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枯れ草の匂い

センチメンタルの濃霧が深い夜や裾のほつれた制服を繕う針のように
いじりすぎたせいで埋没した二重の君のこと
時々思い出した
しょうがないことは承知しなくてならない
どうやら
お注射メメちゃんの瞼は片目が開いたまま閉じないのです
所謂ゴミの類

そこにあるだけで
とても愛おしいもの
水槽にこびりついた苔のコミュニティにも
ヒーローの存在があり
そいつの掛け声が聞こえたようで
振り返ってみたけれど
苔は苔だよ
醸し出す年齢は首元にあらわれて
なぜか侘しい
所有したくて地団駄を踏む子に
駄々っ子って言い方があることを
君は知っていた
半乾きのタオルを使わないと間に合わない朝も
脳が創り出した映像を信じて一歩踏み出す
尋ねていたのは
測れない距離と湿度
あの人は死を遠ざけるあまり
逆に引き寄せられてしまった
成長したセイタカアワダチソウの只中を
草臥れるまで駆ければ良かった
思想を持たない純粋な目の老人
諦めてしまった赤ん坊のよだれ
望まない頂き物に困惑する表情
どれも同じだ
草が生えてただ枯れただけのこと
時期がずれただけでとち狂う世界経済に
翻弄されるこの暮らし
レジ袋は木枯らしが似合っていた
芝犬は丸まらない尾を振って
君は片目のメメちゃんしか信じない

JR東日本の快速が山へ向かうよ
ススキに手を振られて今日も

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