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『就活生、神になる。』⑤ 当社推奨のクールビズでお越しください ~マナー編~

■まえがき ~本編に入る前に~

 本記事は、中高時代に病気で学校に通えなくなり、寛解後の大学時代はコロナ禍がクリーンヒットした筆者による就活体験記『就活生、神になる。』の第5回更新となります。過去4回の内容を踏まえた上で進んでおりますので、まだ過去回をご覧になってない方は、下記リンクよりご確認ください。


▼『就活生、神になる。』初回・前回記事▼




■第15章 「当社推奨のクールビズでお越しください」

業種:中堅~大手金融業
受験時期:新卒・夏採用
受験段階:三次面接
倍率:中程度



 今回は、80社受験した中でも、特に面を食らった仰天就活マナー・就活エピソードについて取り上げたい。人によっては仰天ではないかも知れないが、勘違いを起こしそうな人が一定数出る内容なので、念の為この回を設けた。連載の中でも特に愚痴っぽい回である。心して欲しい。


 季節は移ろい、新卒就活の名目上の解禁から半年が経ったコロナ禍の4年生の夏になった。ここまでに40社程度受験したが、過去の病歴を深掘りされる「問診面接」が相当な割合で含まれていたこと(起立性調節障害 体験記の連載を参照)や、肝心の志望度が高い企業の面接数社でアガってしまい、未だ内定を取れていなかった。


 そんな中、有り難いことに大手・中堅金融機関から、一次集団面接・二次個人面接を通過のお知らせが来た。次は三次個人面接である。二次まではオンライン選考だったが、ついに本社対面で行われるらしい。三次面接まで行くこと自体はそこまで珍しいことではなく、少し遠い割に交通費支給無しなのも痛かったが、志望度が高かったのでそれでも嬉しかった。正確な文面は覚えていないが、メールの文末にはこう書いてあった。



★15-2 配慮の利いたメール


 「夏の盛りですので、体調にはくれぐれもお気をつけてお越しください。なお、当社はクールビズを社内で推奨しており、受験される皆様もクールビズの服装でお越しください。」


 何と有り難いことだ。わざわざ箇条書きの項目にも「服装:クールビズ」と明記されている。起立性調節障害を発症する体質の人間は、元々血圧が極端に低い。夏場は血管が拡張しやすいため、余計に血圧が下がって、頭の回転が遅くなったり、体調に異変を来しやすくなる。もちろん、私は就労に問題はないレベルには回復したものの、頭の回転については夏場に鈍くなりやすいので、この配慮はありがたかった。現に、いま振り返ってみれば夏の対面選考通過率は、ある程度枠が埋まっていることも要因としてあるだろうが、その他のシーズンより明らかに低かった。おそらく、受け答えに若干鈍りも出ていたのだろう。



 痩せの身でありながら、真冬のバイトですら黒スーツの下は半袖Yシャツを仕込んで汗ダクになっている私にとっては、本当に有り難い話であった。とは言え、選考である以上、必要最低限のマナーとして、きちんとした白のYシャツを上のボタンまで留め、ネクタイを締めて、面接に挑んだ。本来のクールビズでは、襟を開けてノーネクタイが基本だが、念のため長袖の黒ジャケットのみ省略した形だ。


 外気は30度オーバーで多湿。滝のようにかいた汗を拭きながら、余裕を持って面接会場に着いた。大学名を含めて名乗ると、係の方が待合室に通してくれた。ここで私は、冷や汗をかくことになる。全員黒のスーツを来て待っているのだ。


 金融機関では身だしなみが特に重視されていることは当然頭に入れていたが、さすがに会社側がクールビズを念押しした上で、外気30度超えで全員が黒スーツとは思っていなかった。ただ、これはあくまでも「姿勢を見せる」程度の物だと考えていた。


 15分程度すると面接室に通された。ノックを3回して「失礼します」という大きな声と共に扉を開けると、二度ビックリ。なんと面接官全員が黒スーツを着ているのだ。面接官の方々は空調の効いた部屋で午前から面接をしているようなので、汗一つかいていない。社内で強くクールビズ推奨しているという話は何だったのか。おまけに、面接官3人のうち、役職の高そうな1人は、明らかに「何でお前さんは白Yシャツで来た」と言いたげな目線を私に送っている。



 比較的上手く喋った面接ではあったが、「ノルマをこなせるか」「上司からの指示に従えるか」などと言った、業務のキツさを植え付けるような質問が多く、仮に受かったとしてもあまり喜ばしいタイプではないように思えた。尺の後半が問診面接となったこともあり、ご縁が無かった。次また頑張ろう。



■第16章 「何でもお答えします。他に質問はございませんか?」


業種:非公表
選考段階:説明会
時期:就活解禁前
志望度:この段階で下がって受験せず


 時系列的に遡ることになるが、就活仰天エピソードとして、まだ本選考が始まる前の説明会の話をしたい。当時の私は、本命候補として同業複数社で比較検討して、自分に合いそうな事業内容や社風を持つ会社を選定する作業をしていた。そのような中で、質疑応答に1時間程度を確保している会社の説明会を聞くことにした。


 人気企業のため質問者が多く、全て公開質問で行われていたが、その一つ一つに丁寧に回答しており、ある程度好感が持てる内容であった。その中で、いくつかこのような質問があった。



 「御社の業界では、政府や一般利用者から、XX(収益に関わる数字)の公開や、必要に応じて引き下げを求める声が挙がっています。こちらについて御社に与える影響や、対外的な取り組みについて教えてください」


 「同業他社では▼▼の採用などで働き方改革を推進されているようですが、御社でも▼▼の採用の検討などはされていますか?」


 確かこのような質問である。多少踏み込んだ質問で、人によってはタブー視する方も出そうな質問ではあるが、前者については「公開」が求められているだけで、それを公開したところで、XXの数字や割合が変わる訳ではない。それに、対外的に未発表の物や、他社に漏れてはいけない内容も含まれていると思うので、質問者も会社側の満額回答に期待している訳ではないと思われる。ただ、その上で答えられる範囲で回答する物、言えないなら言えないなりの回答をするものだと思っていた。



 しかし、この企業はそれらの質問を全て黙殺したのだ。正直、いままでの柔和な雰囲気と、全てをさらけ出す(とは言え、大半は企業のアピールに結び付く補足情報であったが)正直な姿勢からは考えられなかった。



 何も正直に全て答えるべきとまでは言わないが、「影響は現時点で予測できることではないが、誠実に対応する」だとか、「▼▼の採用予定はいまのところ無いが、他に〇〇がある」などと受け流しながら回答すれば良い物なのに、不自然にこれらのみを飛ばして、「他に質問はありませんか? なんでもお答えいたします!」とさらに質問を募っていた。半ば都合が悪いと言っているような物だ。


 これを受けて、私はこの会社の受験を取りやめることにした。多少の不都合なことでも申告できる会社でないと、いずれ社内での風通しの悪さや、対外的な不正や不祥事に直結すると思ったからだ。


 受かっていないのだから偉そうに言えた物ではないが、80戦以上も面接をしていると、こういった説明会や面接の雰囲気で、何となく不正や不祥事を起こしそうな会社が見えてくる物だ。上記の会社はいまのところ該当しないが、受験後から現在までの間に、既に何社か不正で政府や外部機関にしょっぴかれており、いずれも面接の雰囲気が総じてあまり良くなかった。こういった所で判断する嗅覚は養われたと思う。



■第17章 そッスカ、大変でしたッスね


業種:金融系
選考段階:一次面接
時期:新卒夏頃
倍率:恐らく大量採用のため控えめ


こちらの面接は、当方の別の連載『起立性調節障害に負けないために…』でも触れた「問診面接」の一種であったが、その中でも特に応対が良くなかった一社である。問診面接とは、履歴書に残るレベルの病歴がある人間にだけ課される、病気について根掘り葉掘り聞かれるだけ聞かれて終わるという、何のために現地に呼んだのか理解に苦しむタイプの面接である。名前の通り「お医者様の問診のような面接」のため、私がそう名付けた。


 今回の面接官は、一次面接でありがちな若手の人事担当で、恰幅の良い男性がZoomに顔を出した。既に挨拶の段階でチャラい…というか、どこか金融マン離れした妙な"軽さ"を感じる語り口の人だと思った。話は"問診"に移る。


「ところで1年遅れてますけど、どうしたんッdスカ?」


 微かににdの音が聞き取れるレベルの軽い口調が、今回の問診面接開幕の合図。寛解をアピールしつつ、丁寧に事の経緯を説明した。するとお相手からこんな解答が帰ってきた。


「そッスカ、そりゃ大変でしたッスね」
「それは何だろ、学校とか頑張ればイケないんッスカ」
「自分は部活とか超頑張ってたので知らない世界でしたッスネ」



 今回は明らかに「でしたッスね」という言い逃れができないレベルでチャラい口調だった。この方に悪意は無い…というか純粋に知ろうとしてくれてる印象は受けたのだが、いかんせん面接とは思えないくらい軽いし、詳細を話したところで、相手側の認識がブレているような返答が続いた。


 これは恐らく、この会社における「夏採用」で求めている人材が、スポーツ系部活などを理由に、春選考を忙しくて受けられなかった人で、その方々をすくい上げるという意味だったのだと思う。なので、そういった道に理解のある体育会系出身者を面接に貼り付けていたのではないかと推測している。



 また同時に、私みたいな春選考で落ちまくってる人を、企業が救いたいとも思わないと見るのも妥当であろう。それに、こういったタイプの面接官は、往々にして根性論などと親和性が高く、気合でどうにかなりそうに"見える"病気との相性があまりにも良くない。


 将来の潜在顧客になりうる受験生を前に、"会社の顔"として面接で応対する人事担当者の語尾が、「ッスね」なのはいかがなものかと思うが、そんなことを言っても話は始まらない。むしろ自分も、堅すぎる方で極値に振ってるので、普通の人から見れば許容されることなのかも知れないし、もっと言えば、私が目くじらを立てている方がおかしいと思われるのかも知れない。


 ただ、最低でも自分には、とても企業体質として健全ではないような気が、面接から見て取れたのだ。このようなタイプの人を面接で貼り付ける会社は、あまり望ましくない気がする。その場では丸く収めて手短に面接を済ませ、結果を待つ前に別の会社の選考に注力することにした。


最終的にこの会社は、この面接が最後となった。


(5回目本編終了・次回に続く)

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おかげ様で、アカウント解説から半年で、通算7500ビューと単独記事1000ビュー(起立性調節障害 体験記 第2回の記事)を突破致しました。いつも最後までお読みいただき、ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。


 次回となる第6回の更新は、機材調達や筆者スケジュールの関係から数ヶ月程度空く予定です。ご興味を持って頂けた方は、フォローしておくと便利です。それではまた。


▼次回記事はコチラからどうぞ!▼
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