週刊少年松山洋_タイトル_調整

アラブの石油王なんて存在しない

「僕の作品を見ていただいていいですか?」

私は普段のゲーム開発の傍ら全国の専門学校や大学をまわったり、説明会や講演を行うことでだいたい年間のべ3,000人から4,000人の学生さんの前で話をします。

そうすると講演終了後に元気な学生さんがポートフォリオ(自身の作品集)を持って“こう”言ってきます。

「今、ゲーム会社に就職を考えていて作品を作っているのですがちょうど持ってきているので僕の作品を見ていただいていいですか?」

もちろん喜んで拝見します。

で、パラパラとポートフォリオをめくるとほとんどの学生がCG(コンピューターグラフィック)作品でもなく、イラストやデッサンだけの作品集になっています。

「??えーっと、イラストしか無いみたいですが志望職種はなんですか?」

って聞くと

「なんでもやりたいです!頑張ります!」

って言われます。

「いや、なんでもでは困りますよ。具体的な職種を定めていただかないと」

「僕、絵が好きなんです!絵を描く仕事がしたいんです!」

「あー、だったら漫画家がいいのではないですか?」

「いえ、ゲームが大好きなのでゲームクリエイターになりたいんです!」

「え、けどイラストしか描いてませんよね?」

「2Dのゲームが作りたいんです!」

「あー、なるほど」

「2Dだけだと駄目ですか?」

「いや、決してそんなことはないですけどかなり難しいですね」

「何故ですか?」

「えーっと、じゃあ、今売れているゲームソフトの中で2Dゲームのヒットタイトルって何か挙げてもらえますか?」

「え!?」

「挙げてもらえますか?」

「うーん、あー、ヒットタイトルって3Dのゲームが多いですね」

「ですよね」

これは本当に多いやりとりでほぼ実録のような会話です。

そして続きます。

「あのー、じゃあ、やっぱりイラストレーターにします!」

「あ、そうですか」

「僕の絵ってイラストレーターとしてやっていけますか?あ、ゲームのキャラクターデザイナーでもいいです。絵が描きたいんです!」

「だったら漫画家になることをお勧めしますよ」

「いや、僕お話を作るのが苦手なんで絵を描きたいんです!」

「じゃあ、難しいですね」

「え!?難しいですか?どこが駄目ですか?」

「いや、不可能ではありませんがかなり難しい分の悪い闘いだと私は思いますよ」

「どのへんが難しいですか?」

「逆に聞きますが。あなたはこのまま自分の好きな【描ける絵】を描き続けていれば、いつか誰かの目に止まって“おお、君の絵はなんて素晴らしいんだ!ぜひわが社のゲームのキャラクターデザインに採用させてくれたまえ!”って言われると思ってます?いつまでたってもそんな日はやってきませんよ?だってこの世界にそんな【アラブの石油王】なんて存在しないんだから」

本当にここまでがワンセットです。

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アラブの石油王なんて存在しない

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