見出し画像

私の尊敬する陽キャの話(小説)

中学2年の頃に、ある陽キャと仲良くしていた。
ふざけるところは全力でふざけて。
真面目にやるところは全力で真面目にこなす。
なんでも全力でやっていた彼は、彼女が出来ることが少なかった。
キャラがふざけているキャラだったからなのか、断っていたのかわからないが彼女もできなければ女子と話していることは多い。
そんな私の憧れている陽キャについて今回は紹介しよう。

ある日、キャラがまだ決まりきっていなかった私がクラスで滑った。
私のキャラを昔から知っていた陽キャは、フォローに来てくれた。
そのフォローが驚くほどに面白く、滑ったことを忘れるくらい場が和んだ。
陽キャがこちらを見ながら、馬鹿にしてくると思ったら、
ニコニコしながら、
「お前、面白いな!」
周りが滑った奴になんで優しくするんだ?
そんな顔をしていた。
陽キャの性格を知らなかった奴が多かった現場で、
一気に陽キャの性格の良さが際立った。

私がクラスに馴染んできたときに、席替えがあった。
陽キャが同じ班になった。
陽キャはいつも話していた奴が遠くに行ったにもかかわらず、
「お前でよかった」
そんなことを私に言った。
案の定。私は一気にうるさくなった。
元々、クラスの上の立場にはいたが女子とは交流のなかった私が、
近くに来たのが、まだよかったらしい。
私は陽キャと席が近くなってから、女子との交流が多くなってきた。
休日も陽キャと俺、女子2で遊びに行くほどには仲が良くがなった。
同じアニメが好きで、同じスポーツをやっていた陽キャは、話をしていて面白かった。
そんな陽キャにも彼女が出来た。見たことのない陸上部の先輩、
そいつのタイプがなんとなくしかとらえられていなかった私だが、
彼女の雰囲気で分かってきた。

陽キャは、彼女と別れた。
その日に陽キャは休んだ。
連絡をもらって、そのあとにふて寝したらしい。
帰りに陽キャの家に訪れた際に、目の下が腫れているのが分かった。
どうやら、一日泣いた後に朝から寝たらしい。
考えてみれば、陽キャは今年初めて休んだ。
10月に入って、先輩が受験を理由に分かれたのに、週末にインスタに
男子と遊びに行っているストーリーを見たらしい。
目の下が腫れた。人形のような顔の下陽キャ?
に見える奴と私は1時間は話していた。
一方的に話を聞いていたが、だんだん笑顔が増えていっている彼をみると、
なんだか安心した。

次の日、陽キャはいつものテンションで学校へ帰ってきた。
クラス中の人が陽キャの席に集まり、質問攻めにしてる。
熱を理由に休んでいたらしく、俺しか本当の理由を知らなかった。
どう見ても適当な返答で、熱の温度を答えていた。
まるで嘘に見えない。
つきなれている。本当の嘘だった。
何度もその嘘は、そんな感じの嘘は聞いたことがあった。
この陽キャは、この人間は。
一人でトラブルを抱えて生きてきたのだ。
とても生きずらかっただろう。ウソがばれたら、本当のことがばれたら、
自分の立場が怪しくなる。
陽キャの世界はそんなもんだ。
日に日に、権力?と呼ぶものが変化する。
それが面倒で私は陽キャには入りたくない。
本当に頭がいいやつしか生き残れないのだ。
テストの点でも計れない。
人間力という、現代社会で一番大切な点数を持っている人間しか生き残ることの難しい。いや、出来ない世界それが陽キャだ。

私にも彼女が出来た。
8日で別れ、クラス中、学年、学校中に広まった。
私が陽キャだったらこの時点でendだ。
危なかったと考えていた。
未練もなく分かれたので、陽キャのようにかなしいという感情がなかった。
私が悪かった部分や、相手の面倒くさい部分が見えてきたので別れた。
私からだった。
普段、おとなしくしている癖して本性はクソカス女とわかり、
一瞬で振ることを決意し、行動に移した。
学校中にいつの間にか名前が広まっていたのでどこに行ってもその話題で持ちきりだった。
自分の時に一晩中泣いていた陽キャが私に声をかけてきた。
「大丈夫か?」
どうやら、私が心のそこで泣いていると思っていたらしい。
本当に優しいやつだ。
「別れ話で持ちきりだったので飽き飽きしていただけ」
私がそういうと、陽キャはニカっと笑った。
その夜、元カノから連絡があった。
「元々と同じ感じで話してくれていいからね‼」
馬鹿な女だ。
だから陽キャに交じっているだけの女は嫌いなんだ。
自分は他とは違うと思っている。謙虚という言葉を知らない。
私はそっとスマホの電源を落とした。

学期末、最後の席替えがあった。
陽キャとは少しだが、席が離れて
元カノとガッツリ距離が開いた。
少しほっとしたのもつかの間。
陽キャが元々カノと隣の席になり、きまづい雰囲気になっていると思った。
想像していて生きてきたはずだった。
全て、ほとんど、想像通りにことが進んできた。
だが…これは…予想外だった。
「わかる~!」
「それな~!」
何事もなかったように、陽キャが元カノとしゃべっている。
圧倒的コミュ力。からの、話の引き出しがほぼ無限だ。
褒め上手で。貶し上手。
抜け目のない私のあこがれの人。
そんな彼は今、どこで何をしているのだろうか。
想像もできない。

この記事が参加している募集

最近の学び

眠れない夜に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?