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ザイコフスキー大阪セミナー感想 正しさと楽しさの間で遊ぶ

ヴラディミア・ザイコフスキー(Vladimir Zaikovsky)氏の大阪セミナーに3日間、参加してきました。タイトルにある「正しさと楽しさの間で遊ぶ」は、彼の言葉ではなく、セミナーを終えた私の頭の中にパッと浮かんできた言葉です。

ザイコは、正しくワークすることの大切さを教えてくれ、子どものような無邪気な笑顔で楽しむことを思い出させてくれました。楽しそうにワークに取り組むザイコを見ていると、「システマがうまくなるためにシステマをしてしまっていた自分」に気づけましたし(それは自分の中では違う)、セミナーを通してどういう時に自分が楽しいと思って、どういう時に楽しくないと思うのか、という割と根本的なことに改めて気づけました。楽しくないと思っていることを惰性でやってしまっている自分がいて、そこに気づくって結構重要だなと思いました。

ザイコは常に本質的なことを話していたので、それを完全に理解することは難しいですが、普段のトレーニングに彼の世界観が息づいている(根底にあるものがかなり似ている)ことが分かったので、彼がセミナーを通して私たちに伝えようとしていた世界観については驚くほどすんなり心にすーっと入ってきました。

なんか、ザイコが投げかける巨大な問いについて、参加者全員で謎解きしているみたいな3日間でした(笑)。なので、こういう感想を書き残すのも謎を解くための一つのピースになるのかなぁと。謎の全体像すら見えていないので(笑)、他の人の感想も読みたいです。

ザイコの印象
3日間という短い間でしたが、あらゆることに対して誠実で厳密な人なんだなと感じました。ザイコはその場を取り繕うような言動は一切しませんが、彼のメッセージを正しく理解して言語化・質問すると「Exactly」(その通り)と明快に返してくれるので、とりあえずこの方角に走っていけばいいんだなと分かります。同じ職場にいると頼りになる上司です。

個人的に印象的だったのは、言葉に対する誠実さと厳密さです。言葉の定義や、言葉選び、その使い方についてかなり厳密です。私自身がずっと言葉を扱う仕事をしているので気になるだけかもしれませんが、彼の場合は編集者や学者のそれに近い態度だと思います。そして、独特で豊かな表現(からだの中のオーケストラの音色を聴く、など)が多く、本が好きな人なのかなと感じました。学術的なものから芸術的なものまで幅広く読みそうだけど、ファンタジーなどの物語も好きそう。以上、彼の経歴を全く知らない私のマインドが作り出した妄想でした(笑)。

ワークを正しくやることについて

ザイコは、ワークの意味を理解して正しくそれを練習すること(クオリティー、精度)を重視しました。

例えば、アタックする側とそれを受ける側のワークなら、アタックする側がはっきりと意図を持って、どういうアタックになるかの未来をイメージしてそれを実行する。受ける側は、まずリラックスして良い状態を作り、相手の意図を感じて、その意図の外に移動する。

意図がはっきりしないままアタックすると、受ける側も何をしていいのかわからないのでグダグダになってしまいますし、アタックする側がファイトする気持ちが強すぎると、「相手の意図をはずす」という今回のテーマからはずれているので、別のワークになります。

上記のワークをレベル0だとすると、次の段階としてレベル1、レベル2と続いていきます。例えば、相手の意図をはずした上で自分の両手両足を使って相手にコンタクトするとなど次の行動につなげたり、アタックする側が意図を隠したり、行動の途中で別の意図に変えたり、などです。

しかし、レベル0ができていない人は当然レベル1はできないので、その場合はまたレベル0に戻ってやり直してください的なことをザイコは言っていました。

私がこのワークをしている時に、緊張して逃げるのフィーリングになってしまったのですが、ザイコが「今のは動くのが速すぎる」「そんなにたくさん動かなくてよくて、まずは1歩を踏み出すだけでいい」「テンションが上のほうに上がってきているので穏やかに」など具体的にアドバイスをしてくれたので、自分の悪いクセにも気づけました。

あ、ちょっとうまくできたかなと思ったら、「一歩目はよかったけど、二歩目からそんなに勝ち誇って歩かなくていいよ(笑)」と言われました(笑)。ホームランを打った後の確信歩きみたいな。できた!と思って安心した後の油断、他の場面でもめちゃくちゃ思い当たるので反省します(笑)。

そしてペアワークでレベル0のワークをしている時に、勝手に自分で付け足してレベル1や2の内容をしていたり、自分のうまさや強さを見せつけたりするような人を見つけると、ザイコは「it's not educational.」(それは教育的じゃない)と諫めていました。

また、ファイトを仕掛けることは今回のセミナーのテーマからは大きくはずれます。ザイコにファイトをしかける人が現れると、ザイコの顔からは笑顔が消えてなんか悲しそうに淡々とワークしていました。

ですが、ワークの内容を正しく理解している、あるいは理解しようとしている人に対しては、ザイコも笑顔で楽しそうにのびのび動いてワークしてくれます。その無邪気でパワフルで何が起きるかわからない動きに触れると、自然と笑顔になりますし、心がわくわくしてきます。
ザイコの手や肩に触っただけで吹っ飛ばされることがあり、他の人は洗濯機のようだと表現していましたが、私にはサンシャインの地獄のコマに弾き飛ばされている人に見えました(笑)。

もちろん、人との相性もありますが、ペアワークは自分を映す鏡だなとつくづく感じました。

そして、ザイコは一人ひとりへのリスペクトが根底にあるので、ファイトしようとしている人を間違っていると言ったり、否定したりはしません。あくまで今回のワークとは違うんだよ、と伝えていました。

「Weakness of Mind」について
大阪セミナーのテーマは「Weakness of Mind」(マインドの弱さ)でした。Mindは、「〔思考・感情・記憶などをつかさどる〕心、精神」「〔思考の〕注意、集中、専念」「〔物事に対する〕考え方、感じ方、意見」など色々な意味があるので、マインドをどう捉えるかも人によって解釈の幅がありそうだと思いました。

ザイコは、「私たちには一人の敵がいる。それはマインドです」と言いました。ここでいうマインドは思考に近いのかなと思います。

・マインドは暴走しやすく、いまある客観的な状況を主観的な認知・認識でたやすく歪めてしまう
・マインドで記憶した成功体験を反復しようとすると、現実のシチュエーション・リアリティーを無視しているので、過去の成功体験は過去のものとして捉える。マインドによる予測も未来を見ているので今を見ていない。
・マインドが何をしようとしているのか正しく認識すること、マインドにからだをコントロールされるのではなく、自分がマインドを使う側になり、からだの声をしっかり聴くこと(ここでいう自分って誰?は一旦置いておきます笑)
・マインドは効率よく物事を理解し、からだを効率的に使おうとするから、そこからこぼれ落ちる情報が非常に多い

など色々言っていましたが、「自分と妥協なく向き合ってね」ということを伝えたいのかなと解釈しました。わからないことを曖昧にせず、丁寧にじっくり真摯に自分のマインド、自分自身と向き合う。

とはいえ、いきなりだと何から向き合っていいのか分からないので、各々が何から向き合えばいいかのきっかけ作りをこのセミナーでしてもらった、という印象です。

ザイコは、武術やヒーリングなど特定分野の狭い範囲に囚われず、人生や生活全般につながるテーマとしてこれを捉えてほしいというようなことを言っていたかと思います。

私自身にとっても、日々の生活でこれから自分が何とどう向き合っていくかのヒントをたくさんもらいました。そして、細やかな気配りをしてくれた運営の方々や、多くの気づきと学びをくれた参加者の皆さんにも感謝です。

お土産の551の肉まんを買い忘れて、私のマインドは早速暴走しそうでした。そんなことを考えました。


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