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短編小説&エッセイ | 7:30~7:35AM

短編小説 | 7:30~7:35AM

(1)
 家を出て職場へ向かう途中、いつも5分だけ公園へ寄り道していくことにしている。
 とくになにをするでもない。風にあたるだけでもよい。少し歩くこともある。ちょっとトイレに寄るときもある。

 だいたいいつも同じ時間に公園に行く。5分程度の滞在時間だ。その5分の間に、毎朝出会うようになった男がいる。
 いつも出会うときは、ワイシャツにネクタイをしているから、私と同じで、これから職場へ向かうところなのだろう。
 
 その男もとくに変わったことをしているわけではない。たまに煙草を一本吸っているのを見かけるが、ほとんどの場合、なにをするでもなく、ただボーッと公園の木々を見たり、鳥の囀ずりを聞いているだけである。

 お互いにこれから仕事へ行く身だから、とくに話しかけようとは思わない。しかし、毎朝同じ時間に出会うから、お互いの顔は認識している。いつしか、目と目とがあえば、会釈するくらいの間柄になった。

(2)
 晴れているときは、私とその男は毎朝同じ時間、同じ場所で出会うのだが、何日か雨が続いたときがあった。
 雨が降るような日には、私は公園へ寄り道をせず、直接職場へ向かっていた。男と会わない日が何日か続いた。

(3)
 何日か振りにやっと晴れたとき、公園へ寄った。久しぶりに男に会った。
 いつもは会釈するだけだが、その日は男のほうから「おはようございます。お久し振りですね」と声をかけられた。
 少し戸惑いながら、私も「おはようございます」とあいさつした。そのまま、立ち去ろうとしたのだが、男はさらに言葉を続けた。

「私、実は、ずっと無職なんです。あなたと出会うようになってからずっと」

 少し驚いた。無職なのに、なぜ、いつもワイシャツ姿の彼がここにいるのだろう?

(4)
「私には居場所がないのです。会社が倒産してから、新しい職を探したものの、仕事が見つからなくて。かと言って家にいると、妻からも子どもからも白い目で見られてしまって。だから、この公園に毎日『出勤』しているんです」

「ごめんなさい。もうそろそろ行かねばなりません。すみません」

 私はそう言い残して、立ち去るしかなかった。


エッセイ | 朝の5分は貴重だけれども

 この記事の小説は、フィクションである。無職の男の話は妄想にすぎない。

 しかしながら、職場へ行く前に、公園に少しだけ立ち寄ることがあるのは本当のことである。

 家を出て、そのまま職場へ行くのって、なんか嫌なのです。
 晴れた日にはほぼ100%の確率で、公園かどこかに寄っていく。
 直接出社すればいいのだけれど、5分間の寄り道をしないは、1日中なんか調子が良くない。

 朝の公園は、ランニングやウォーキング、犬の散歩をしたりしている人がほとんどだが、スーツ姿のサラリーマンもちらほら見かける。

 家というプライベートの空間から、職場という公の場へ向かうとき、一人でボーッとしたい気持ちになるのです。
 忙しい時間だから、公園へ行く5分間は無駄かなぁ、と何度か思ったことがあるが、欠かせない時間なのです。

 多くの仕事は、屋内で過ごすことが多いと思うのですが、ずっと屋内にいると気が滅入るなんてことはないだろうか?

 人間といえども動物だから、日の光を浴びたり、風を感じることなく、ずっと屋内にいると、あまり良くないような気がしている。
 気持ちが理解できる人が他にもいるかなぁ?、と思って、小説とエッセイを書いてみた。

 会社の会議だって、室内でするのと、屋外でするのでは、多少結論が変わってくるような気がしている。どうでしょう?


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