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ソムニウム(84)希望の玉


食糧難になりつつある
スーパーは暗くて品物も少ない
米袋に囲まれた部屋の中にいる
いつ備えたのか分からない
米を研ぐと水に溶けて消える
消えてない、ここにある
半透明な男が横で言い
排水口のゴミ受けを外して見せる
何もない 研ぎ直す
また消える
農家さんに電話する
無くなるどころか余ってる
価格がどんどん下がってく
これじゃ来年作れない
苦い声を聴きながら
ロスタイムを生きていると知る
ぱぁん、
と窓ガラスが割れ落ちて
翼の生えた茶色の猫が
部屋の中へ飛び込んでくる
玄米をやると美味そうに食べる
一緒に眠る
飼うことにする
日に日に猫は小さくなり
とうとう鶯になってしまう
左の肩にとまって鳴く
クェッコル・クェッコル・ソリリリリ
するとパソコンのモニターから
青いルリビタキが飛び出してきて
右の肩にとまって鳴く
フイーフィ フィ・フィ・フィ
鳥籠を作って二羽を入れる
止まり木に乗って身を寄せ合う
この世界では鳥を飼えない
法律で禁止されている
でも手放すつもりはさらさらない
クェッコル・クェッコル
フィ・フィ・フィ


(終わり)

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