齊藤倫子(ぱぴこ)

詩と文を書いています

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記事一覧

融解

頬の丘を虫の子どもたちが駆ける 何度も頬を拭って 嫌いだった あの人のサングラスに 仕方のない理由があり 知ると簡単に心変わり 小さな物差しをへし折る コレはボーダー…

濁り

替え玉の 杯を重ねて 減った汁 コンシーラーでシミを隠す 鏡に作る笑顔の 覗く歯のヤニが気になった 黒い髪にみつけた白髪と 彼岸の春分に 線香の煙たなびく 墓参客に花屋…

径の大きさにこだわる感覚に 違和感がなくなった時に 身についた知識と経験を思う いつまでたってもあの人と私の それぞれにあるはずの円の その重なりを思う 大好きだっ…

幾歳青

空気が整っていくのを 平凡な立ち方で見ていた 嵐の時は斜めに 傾いた柱を支えに 私の足がまだ2本で 減りも増えもいないことを 不思議そうな顔をして 軽トラックが走りゆく…

余白

ファンデーションを叩く 顔の造作を恨む ハイライトを仕込む 不器用なのがわかる 眉の左右描く 高さ太さ合わず 本当はもっと私 きっと可愛くなれる 余白残したままで 今日…

勿忘とおにごっこ

忘れていた過去のことを思い出すことも忘れて、ひっくり返って夜空なんか眺めていると、ヒタヒタと追いかけてきた過去に追いつかれ、驚いて背筋が凍る。過去は高確率で恥ず…

午後9時

午後9時の角度が好きだ 9時になると夜だと思う 立ち上がって冷えた床に立つ ガスコンロの火をつけると 昔見たドラマのことを思い出す ガスコンロをつける キッチンは暮らし…

NIIKEI文学賞の選評をいただきました

恋わずらい

暗い空が続くと そうであることが当たり前で正義なことのように 鬱になる 当たり前なのだから悩みはしないかと言えば やはり気が滅入り物憂い 流行病のようにマスクか何か …

光の衝撃波

上空の暗雲を抜け 地上へ逆さまに落ちる時に デコラティヴな大蛇と見つめ合う 真っ黒な目は潤ってぬめる 鱗を燃やしながら海へ向かう蛇は 街を焚いて進む 骨を炙りながら …

次のこと

誰かに読まれたことがとても嬉しい。 その文にコメントをいただけたことも、感想を伝えていただけたことも、とても幸せな気持ち。 畏れ多いなぁと申しますか、照れくさい気…

枯れ草の匂い

センチメンタルの濃霧が深い夜や裾のほつれた制服を繕う針のように いじりすぎたせいで埋没した二重の君のこと 時々思い出した しょうがないことは承知しなくてならない ど…

融解

頬の丘を虫の子どもたちが駆ける
何度も頬を拭って
嫌いだった
あの人のサングラスに
仕方のない理由があり
知ると簡単に心変わり
小さな物差しをへし折る
コレはボーダーラインだ
罪を背負ったままで
一跨ぎに飛び越えていた
あなたが好きだと言った
ふかふかした布団に
顔を伏せて動物のまね
ふーっはさめるのに
はーっはあたたかい
肌と肌の間に
挟んだ布を揉んで
とても心地よい
太古の記憶では
鳩尾の塊が

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濁り

替え玉の
杯を重ねて
減った汁
コンシーラーでシミを隠す
鏡に作る笑顔の
覗く歯のヤニが気になった
黒い髪にみつけた白髪と
彼岸の春分に
線香の煙たなびく
墓参客に花屋の店番
赤い手を擦りながら
空から降る雪にしかめ面
ドラッグストアに駆け込むと
白さを謳ったカラフルな棚
むかしむかし
缶コーヒーにつけられていた
黒ってなんだ?のコピーを思う
白ってなんだ?不意によぎる
手に握る歯磨き粉に尋ねた

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径の大きさにこだわる感覚に
違和感がなくなった時に
身についた知識と経験を思う
いつまでたってもあの人と私の
それぞれにあるはずの円の
その重なりを思う

大好きだった憧れの人を
そばに感じたら嫌いになるかも
どれくらい遠いのか
不確かは夢がある
健やかで丸い顔をしていられる
線が破線ならば風通しの良い
日本家屋の縁側だろう
二重線ならばきっと窒息する
雨粒が路に落下すると
夥しい数の円は重なって

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幾歳青

幾歳青

空気が整っていくのを
平凡な立ち方で見ていた
嵐の時は斜めに
傾いた柱を支えに
私の足がまだ2本で
減りも増えもいないことを
不思議そうな顔をして
軽トラックが走りゆく
楽しみにしていた
春だというのに暗いとか
まだ肌寒いとか
挨拶のような雛形を
口にする歳になった
彼方の出来事
日々の暮らし
諍いも争いも
枠の中から眺めて見ていた
どうしてみようもない日々が
袖にぶら下がる
払えば余計に重たい

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余白

ファンデーションを叩く
顔の造作を恨む
ハイライトを仕込む
不器用なのがわかる
眉の左右描く
高さ太さ合わず
本当はもっと私
きっと可愛くなれる
余白残したままで
今日も世に踏み出す

勿忘とおにごっこ

勿忘とおにごっこ

忘れていた過去のことを思い出すことも忘れて、ひっくり返って夜空なんか眺めていると、ヒタヒタと追いかけてきた過去に追いつかれ、驚いて背筋が凍る。過去は高確率で恥ずかしくて不吉な重たい球を投げつけてくるから、仲良く並走することも散歩することも叶わない。過去が投げる球は当たると痛い。
慌てて起き上がり球の破片を振り払うと、過去から逃げるようにまた走り出す。

午後9時

午後9時

午後9時の角度が好きだ
9時になると夜だと思う
立ち上がって冷えた床に立つ
ガスコンロの火をつけると
昔見たドラマのことを思い出す
ガスコンロをつける
キッチンは暮らしだと思う
夜の風景に生活が映る
ガス火は生活だと思う
ドラマの中で女の人が
ガスの火でタバコを吸った
私も真似をしてみる
煙は換気扇を使って
夜の街に出かける
私は眠る支度をする
吸殻を水に浸す時
祖母のなぞなぞを思い出す
上は大水

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恋わずらい

恋わずらい

暗い空が続くと
そうであることが当たり前で正義なことのように
鬱になる
当たり前なのだから悩みはしないかと言えば
やはり気が滅入り物憂い
流行病のようにマスクか何か
防げそうなアイテムがあるわけでもない
形にならないものは治しようもない
恋と同じ
鬱は恋
恋は鬱
だとしたら
毎日恋煩いしている
あの低い黒い雲
深くて大きいあの雲の中に
私は恋をしているのだろう
だからといって恋のプロにはなれない

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光の衝撃波

光の衝撃波

上空の暗雲を抜け
地上へ逆さまに落ちる時に
デコラティヴな大蛇と見つめ合う
真っ黒な目は潤ってぬめる
鱗を燃やしながら海へ向かう蛇は
街を焚いて進む
骨を炙りながら
もうすぐ私とゴッツンコ
逆さまの私と蛇がぶつかるから
この街を覆うほどに光が破散
点から伸びる波動は今も彼方へ
消え去りゆく光の様子を
あなたはどこでみているでしょう

次のこと

次のこと

誰かに読まれたことがとても嬉しい。
その文にコメントをいただけたことも、感想を伝えていただけたことも、とても幸せな気持ち。
畏れ多いなぁと申しますか、照れくさい気持ち。
色々な気持ちが混ざって甘い味に近い気持ち。
ふとこれからどうしようかなと思った時に、ひとつテーマの様なものが出てきた。
『憧れの人に読んでいただきたい。』
そう思った。
私は書きたいだけで書いていたけれど、それは自分自身の中にある

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枯れ草の匂い

枯れ草の匂い

センチメンタルの濃霧が深い夜や裾のほつれた制服を繕う針のように
いじりすぎたせいで埋没した二重の君のこと
時々思い出した
しょうがないことは承知しなくてならない
どうやら
お注射メメちゃんの瞼は片目が開いたまま閉じないのです
所謂ゴミの類

そこにあるだけで
とても愛おしいもの
水槽にこびりついた苔のコミュニティにも
ヒーローの存在があり
そいつの掛け声が聞こえたようで
振り返ってみたけれど
苔は

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