滴も流れなかった
ころろろろ
と地面を転がり
止まったところで夜空を見る
降り続けている雨の中
屋上から赤い鳩が飛ぶ


(終わり)

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