2022年4月の記事一覧
雨と宝石の魔法使い 第四話 リリーフ街の秘密
武藤響(むとう ひびき)は仕事からの帰り道、いつも一つ手前の駅で降り、自宅まで歩いている。40歳を越え、体力の衰えと、腹の出た中年の身体を憂慮して始めた習慣だった。
自宅の最寄り駅の手前にある武蔵橋駅には、小さな商店街「リリーフ街」が駅のロータリーから直結しており、夕方は地元客で結構な賑わいを見せていた。
今日も武蔵橋で降りるとそのまま大通りを通って自宅へ向かおうとしたが、花粉症の薬が切れてい
【創作】受け継がれる夢
「ねぇ、これって写真?どこの?」
土曜日の午後、5歳の息子ルイと留守番していた。ルイは僕の書斎から、何か気になるものを見つけたようだ。
それはかなり古い絵葉書だった。写真のようにも見えるが、おそらく緻密なスケッチ画だろう。荒海に浮かぶ孤島の上に、高い塔のあるお城が建っている…そんな風景画だ。宛名や文章などは書かれていず、どこかの観光旅行のお土産で買った絵葉書… そういう類の。
「ルイ、こん