大切なものを誰かに差し上げるとき 「どうぞ」 チビ猫のころ、教わった 両前足のプニプニに その大切なものを載っけて、 「どうぞ」 このごろときどき思う。 猫たちも人…
離陸した飛行機が水平飛行に入る。 高度はだいたい一万メートル、ぐらい? 高度一万メートルは、雲の中。 窓際の壁が伝える冷気に微かに感じる 外は、ちょっぴり宇宙。 1…
五月一日、うるう年なら 立春から数えて八十八日目 夏も近づく八十八夜。 五月一日は フランス猫たちにとっても、ちょっと特別な日。 春分から夏至までの三か月をほぼ二分…
燃えるゴミの収集日に よく顔をあわせた。 相手は朝ごはんの真っ最中、 黙って横を通るのも失礼かニャア で、尻尾を立ててご挨拶。 ―— おはようございます…… ―— ………
早春の野のオオイヌノフグリ は、Veronica persica ペルシアの ヴェロニカ(クワガタソウ)。 お散歩ネコたちの鼻先がちょっと触れても 花弁はそよぎ、萌えそめた草に隠れ…
春先に姿を見せる青い小花 はかない風情の愛らしい花の名は なぜかオオイヌノフグリ。 オオイヌってオオイヌ座のこと? オオイヌ座の主星シリウスは、天の狼。 蒼ざめた氷…
お金といっても、お銀(かね)、 銀が流通貨幣だった時代のお話です。 中国は宋の時代、 若いころから生業に精を出しそれなりに財を蓄えた老人がいました。 老人は収入の…
久しぶりに『魔笛』を聞いた。 モーツァルトの作曲、シカネーダー台本の ジングシュピール、台詞のある音楽劇。 パ、パ、パ、パパゲーノ 陽気な鳥刺しの声がする。 恋人が…
小さなことば、 何気なく交わすことば あいさつのことば。 「おはよう」「こんにちは」 いまではあまり聞かないから ちょっと遠慮がちに 「ごきげんよう」 「ごきげんよ…
生れた時から飼い主のいない野良ネコでした。 兄弟ネコがミィミィ鳴く生温かな場所から 目もちゃんと開いてはいなかったけれど お母さんを探して這い出したのを覚えていま…
フランス中央山塊、 オーヴェルニュ地方の 小さな村の教会に そのロバさんはいた。 大学に入って一年目の秋、 新学年の履修登録会場には 先輩たちが詰めていて 新入生に必…
おいる、は老いる。 黒猫だった子猫も、いまではグレイ猫。 キラキラ白髪が増える分、できないことも増える。 きのうまで、できていたのに! 何日か前, バレエの真似をし…
いつもの電車に 盲導犬とお連れが乗ってきた。 イヌさんは、ラブラドールレトリバー お洒落な花柄ベストが 黒い毛とよく似合う。 「お席、あいてますよ。」 「端でないと…
夏の終わりに ムカデと出会った。 夜、ひとりでテレビを見ていたら 目の前の床を猛スピードで 走って行った。 何日かして、また会った。 (同じムカデ?) 今度は台所で、…
夏がすっかり終わって お月見も済みました。 〽うれし悲しや、月見の団子 食べりゃ、夜なべも、せなならん (しなければならない) こんな戯れ歌を聞かせてくれた 明治生…
紀元前三世紀 江南の詩華集『楚辞』は 香草、薬草でいっぱい。 ラン、モクラン、カキツバタ、 メボウキ(バジル)、シナモン フジバカマ…… 神々の降臨を願って 巫(かん…
子猫
2022年6月25日 13:59
大切なものを誰かに差し上げるとき「どうぞ」チビ猫のころ、教わった両前足のプニプニにその大切なものを載っけて、「どうぞ」このごろときどき思う。猫たちも人間も、とても大切なものを生れたときから持っていて(というか預かっていて)それは、もしかすると小さな、石のかけらだったりしてときどき思い出してはちょっと触ってみる悲しいとき、口惜しいとき体がしんどいとき気持ちがしん
2024年5月21日 10:17
離陸した飛行機が水平飛行に入る。高度はだいたい一万メートル、ぐらい?高度一万メートルは、雲の中。窓際の壁が伝える冷気に微かに感じる外は、ちょっぴり宇宙。1970年代の大阪―パリ便は週に数回、たいてい夕方こちらを発って夜を旅して順調に飛べば翌朝、目的地に着く。綿菓子のなかに迷い込んだような鋼鉄の翼の上に乗っかって横着子猫は機内食(お喉 ♡ ゴロゴロ)飛行機だってきっとお
2024年5月7日 14:51
五月一日、うるう年なら立春から数えて八十八日目夏も近づく八十八夜。五月一日はフランス猫たちにとっても、ちょっと特別な日。春分から夏至までの三か月をほぼ二分するこの日、猫たちは大切な相手に ”幸運のお守り ♡ スズラン” を贈る。小さな造花を飾ったチョコレートの植木鉢も美味しいしお花屋さんの店先に整列したコたちも立派だけれど、猫たちは、木洩れ日の ”森のスズラン” !パリ市
2024年4月17日 14:24
燃えるゴミの収集日によく顔をあわせた。相手は朝ごはんの真っ最中、黙って横を通るのも失礼かニャアで、尻尾を立ててご挨拶。―— おはようございます……―— …………(無視)何回か同じことを繰り返して、ある朝―— おはようございます……―— カァ。 🥡 🍟 🍗春ですニャーお天気のいい日には、お洗濯。お日さまいっぱい🌞物干し場でご機嫌いっぱい�
2024年4月8日 11:22
早春の野のオオイヌノフグリ は、Veronica persicaペルシアの ヴェロニカ(クワガタソウ)。 お散歩ネコたちの鼻先がちょっと触れても花弁はそよぎ、萌えそめた草に隠れる。欧州猫の憧れの地ペルシア、西アジアに生まれた花の淡い青をイスラームの猫たちは貴石ラピスで彩色(いろど)った。 🍃ヴェロニカは、伝説の聖女の名。エルサレムの旧市街、彼女は<悲
2024年3月1日 14:22
春先に姿を見せる青い小花はかない風情の愛らしい花の名はなぜかオオイヌノフグリ。オオイヌってオオイヌ座のこと?オオイヌ座の主星シリウスは、天の狼。蒼ざめた氷の牙はトロイの勇者の槍の切先。ホメ―ロスの戦(いくさ)の星はこの冬もまた地上の殺戮を見た。けれど、やがて現れる若い太陽の神、『楚辞』九歌に舞う「東君」は青い雲の衣に白い霓(にじ)の裳 青雲衣兮白霓裳 長い矢をつがえて、
2024年2月20日 12:29
お金といっても、お銀(かね)、銀が流通貨幣だった時代のお話です。中国は宋の時代、若いころから生業に精を出しそれなりに財を蓄えた老人がいました。老人は収入の中から銀の小粒を少しずつ取り置いて、それが集まり百両(*)ほどになると、角柱形(当時の錠前のかたち)の銀塊に鋳直してもらうことにしていました。一個、二個……二個一対を赤い紐で括って、それも、いまでは八個四対。老人は錠銀を枕元に並
2024年2月9日 18:41
久しぶりに『魔笛』を聞いた。モーツァルトの作曲、シカネーダー台本のジングシュピール、台詞のある音楽劇。パ、パ、パ、パパゲーノ陽気な鳥刺しの声がする。恋人が欲しくって、やっと出会えたのは彼にぴったりのお相手、パパゲーナ。パパパ、パパゲーナパパパ、パパゲーノ 🐦パ。日本語には一つの音だけでちゃんと言いたいことが伝わることばがたくさんあるけど、フラ
2024年1月13日 19:23
小さなことば、何気なく交わすことばあいさつのことば。「おはよう」「こんにちは」いまではあまり聞かないからちょっと遠慮がちに「ごきげんよう」「ごきげんよう」は出会えた仕合わせをよろこびいまこの時の無事を祝う小さなことば。昔、京の尼門跡寺のお庭先へ迷い込んだ半ノラ猫にネコ好きの尼僧さんが教えてくださった。「こんにちは」も「さようなら」も「ごきげんよう」。ハングル
2023年12月25日 17:49
生れた時から飼い主のいない野良ネコでした。兄弟ネコがミィミィ鳴く生温かな場所から目もちゃんと開いてはいなかったけれどお母さんを探して這い出したのを覚えています。生れたのは夏の終わり。それからはずっと独りでした。だから狩りのやり方を習ったことも食べ物の探し方を教わったこともありません。とりあえず自分より小さな生き物を捕まえようとしましたが、トカゲもバッタも結構すばしっこくて
2023年12月11日 20:06
フランス中央山塊、オーヴェルニュ地方の小さな村の教会にそのロバさんはいた。大学に入って一年目の秋、新学年の履修登録会場には先輩たちが詰めていて新入生に必修や選択科目を紹介、ついでに有益な(?)助言も。—―《美術史Ⅰ⦆は中世建築。 近所の教会を見に行ったり、バスで遠出したり 現地見学…… 遠足が口頭試験のかわりだよ。 これに登録したら?—― 試験のかわりに、遠足? じ
2023年11月26日 15:02
おいる、は老いる。黒猫だった子猫も、いまではグレイ猫。キラキラ白髪が増える分、できないことも増える。きのうまで、できていたのに!何日か前,バレエの真似をしていて気がついた。フォーキン(1880‐1942)の「瀕死の白鳥」、作品の冒頭、白鳥を踊るソロダンサーが左右の脚を重ね、爪先立ちでコチョコチョ移動する、あの動きができない💦爪先で立って、コチョ、でおしまい。踵も尻尾も床に
2023年11月1日 17:20
いつもの電車に盲導犬とお連れが乗ってきた。イヌさんは、ラブラドールレトリバーお洒落な花柄ベストが黒い毛とよく似合う。「お席、あいてますよ。」「端でないとダメなんです。」「端のお席ですよ。」パートナーが腰を下ろすとそばに立っていたイヌさんは消えたと思ったら、座席の下で "伏せ" 。電車の振動とともにかすかに伝わって来る温もりにボーダーコリーのユリスを思う。
2023年10月9日 13:57
夏の終わりにムカデと出会った。夜、ひとりでテレビを見ていたら目の前の床を猛スピードで走って行った。何日かして、また会った。(同じムカデ?)今度は台所で、床と調理台の細~い隙間に細~くなって動かない。(隠れているつもり? でも、丸見えだよ)あまり動かずにいるのでほんとに足が百本もあるのか、数えてみようとしゃがみ込んだら相手と目が合った(?)。ムカデは見慣れぬ生きもの
2023年10月3日 15:39
夏がすっかり終わってお月見も済みました。〽うれし悲しや、月見の団子食べりゃ、夜なべも、せなならん(しなければならない)こんな戯れ歌を聞かせてくれた明治生まれの祖母猫は、秋が深まるころを≪寒なりこぐち≫と呼んでいました —―古い大阪ことばの響きで。こぐち、って小口?寒さを迎える小さな戸口?昼と夜の寒暖の差が大きくて羽織るものが欠かせないこのころは夏物と秋冬物を入れ替
2023年10月2日 13:50
紀元前三世紀江南の詩華集『楚辞』は香草、薬草でいっぱい。ラン、モクラン、カキツバタ、メボウキ(バジル)、シナモンフジバカマ……神々の降臨を願って巫(かんなぎ)たちが舞い歌う「九歌」にも、水辺に香る四季の草花。なかに唯一、香草が不在の「国殤(こくしょう)」は国の戦で命を落とした勇者への頌歌。原文は、七言十八句。すべての句の四言目に配された感動の助辞「兮(けい)」に舞い