子猫

書くこと、読むことが好きです。 子猫の名づけ親は、学生時代の恩師。以来、ず~と子猫を名…

子猫

書くこと、読むことが好きです。 子猫の名づけ親は、学生時代の恩師。以来、ず~と子猫を名乗っています。おばあさん猫ですが、 どこか子猫のまま、ネコジャラシたちに囲まれて、”ねこじゃら荘”でひっそりと生きています。

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どうぞ...

大切なものを誰かに差し上げるとき 「どうぞ」 チビ猫のころ、教わった 両前足のプニプニに その大切なものを載っけて、 「どうぞ」 このごろときどき思う。 猫たちも人間も、とても大切なものを 生れたときから持っていて (というか預かっていて) それは、もしかすると 小さな、石のかけらだったりして ときどき思い出しては ちょっと触ってみる 悲しいとき、口惜しいとき 体がしんどいとき 気持ちがしんどいとき 心の石っころに触ってみると ちょっとだけ丸くなっていたり 悲しいこと

    • 野分の宵に🌙玄宗と楊貴妃

      情(おもい)たぎる夏は過ぎ 心凪ぐ秋のはじまり 猫たちは口ずさむ 遠い日の記憶のままに ―—      野分だちて      には(わ)かに肌寒き夕暮れのほど      つねよりもおぼし出づる事多くて……                          『源氏物語』桐壷 最愛の女性、更衣を失った桐壷帝が 明け暮れ眺めていたという「長恨歌屏風」。 中唐の詩人 白居易(772-846)の七言古詩「長恨歌」。 テンポよく転換する場面を大和絵にうつし 職業歌人が恋人たちに代わ

      • 猫も歩けば

        猫も歩けば…… 本に当たる! 書名は聞いたことがあるけど まだ一度も読んだことのない本。 町の大きな本屋さんの文庫本売り場 青、赤、黄、緑に白、お洒落な岩波文庫 平積みされた新刊書にクルクル猫の目……ん? 『孝経・曾子(こうきょう・そうし)』 『孝経』って聞いたことあるよ。 チビ猫時代、先輩のワル猫が 教室の机を並べて、保健室から持ってきた 白いカーテンで覆って、その上に寝そべって―—        ≪ 寝台白布、これを父母に受く    ≪ 敢えて起床せざるは、孝の始めな

        • 水、ほとばしる

          フランス オーヴェルニュ地方の中心都市 クレルモン=フェランから北へ 車で半時間も行かぬうち ヴォルヴィックに着く。 ヴォルヴィック Volvic といえば、鉱泉水。 一万年の火山台地に濾過され 水は、優しい。 村猫たち自慢の名水は 二十世紀も半ば近くになると 大きな工場で瓶に詰められ いまでは世界中を旅して 自然大好き猫たち、大満足。 モンパルナス界隈の カフェテラスに尻尾ペタン。 小粋な給仕猫さんに —― ヴォルヴィックを四分の一(180ml 瓶一本)、    おね

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          こわ〜い話...

          夜、祖母のお布団に潜り込んでは こわ〜いお話をよくねだった。 幼稚園に上がる、ずーと前 ―— こわ〜いお話は だいたいいつも同じ 「ウシノトキマイリ」??? 祖母猫の家の近くには神社があって キツネさんのお社なんかもあって 赤い鳥居の周りには背の高い木や 低い木が生い茂っていた。 少し離れて玉砂利サクサク本殿の前には 注連縄を巻いた大イチョウ。 嵐の夜の丑三つ刻(いまだと午前二時ごろ) 白い着物の女の人が松明の焔に照らされて 神木の幹に五寸釘でワラ人形を打ち付ける。 ワ

          こわ〜い話...

          梅 実るころ

          雨の季節が近づくと ねこじゃら荘のウメの木も ちらほら青い実をつける。 二十年近く前のある秋の日 庭師さんに連れられて やってきた枝垂れ白梅。 ほんの若木だったのに 年が明けてひと月も立たぬうち いくつか白い花をつけた。 小さいお花、清香はそれでも 春の先ぶれ。 若木に若い葉が芽吹き 柔らかな緑が濃さを増すころ 枝には…… これって実? 一つ、二つ 小指の先ほどに膨らんだ小さな粒が十数個 雛の道具の竹かごに入れると、心細そうに 隅っこで身を寄せ合っている。 初めてなった

          梅 実るころ

          雲のまにまに

          離陸した飛行機が水平飛行に入る。 高度はだいたい一万メートル、ぐらい? 高度一万メートルは、雲の中。 窓際の壁が伝える冷気に微かに感じる 外は、ちょっぴり宇宙。 1970年代の大阪―パリ便は週に数回、 たいてい夕方こちらを発って 夜を旅して順調に飛べば 翌朝、目的地に着く。 綿菓子のなかに迷い込んだような 鋼鉄の翼の上に乗っかって 横着子猫は機内食(お喉 ♡ ゴロゴロ) 飛行機だってきっとお腹がすくのでしょう、 給油のためかアンカレッジで小休止。 現地時間を気にしたこ

          雲のまにまに

          五月の海へ

          五月一日、うるう年なら 立春から数えて八十八日目 夏も近づく八十八夜。 五月一日は フランス猫たちにとっても、ちょっと特別な日。 春分から夏至までの三か月をほぼ二分するこの日、 猫たちは大切な相手に ”幸運のお守り ♡ スズラン” を贈る。 小さな造花を飾ったチョコレートの植木鉢も美味しいし お花屋さんの店先に整列したコたちも立派だけれど、 猫たちは、木洩れ日の ”森のスズラン” ! パリ市の門を一歩出れば、森と広野、 イール・ドゥ・フランスの野に ロワールの岸辺の森に

          五月の海へ

          カァ...

          燃えるゴミの収集日に よく顔をあわせた。 相手は朝ごはんの真っ最中、 黙って横を通るのも失礼かニャア で、尻尾を立ててご挨拶。 ―— おはようございます…… ―— …………(無視) 何回か同じことを繰り返して、ある朝 ―— おはようございます…… ―— カァ。            🥡 🍟 🍗 春ですニャー お天気のいい日には、お洗濯。 お日さまいっぱい🌞物干し場で ご機嫌いっぱい🍷乾杯の歌     Libiamo, libiamo, ne' lieti calici

          聖女と野の花

          早春の野のオオイヌノフグリ は、Veronica persica ペルシアの ヴェロニカ(クワガタソウ)。 お散歩ネコたちの鼻先がちょっと触れても 花弁はそよぎ、萌えそめた草に隠れる。 欧州猫の憧れの地ペルシア、 西アジアに生まれた花の 淡い青をイスラームの猫たちは 貴石ラピスで彩色(いろど)った。           🍃 ヴェロニカは、伝説の聖女の名。 エルサレムの旧市街、彼女は <悲しみの道 Via dolorosa>に 現在(いま)も、たたずむ(*) 。    

          聖女と野の花

          シリウスの青い花

          春先に姿を見せる青い小花 はかない風情の愛らしい花の名は なぜかオオイヌノフグリ。 オオイヌってオオイヌ座のこと? オオイヌ座の主星シリウスは、天の狼。 蒼ざめた氷の牙はトロイの勇者の槍の切先。 ホメ―ロスの戦(いくさ)の星は この冬もまた地上の殺戮を見た。 けれど、やがて現れる若い太陽の神、 『楚辞』九歌に舞う「東君」は 青い雲の衣に白い霓(にじ)の裳 青雲衣兮白霓裳   長い矢をつがえて、天狼を射る。 擧長矢兮射天狼  そのときオリオンの猟犬は秘めた嚢中から 冬中貯

          シリウスの青い花

          うんぷてんぷ

          お金といっても、お銀(かね)、 銀が流通貨幣だった時代のお話です。 中国は宋の時代、 若いころから生業に精を出しそれなりに財を蓄えた老人がいました。 老人は収入の中から銀の小粒を少しずつ取り置いて、それが集まり 百両(*)ほどになると、角柱形(当時の錠前のかたち)の銀塊に 鋳直してもらうことにしていました。一個、二個…… 二個一対を赤い紐で括って、それも、いまでは八個四対。 老人は錠銀を枕元に並べ、毎晩、鈍く光る白い銀塊を撫でては ハハと笑って眠りに就くこともありました。

          うんぷてんぷ

          パ、パ、パ

          久しぶりに『魔笛』を聞いた。 モーツァルトの作曲、シカネーダー台本の ジングシュピール、台詞のある音楽劇。 パ、パ、パ、パパゲーノ 陽気な鳥刺しの声がする。 恋人が欲しくって、やっと出会えたのは 彼にぴったりのお相手、パパゲーナ。 パパパ、パパゲーナ パパパ、パパゲーノ             🐦 パ。 日本語には一つの音だけで ちゃんと言いたいことが伝わることばが たくさんあるけど、フランス語にも けっこうあって、"パ pas" も、その一つ。 最初の一歩の”歩”

          パ、パ、パ

          小さなことば

          小さなことば、 何気なく交わすことば あいさつのことば。 「おはよう」「こんにちは」 いまではあまり聞かないから ちょっと遠慮がちに 「ごきげんよう」 「ごきげんよう」は 出会えた仕合わせをよろこび いまこの時の無事を祝う 小さなことば。 昔、京の尼門跡寺の お庭先へ迷い込んだ半ノラ猫に ネコ好きの尼僧さんが教えてくださった。 「こんにちは」も「さようなら」も 「ごきげんよう」。 ハングル猫たちが出会った時は 「アンニョンハセヨ」 意(こころ)は同じ 「ごきげんよう」

          小さなことば

          クリスマスのノラ

          生れた時から飼い主のいない野良ネコでした。 兄弟ネコがミィミィ鳴く生温かな場所から 目もちゃんと開いてはいなかったけれど お母さんを探して這い出したのを覚えています。 生れたのは夏の終わり。 それからはずっと独りでした。 だから狩りのやり方を習ったことも 食べ物の探し方を教わったこともありません。 とりあえず自分より小さな生き物を 捕まえようとしましたが、 トカゲもバッタも結構すばしっこくて 十回に一回でも成功すれば、大満足。             ✨ 一度だけ大き

          クリスマスのノラ

          ロバさんと竪琴

          フランス中央山塊、 オーヴェルニュ地方の 小さな村の教会に そのロバさんはいた。 大学に入って一年目の秋、 新学年の履修登録会場には 先輩たちが詰めていて 新入生に必修や選択科目を紹介、 ついでに有益な(?)助言も。 —―《美術史Ⅰ⦆は中世建築。  近所の教会を見に行ったり、バスで遠出したり  現地見学…… 遠足が口頭試験のかわりだよ。  これに登録したら? —― 試験のかわりに、遠足?  じゃ、その…… 建築にする! 十一月初めの秋休みが終わると、 新しい学年が本格始

          ロバさんと竪琴