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ソムニウム(79)ロードレーサー


占星術家の家へ行く
金属の粉を吐きながら喋る男を紹介される
一緒に駅まで行くけれど 電車には乗らずに俺だけ戻る
面倒くさい奴だったから君に押しつけた、
と占星術家に言われ
酷いな、
と思いながら非常階段を駐輪場へ降りる
自転車がメチャメチャに壊されて
植え込みに投げ捨てられている
私が壊した、
と占星術家が言い
彼のお下がりの自転車をくれる
俺は乗らずに肩にかついで
今書けなくなってます、
と言うと
透明な人間が背中に張りつき
私もだ、
でもそれはいい、
書けないのは○○だから構わない、
重要なのは自転車を変えること、
と耳元でささやく
そうだったのか、
と思いながら
自転車をかついで塀の上を歩く
壊されたのはカゴつきのシティサイクルで
もらったのは走ることに特化した
華奢なロードレーサーだ
断崖を歩くように草原を進め、
と耳元でまた声が言う
俺は自転車を肩から下ろし
街並みに沿ってどこまでも続く
塀の上に立てて
走り出す


(終わり)


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