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イチ×ココ「緩和ケアにまつわるアレコレ」

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【イチ×ココ#18】緩和ケア格言「私は医療の専門家、貴方は貴方の専門家」~意思決定支援の話~

【イチ×ココ#18】緩和ケア格言「私は医療の専門家、貴方は貴方の専門家」~意思決定支援の話~

「意思決定」と聞くと、皆さんはどんなイメージを持つでしょうか。
右に行こうか左に行こうか、気になるアレを買っちゃおうか、今夜は何を食べようか…言ってしまえば人生は意思決定の連続ですが、大人であればたいていの場合、自分のことは自分で判断して意思決定を行っていると思います。

ですが、なんでも100%自分の意思だけで決めているかというと、案外そうでもなかったりします。
例えば朝出かけるときに傘を持って

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【イチ×ココ#17】緩和ケア格言「まずは聴くことから始めよ」

【イチ×ココ#17】緩和ケア格言「まずは聴くことから始めよ」

今回からは不定期で、拙著「緩和ケア即戦力ノート」にも掲載した『緩和ケア格言』についてのコラムを別角度から書いていきます。
初回は「聴くこと」について、2つの切り口で解説したいと思います。

1)「傾聴」について緩和ケアに限らず、傾聴という言葉は医療現場で頻繁に使われます。
これは臨床心理学の基本中の基本である「クライエント中心療法 Client-centered therapy」を提唱したことで有

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【イチ×ココ#14】緩和ケア病棟ってどんなところ?~前編

【イチ×ココ#14】緩和ケア病棟ってどんなところ?~前編

「緩和ケア病棟」という言葉は、医療関係者でなくても聞いたことくらいはあるかと思いますが、立ち入ったことがある、という人はどれくらいいるでしょうか?
働いている/働いたことのある人はもちろん、ご家族・ご友人のお見舞いのために行ったことがある、という人もいるかもしれませんね。
しかし行ったことがあるという人はおそらく少数派で、医療関係者であっても「知識としては知っているけど、行ったことはない」という人

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【イチ×ココ#15】緩和ケア病棟ってどんな場所?~後編

【イチ×ココ#15】緩和ケア病棟ってどんな場所?~後編

前編に続いて、知っているようで知らない「緩和ケア病棟」のアレコレについてお話していきたいと思います。

緩和ケア病棟はどんな場合に利用できるの?前編で「ケアに特化している」「積極的な症状緩和が行われる」「環境が良い」などの緩和ケア病棟の特徴を説明しましたが、どんなときに緩和ケア病棟に入院することができるのでしょうか。

まず入院のための重要な条件として、がんかAIDSである必要があります。昨今では

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【イチ×ココ#16】コロナ禍における緩和ケア病棟での「平等、公平、公正」

【イチ×ココ#16】コロナ禍における緩和ケア病棟での「平等、公平、公正」

突然ですが、「平等」「公平」「公正」という3つの言葉を、皆さんは使い分けているでしょうか。
「…え? だいたい同じなんじゃないの?」という人もいるでしょうし、大ざっぱに言えば似たような言葉だと言えます。
しかし今回は、あえてこれらを細かく区別して、緩和ケア病棟での面会を例に解説してみたいと思います。

平等、公平、公正、それぞれの意味この3つの言葉の違いを明確にするために、まずはそれぞれを英語に直

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【イチ×ココ#13】緩和ケア病棟での検査のタイミングと、忘れた頃にやってくる”あの病態”

【イチ×ココ#13】緩和ケア病棟での検査のタイミングと、忘れた頃にやってくる”あの病態”

たまに「緩和ケア病棟に入院したら、検査も何もしない」と思っている人がいるのですが、そんなことはありません。

確かに、週に何度も採血をしたり、抗癌剤治療中のように頻繁にCTを撮ったりはしないのですが、理由は大きく2つです。

1)患者の身体的・精神的苦痛になりうる
2)緩和ケア病棟入院料はどれだけ検査を行っても一定

逆を言えば、患者への負担が少なく、費用面で許容範囲内であれば、緩和ケア病棟でも検

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【イチ×ココ#12】職種別!緩和ケア関連の資格取得について

【イチ×ココ#12】職種別!緩和ケア関連の資格取得について

前の職場では医学生に「緩和ケアってこういうものだよ」と説明させてもらう機会が多かったのですが、そのときよく質問されたのが
「緩和ケア関連で資格を取りたいと思ったら、どうしたら良いですか?」というものでした。
これは医学生だけでなく、看護師さんや薬剤師さんなど、他の職種の方も気になることかもしれないなーと思ったので、今回は職種別に緩和ケア関連の資格についてまとめてみたいと思います。

【医師編】

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【イチ×ココ#11】神経ブロックってよく聞くけど…イメージが沸かない!?

【イチ×ココ#11】神経ブロックってよく聞くけど…イメージが沸かない!?

私の住む地域では今年は梅雨入りが早く、そのためか雨の降らない日も多めで、間延びしたような印象の梅雨になっています。
今朝も天気が良かったので、ふと思い立って近くの河川敷をブラブラ散歩してきました。
どうしても毎日パソコンの画面ばかり見てしまいがちなので、目の保養に川や緑や空なんかを眺めることができて良いリフレッシュになりました。

仕事や家事やら色んなことで時間に追われている!という人も多いかと思

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【イチ×ココ#10】"気持ちのつらさ"を理由に、緩和的鎮静を行っても良いのか?

【イチ×ココ#10】"気持ちのつらさ"を理由に、緩和的鎮静を行っても良いのか?

【緩和的鎮静について】

緩和ケアにおいて、患者さんが耐えがたい苦痛に苛まれ、他に苦痛緩和の手段がない場合、”緩和的鎮静 palliative sedation therapy”という手段が選択肢に挙がります。

緩和的鎮静は「苦痛緩和のために患者の意識を意図的に低下させること」と定義され、具体的には主にミダゾラムというベンゾジアゼピン系鎮静薬を用いて眠らせる、あるいはボンヤリとした状態やウトウト

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【イチ×ココ#9】これって依存?オピオイドの不適正使用を考える

【イチ×ココ#9】これって依存?オピオイドの不適正使用を考える

オピオイド鎮痛薬、特にレスキュー薬を使っている患者さんと普段接していると、「この人、すごく頻繁にレスキュー使ってるけど…これ良いの?依存症ぽくなってない?」とモヤモヤした経験をすることはないでしょうか。

もちろん、痛ければレスキューは使って良いし、モルヒネ・オキシコドン・ヒドロモルフォンといったオピオイド鎮痛薬は使用上限が原則ないので、理屈からすると何回使っても良いはずです。
でも、一日でレスキ

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【イチ×ココ#8】熱が出た!進行がん患者さんの発熱、その原因は…?

【イチ×ココ#8】熱が出た!進行がん患者さんの発熱、その原因は…?

今のご時世、ちょっと熱が出ると「コロナか!?」と自分も周りもザワザワするので、風邪すら引かないように気を付けないといけない大変な状況ではありますが。
進行がんの患者さん達は、本当によく発熱されます。がん患者に発熱が見られる頻度は約70%といわれ、これはがん患者に痛みがみられる頻度とほぼ同じです。

健常成人が発熱する主な原因は、感染、薬剤熱、膠原病…などとよく言われますが、進行がん患者の場合は、”

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【イチ×ココ#7】だんだんゴハンが食べられなくなってきた…がん悪液質の話

【イチ×ココ#7】だんだんゴハンが食べられなくなってきた…がん悪液質の話

日本を含む東洋には「医食同源」という考え方が古くから根付いており、きちんと食事を摂ることは健康であるためにとても重要だと考えられています。
それ自体はそのとおりだと思いますが、がんの患者さんやご家族とお話ししていると「食生活が良くなかったからがんになったんでしょうか…」「がんに良い食べ物(あるいは食べてはいけないもの)はありますか?」と訊かれることがよくあります。

さらには、病気が進行して食事が

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【イチ×ココ#6】非がんにも! モルヒネを上手に使いこなす

【イチ×ココ#6】非がんにも! モルヒネを上手に使いこなす

皆さんは、”モルヒネ”という薬にどのようなイメージをお持ちでしょうか。
およそ200年前から使われている薬なのに、いまだ現役。他のオピオイド鎮痛薬がたくさん世に出ていても廃れないのは、優れた薬であることの証明だと思います。

一方でモルヒネと言うと、患者だけでなく医療者も「モルヒネ!?」と一歩引く…そういったイメージを持たれている薬であることも事実です。
しかし私個人の意見としては、モルヒネを上手

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【イチ×ココ#5】「お腹がパンパンで辛い…」という人への腹腔穿刺・CARTは是か非か?

【イチ×ココ#5】「お腹がパンパンで辛い…」という人への腹腔穿刺・CARTは是か非か?

私が現在勤めている緩和ケア病棟は、消化器系の患者さんが比較的多く、腹水が溜まってお腹がパンパンに張って苦しんでいる方を診る機会がしばしばあります。

ただ、この腹水をどうするかというのは、医療者にとっても患者さん・ご家族にとっても悩ましい問題がいくつかあります。
今回はその辺りについて、まとめてみようと思います。

消化器症状に関するスライドを参照したい方は、PCOPのWebサイトにアクセス!

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