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【イチ×ココ#12】職種別!緩和ケア関連の資格取得について

前の職場では医学生に「緩和ケアってこういうものだよ」と説明させてもらう機会が多かったのですが、そのときよく質問されたのが
「緩和ケア関連で資格を取りたいと思ったら、どうしたら良いですか?」というものでした。
これは医学生だけでなく、看護師さんや薬剤師さんなど、他の職種の方も気になることかもしれないなーと思ったので、今回は職種別に緩和ケア関連の資格についてまとめてみたいと思います。


【医師編】

まず医師が緩和ケアに関して取得できる資格は、主に

①日本緩和医療学会 専門医
②日本緩和医療学会 認定医

の2つです。

緩和ケア関連の学会はいくつかありますが、専門医等の認定は日本緩和医療学会という学会が行っています。
以前は①②に加えて暫定指導医という資格もありましたが、期間限定の資格で、現在は新規の認定は行われていません。

さて、①の専門医というのは、症状緩和・全人的ケア・家族ケア・地域連携などなど緩和ケアに関する幅広い知識と経験をもち、臨床だけでなく教育や研究にも関わる、緩和医療のプロフェッショナルを目指す医師が取得する資格です。
つまり、俗な言い方だと「ガチ勢」向けの資格なので、「緩和ケアの臨床だけでなく教育や研究にも携わりたい」という中堅~ベテラン医師や、「これから主に緩和ケア領域で医師のキャリアを積んでいこう」と考えている若い医師に特におすすめの資格です。
(ちなみに専門医の数は、2020年時点で全国に273名しかいません。)

一方、②の認定医というのは「他の領域が専門なんだけど緩和ケアにも力を入れてやっていきたい」という医師向けの資格と言えるかと思います。なので、緩和ケアチームや緩和ケア病棟の担当医として働きたい場合は、取得を目指しても良いかと思われます。

他の領域では、認定医を取得⇒専門医を取得、と二段階で専門医認定が行われることも多いですが、緩和医療の場合は、専門医か認定医のどちらか一方を取得すればOKです。
専門医・認定医のどちらかを持っていれば、その医師のいる病院は日本緩和医療学会から「認定研修施設」の指定を受けることができます(もちろん指定されるためには他にも施設としての条件がありますが…)。

ちなみに日本緩和医療学会は、日本専門医機構の指定する基本領域の学会に含まれませんので、専攻医登録などのシステムはなく、募集基準を満たした医師ならダイレクトに専門医・認定医の試験を受けることができます。

募集基準についてですが、上記の認定研修施設において、専門医なら2年、認定医なら6カ月の研修を行うことが必要条件の一つです。
「それなら認定医の方が簡単じゃん」と思われるでしょうし、認定医と専門医の違いは正直あまり無いのですが、労力がかかる分、専門医を持っていたら「おお、この人ガチだ」と思ってもらえるかと思われます。なので、資格のインパクトは専門医の方が大きいでしょう。

(※医師や薬剤師などの国家資格は単体でもかなりの職権が与えられるパワフルな資格ですから、専門医でなければ○○ができない、ということはあまり無いです。ま、これは緩和医療に限らず、他の専門医もだいたい同じですが)

ということで要約すると、自分の専門分野として緩和ケアを選びたいという医師は専門医を、サブスぺとして緩和ケアの資格が欲しい医師は認定医を、それぞれ取得を目指しても良いのではないでしょうか。


【看護師編】

看護師の資格といえば、日本看護協会が認定している、認定看護師や専門看護師だと思います。
緩和ケアに関係するものは以下の資格です。

①緩和ケア 認定看護師
②がん化学療法看護 認定看護師
③がん性疼痛看護 認定看護師
④乳がん看護
認定看護師
⑤がん放射線療法看護
認定看護師
⑥癌看護 専門看護師

①~⑤は認定看護師で、役割としては、臨床現場で質の高い看護を提供することがあります。
実務経験5年以上(そのうち癌・緩和ケア領域での実務経験3年以上)+6か月の研修+615時間以上の教育課程修了、というなかなか大変な受験条件を満たす必要があります。

⑥は専門看護師で、臨床だけでなく教育や研究などの役割も担います。
そのため、実務経験5年以上(そのうち癌・緩和ケア領域での実務経験3年以上)+大学院修士課程修了+所定の単位取得、というように学術的な経験を積むことが受験条件になります。

いずれかの資格を持っていることが、緩和ケア診療加算外来緩和ケア管理料がん患者指導管理料(※上記以外にも算定可能な資格あり)を算定するための条件の一つになります。
もちろん取得に手間も時間もお金もかかりますが、資格取得のための支援に力を入れている病院もたくさんありますので、興味がある方は日本看護協会のホームページを確認してみたり、上司に相談してみたりしてはいかがでしょうか。


【薬剤師編】

緩和ケアに関連する薬剤師の資格は、日本緩和医療学会が認定している、①緩和薬物療法認定薬剤師です。

申請条件は色々ありますが、緩和ケアチームか緩和ケア病棟を有している病院や、在宅療養支援診療所と連携する保険薬局で、緩和医療に3年以上従事していることが必要になります。あとは学会発表なども必要です。

また、2020年度からは②緩和医療専門薬剤師という資格も新設されました。こちらは5年以上①の認定薬剤師だった薬剤師に申請資格が与えられる、一段階上の位置付けの資格です。

今のところ、医師や看護師の資格のように緩和ケア関連の診療報酬を算定するために必須の要件とはなっていないようですが、資格保有が「望ましい」とされており、そのうち必須要件に組み込まれる…かもしれません。

【栄養士編】

管理栄養士が取得することができる資格としては、がん病態栄養専門管理栄養士があります。
名前の通り、緩和ケアに特化した資格ではありませんが、緩和ケアを含むがん診療に関わった経験のある管理栄養士が取得できる資格です。
また(おそらく)資格が必須ではないと思いますが、緩和ケアチーム専従の管理栄養士がいると、緩和ケアチームが算定できる緩和ケア診療加算(390点)に個別栄養食事管理加算(70点)をプラスして算定することができるようになります。

【PT・OT・ST編】

リハビリに携わるPT・OT・STの場合、資格ではありませんが「がんのリハビリテーション研修(E-CAREER)」を受講することで、がん患者リハビリテーション料を算定できるようになります。

もともとは全て集合研修でしたが、現在はe-learningとのハイブリッドになっているようです。
経験年数などの条件なく研修は受けられますが、医師・看護師・リハそれぞれ1名以上を含むチームでの参加となるため、施設内の多職種で予定を合わせて参加する必要があります。


【まとめ】

ということで、様々な職種の緩和ケア関連の資格をまとめてきましたが、抜けや間違いや変更などあるかもしれませんので、詳しくは各学会等のオフィシャルなホームページを必ずご確認ください

すでにお気付きかもしれませんが、資格を取ることには、①自分自身のため、②所属する組織のため(※病院の収益・施設認定などに貢献するという意味)、そして③地域や社会のため、という大きく3つの意義があると思います。

資格を取る、つまり専門家になるということは、周りの人達があなたを今まで以上に頼れるようになるということです。
重く感じるかもしれませんが、逆の立場だったら、頼れる人が身近にいることで、どれだけ気持ちが楽になるでしょうか。

働きながら勉強することは大変なことですし、資格を取った後も大変なことは沢山あると思いますが、資格を取るための努力はきっと無駄にはならないはずです
私自身も資格取得を目指す立場にありますので、同じように資格を取ろうかな…と考えている人がいたら、是非お互いがんばっていきましょう。

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