『就活生、神になる。』④ テストを侮るな、ESで全てを語るな
■まえがき ~本編に入る前に~
本記事は、中高時代に起立性調節障害で学校に通えなくなり、寛解後の大学時代はコロナ禍がクリーンヒットした薄っぺらガクチカにならざるを得なかった筆者による就活体験記『就活生、神になる。』の第4回更新となります。過去3回の内容を踏まえた上で進んでおりますので、まだ過去回をご覧になってない方は、下記リンクよりご確認ください。
▼『就活生、神になる。』初回・前回記事▼
■第13章 どんな大学よりも難しい?EF1-G
前章の段階で既に25社程度連敗していた隣の芝生は、ほぼ金融系一本に絞っていた業種を、もっと広い視野をもって、選定し直した。本回では、面接事例集から一瞬離れて、前段階にある筆記試験の話をしてみたい。
筆記試験のパターンは、SPI・GAB・玉手箱・SCOA・EF1-Gなど様々な形態が用意されている。このうち、「SPI・GAB・玉手箱」は、最もオーソドックスなパターンで、基本的に「数・国の二教科+性格診断」で構成されている。
数学と言っても、何も微積やベクトルが出るわけではなく、単純な四則演算や割合・グラフの読み取りが多い。もちろん、四捨五入の有効数字や近似値をどちらで取るかなど、多少悩む部分はあったとしても、それで致命傷を負うことはない。国語についても同様で、語彙・単語の構造解析・文意の把握など基本問題ばかりで構成された物である。
最終的に80社以上受験することになる私も、振り返ってみれば上記三種のテストだけで最低でも50社以上は占めていたほど一般的なテストである。厳密に言えば、出題範囲やテンプレートに違いがあるらしいが、この3つはあまりに頻出のため、私はあまり区別することなく受験していた。そして、私もこの筆記試験で落ちることは、ほぼ皆無に等しかった。
一方で「SCOA」については採用社数が少ないものの、毎年変わらず一定の支持を受けているテスト形態である。SPIなどの国数二教科だけではなく、MAXで英・理・社まで問われるため、幅広い知識が求められる。しかし、恐ろしく突飛な問題は少なく、おそらく日東駒専や地方中堅国公立以上に合格している大学1年生レベルであれば、ある程度の割合で問題なく解ける程度の難易度設定になっている場合が多い。
★13-2 変わり種な試験の中身
問題は「EF1-G」というタイプの試験である。これを初見で解かされた時は、あまりにSPIなどと違いすぎて、何が起こっているのかわからないうちに終わってしまった。その概要について説明したい。
まずは図形関連の問題。何の告知もなく、いきなり積み木の山を見せられて「この角度からはどう見えるか」と問われ、10秒程度で消えていく。次に識別問題。「▼◯※?☆✕!…」といった感じの、御長寿早押しクイズでお年寄りの発言に付けるテロップのような20字×4行程度の文字列を見せられて、「この中に▼はいくつあるか」と問われ、30秒程度で消えていく。
こんな調子でテストが進んでいく。これは何も数学だけではない。他の問題も、一瞬の思考力と認識力が求められるのだ。ある種のIQテストだと思う。あまり頭の回転が早くない私にとって、この問題は天敵としか言いようがない。
いきなり架空の繁盛している商店街の地図を見せられて、「あなたはパン屋の前にいて、そこを右に曲がって、真っ直ぐ進んで、突き当り左から3軒目は何屋か」と言った問題が出てくる。店はザット見で30軒程度。パン屋は地図上に二軒も三軒もある。この問題が10秒程度で消えていく。
あなたは「仕事」という言葉を聞いて、何を思い浮かべるか。浮かんだ単語を制限時間内に片っ端から埋めていきなさい。これがだいたい1分。「責任感」「分業」「賃金」「自己実現」…。考えればいくらでも出てきそうだが、私を含めただいたいの凡人は、最初こそ調子が良くとも、30か40も出せば徐々にペースダウンしてくる。ぜひともやってみて欲しい。
こんな調子の問題に終始翻弄されるがままの状態で、試験が終わってしまった。EF1-Gを課してくる会社に入れるほど、お世辞にも自分は優秀ではない。当然このテストを課してきた会社は、試験の段階で全滅だった。
このことを序盤に知れただけでも、出願の無駄を省けたと思う。おまけに金融系ではそれほど出現率が高くない形態だったのも幸いだった。それでも最終的に80社戦うことになるのだが…。
■第14章 "メイチ"の仕上げが重ハンデに?
業種:娯楽・レジャー
難度:恐らく高い
受験時期:新卒受験中盤に入りかけ
選考段階:書類通過→テスト通過後の1次面接
就活用のテストでもう一つ特徴的だったのが、SCOAを用いた採用試験である。こちらは、高校中級~大学入試初級レベル(体感)の純粋な学力試験の比重を置いたテストである。もちろん、途中で少しIQテストのような挙動を見せることもあるが、EF1-Gに比べればどうってことはない。
前述の通り、採用社数は少ないながらも、一定の支持を受けているテストであり、この団体もその少ない採用会社の一つであった。私は金融系を強く志望していた時点である程度お察し頂ける通り、人並み外れて堅実に生きるタイプではあるのだが、趣味として競走馬を見るのが好きである。"全く賭けない"と言えば嘘になるかも知れないが、自信がある時だけ300円程度チビチビ応援に入れる程度で、純粋にドラマ性や駆け引き、さらには展開予想の面白さに惹かれている。もう半ば団体名を言っているような物だ。
話を戻そう。既に金融系で相当苦戦を強いられていた私は、別業種へのチャレンジを真剣に検討していた。私は入念に準備をするタイプなので、大学の就職ポータルサイトで、過去の卒業生が書き残した企業別就活体験記を確認して、傾向から想定問答を組み上げる最低限の努力はしていた。ただ、それをもってしても通らないとすれば、「金融業」という業種自体とのミスマッチもあるのではないかと考えたのだ。
また、過去に病気で長期間潰れていたことも相まって、残業時間が極端に多い業界や、夜勤を含んだ業種は選べない。その上で業界研究や職業理解が既に進んでいて、熱意や誇りを持って仕事できる会社を探したところ、第一弾として白羽の矢を立ったのがここであった。無論、倍率は高く、同業他社が皆無に等しいので、ある種の"賭け"であった。
ESは20社以上受験して初めて手書きが指定された。記憶が正しければ、余白なしでA4二枚分。なるべく熱意が伝わるように、細心の注意を払って字を書き、読みにくさが出ない範囲でビッチリと空白なく埋めた。手書きにも拘わらず、記述の文量が多いESであったが、やはり本人の中にある熱意が強いせいか、何も苦にならなかった。むしろ、志望動機や事業の将来像に関する質問は、検討に検討を重ねた結果、過去最高水準の出来栄えと言っても差し支えない物が完成した。正直、金融系よりも、こちらの方が内心行きたかったのではないかと、書いた後に感じるほどであった。
当然、この手書きESは高倍率を勝ち抜いて通った。私は文章を書くのが苦にはならないタイプなので、当初主軸にしていた金融系でもESの通過自体はごくごく当たり前であったが、今回の喜びはひとしおであった。いかんせんこの事業を行う団体数が少ないことから、ここで落ちればこの業界とは縁が無くなると言っても過言ではない。お恥ずかしながら、初めて"ESを通すこと"に対して真剣になった瞬間だったと思う。
晴れてESが通った後はSCOAの試験である。SCOAは、SPIや玉手箱とは違って、採用社数が極めて少ない関係で、一般流通している対策本は2種類程度しかない。そのうちの一冊を買って、徹底的に仕上げた。
しかし、実際にSCOAを受験してみると、対策本はあまりアテにならないことが分かった。より正確に表現すれば、全体的に遥かに難易度が上がっており、短時間に全教科が順不同で出題されるという、極めて過酷な試験であった。ただ恐れるには足らず。病気の関係で、中学に受験自体を差し止められて幻となったが、高校受験前までは塾の全国模試で複数回英語1位、5教科平均で早慶附属を滑り止め圏内にまで安定して持っていった人間が、ここでコケたら面目が立たない。解けそうな問題から効率良く回答し、SCOAは問題なく突破した。これで面接への道は開かれた。
★14-2 聞いていた面接と違うんだが…
金融業であれば会社数が多いので、一つ落ちたとしても、ある程度近い業務を他社でも行えるが、今回はそうは行かない。おまけに、徹底的に面接対策をしていった金融業も、休学歴やコロナ禍によるガクチカの薄さなどから、とにかく手応えが悪い。そこで、何とか別業種で志望度の高い… というか熱意を持って仕事ができそうなここで打開したかった。
筆記試験通過後からすぐに思い浮かぶ限りのあらゆる想定質問をPCのメモ帳に書き出し、それに対する返答を全て考えた。ベーシックな物から、出現率が低そうな物まで、概ね60とか70くらいは出したと思う。先輩方が書き残してくれた「実際に面接で聞かれた設問集」にも、一定の傾向が見られたことから、それに対する回答は入念に練ってから本番を迎えた。
ただ、結果的に、この面接で私はほぼ何も喋れずに終わった。正確に言えば、常に何か口走ってはいるが、あまりの緊張と想定外の質問で、自分でも何を言っているかわからないくらい、酷い完成度の面接だったと自覚できるレベルだった。面接官から「この子は何も練習してないんじゃないか」と思われても致し方がない水準。口も上手く回っていないような感じで、15分があっという間に過ぎていった。
敗因の1つ目としては「ESに書きすぎた」ことだ。私は先輩方が書き残した「この会社の面接で実際に聞かれたこと全集」を参考に、ESや想定質問を組み上げて、それに対する回答は必要十分、あるいはそれ以上に仕上げたつもりであった。
最もわかりやすい例で言えば、(これは他就活サイトでも既出の質問例のため一例として出すが)アイスブレイクとして用意される「好きな競走馬と、その理由を教えてください」である。
これは本来面接の序盤に聞かれる物であるが、私はその答えをESの広大なESの自己・業務理解アピール欄に回答を書いてしまった。面接で一度聞かれると深掘りされやすい内容のようだったので、"深掘り待ち"の対応であったが、面接では「もうわかった」と思われたのか、アイスブレイク無しで本番に突入してしまった。その食い気味の姿勢を見抜かれていたのか、そもそも私に興味が無かったのかは知る由もないが、ここから既に大きな誤算であった。
おまけに、志望動機やその他項目でも、ESを丁寧に書き過ぎたことが墓穴を掘る。「ES以上のこと」を喋ることが求められるのが面接であるのに、並外れて広大な手書き欄で全てを説明しきってしまっていたのだ。もう少し希釈していれば、追加説明や深掘りの余地が残されていたのに、これでは私も喋りようがないし、面接官も突きようがない。
こうして「ES以上のことが喋れない」私に、あれだけ必死に作り上げた想定問答から外れたトリッキーな質問だけが飛んでくる面接となってしまった。もちろん、面接官の方は最後まできちんと応対してくださったので、「就職活動の軸」などの定番質問も多く含まれていたが、"ここで失敗できない"という焦りからほとんど思った通りに喋れなかった。
こうしてまた一つ、手元に不合格通知が増えた。想定の50%も喋れなかった回は、最終的に80社以上受験して、この団体を含め片手で数えられる程度だが、志望度が高い企業ほど空回りしていたように思う。これ以後、私の就職活動の軸に、「喋っても緊張しない、落ちても立ち直れる範囲内で志望度が高い会社」が加わった。口が裂けても面接では言えない非常に失礼な軸ではあるが、これより高い志望度の会社だと、急に上手く喋れなくなることに気付いたのだ。
(第4回 終了・続く)
いかがでしたでしょうか。相変わらず1記事が長くて申し訳ないです。1回5000文字目安で編集しているため、今回はここで持ち越しとなります。
余談にはなりますが、これをお読みの方の中でお馬さんファンの方にお伺いします。「一番好きな競走馬は何ですか?」の質問の答えは何でしょう。私は… ひょっとするとファンの方なら予想できる範疇かも知れません。面接当時は、例のゲームにも実装されていなかったので、質問で飛んできたら多少は"通ぶれた"かも知れませんが、いま答えたら、確実に「あー、ただのミーハーだな」と思われるでしょうね。
ギャンブル依存症が世間を賑わす今日この頃ですが、私はシビアに馬を研究して、よほど自信ある時でも少額しか買わないスタイルで続けているので、原資回収率は毎年105%~110%程度に落ち着きます。ギリギリ黒字。やるにしても、節度を持って楽しみましょう。
ヘッダーの画像は、note公式の借用制度を使ってお借りしました。ご提供ありがとうございました。
それではまたお目に掛かりましょう。
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