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博物館・美術館は知識がなくても楽しめます!って声を大にして言いたい。

博物館・美術館によく行く人、と聞いて、どんな印象を抱きますか?

あまりなじみのない方からしたら「いったい何をしに行ってるんだろう」「勉強熱心だな」など、少なくとも親近感は湧かないという方も多いかもしれません。もしくは「歴史や美術に疎いから、自分には縁のない場所だ」なんて思ってしまうかも!?

この記事は、そんなあなたのためのものです。

博物館・美術館は、勉強目的でなくても十分に楽しめる場所なのです!

え、ほんとに?今回は、博物館・美術館をカジュアルに楽しむ手順を3段階に分けてご紹介します。

1.背景を想像する

この絵に描かれている人は、どんな性格で、どんな家族構成なんだろう。どんなお仕事をしていて、暮らし向きはどのくらい豊かなのかな。この絵の時代の人は、馬に乗って移動するのかな。道が整備されてないから大変だろうな……。一枚の絵には、そこに描かれていない大量の背景があります。解説のキャプションで絵の概要と時代背景を掴んだら、あとは絵と対話してみましょう。この方法は知識が必要なく、誰でも楽しむことができる点がポイント。そして、正解かどうかは全く重要ではありません。絵を見て、自分の想像力を膨らませること。子どもの頃、絵本を見て話の内容を想像していた頃を思い出してみてください。論文で発表するわけではないのですから、あなたが思ったこと、あなたの想像力が生み出したものこそがあなたにとっての正解です。

これは絵だけに限らず、歴史系の展示物でも同じように楽しむことができます。展示されている古文書が書かれている場面や、書いた人の生活を想像するのは、とても楽しいこと。モノなら、それが使われている場面を想像してみましょう。江戸時代の金貨があったら、部屋の奥で商談中の商人を頭に浮かべるとか、農具だったら、一日中それを振るって一生懸命仕事をし、日が暮れてきてさあ夜ご飯だ、と心地よい疲れを感じる農民のストーリーを頭の中で展開してみるとか……。どんな場面が浮かぶかは、その展示品の保存状態やキャプションの内容、見る人のこれまでの人生経験などによって千差万別。想像力をフル回転させて、展示物に命を吹き込んでみましょう!

2.感想をシェアする

もしお友達などと一緒なら、ぜひ感想をシェアし合ってみてください。相手がその絵や時代背景に詳しければ、あなたの解釈をもっと深めるヒントになるかもしれませんし、二人とも素人でも問題なし!他人の解釈が、自分とは全然違う!と驚いた経験は誰しもが持っていると思います。解釈は人それぞれ。だからこそ、あなた自らが本物を見て、何かしらの感想を抱くことが重要なのです。モノとの対話は、すなわち自分との対話。一つ一つの展示品と向き合うことは、「自分」という輪郭を際立たせる助けになるでしょう。もちろん、高尚な会話をする必要はありません。「これ〇〇に見えるね」なんて会話も、立派な感想です。展示品を見て、自分なりの解釈を加えたという事実は変わらないのですから!

だからといってもちろん、「シェアする相手がいない……」と落ち込む必要はありません。SNSに書いてみれば、コメントがついて盛り上がるかもしれませんし、一人で胸の奥に秘めておくのも素敵なこと。展示品と向き合っている時点で、あなたは一人ではありません。展示品が先生となり、あなたに語りかけてくれますよ。歴史の声を聴くチャンスと思って、ぜひ細部にまで目をこらしてみてください。ただ「見て」いるだけでは分からなかったような装飾に気づいたり、使い込まれた跡が見つかったりなど、「一点物」である証が見つかります。幾人もの人々によって大切に守られ、現代の私たちの目の前に表れてくれた奇跡を、ぜひ体感してみてください。

3.もっと興味が湧いたら……

展示を見て、もっと知りたいなと思うこともありますよね。そんな時はミュージアムショップの出番です!まず手に取りたいのが図録。展示品の写真や解説が一冊にまとまっており、おうちでもう一度、展覧会を楽しむことができます。また、図録には学芸員の文章が載っていることが多く、その展示に関わる濃い情報をピンポイントで手に入れることができるのも特徴。図録の魅力についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事も合わせてお読みください。

また、関連書籍を扱うコーナーも見逃せません。ミュージアムショップは魅力的なグッズが並ぶため、ついつい後回しにしてしまいがちなこのコーナー、実は初心者にとっては宝の山なのです。なぜなら、そこに置いてある本は、高い確率で信頼できる情報だから。現代は様々な情報が入り交じり、たとえ書籍でもいわゆる「トンデモ」と呼ばれるように全く根拠のない情報が並んでいることも珍しくないのは、ご存じの方も多いと思います。初心者にとって、正しい情報を掴むのは難しいこと。その点、ここは博物館。立場上、怪しい本は置けません。博物館の関連書籍コーナーには、初心者向けで分かりやすく、なおかつ信頼度の高い本も並んでいます。ぜひ、手に取ってみてください。

でも、展覧会は期間限定で終わってしまう。その後は、どうやって情報を集めたらいいの?そんなあなたの疑問には、以下の記事が答えてくれます。全く知らない分野について1から情報を集めるのは骨の折れる作業だと思いがちですが、普段とちょっと視点をずらすだけで簡単にできちゃいますよ。

まとめ

今回は、博物館・美術館をカジュアルに楽しむ手順として、

1.背景を想像する
2.感想をシェアする
3.図録やミュージアムショップの本を活用する

の3つをご紹介しました。

私は、博物館や美術館は誰もが楽しめる場所だと考えています。知は学者や頭のいい人たちが独占するものではありませんし、地球を生きる市民として、誰もが過去の遺産に触れる権利があるからです。キャプションを読んで考察したり、絵の年代や技法に注目するのも楽しみ方のひとつであることは確かですが、それができないと退屈なのかといえば、全くそんなことはないと断言できます。

私は、歴史はアイデンティティの確立にとても重要な役割を果たすと考えています。学校教育での授業や、博物館、美術館で展示物を目にすることによって「人間とは何か」「自分とは何か」という問いに対する自分なりの意見が形作られていくのではないでしょうか。
(歴史とアイデンティティの関係についての私なりの解釈は、以下の記事にまとめています。ご興味のある方はぜひお読みください!)

絵を見て、過去の暮らしを想像してみる。モノに刻まれたキズや汚れの生々しさを見て、教科書の中でしか見たことのなかった物語の「歴史」が「本当にあったこと」なのだと体感する。知識も大切ですが、このようなリアルな体感こそが、実物を展示している博物館、美術館に行く醍醐味だと感じています。だから、「それを見て、自分がどう感じたのか」が大切なのですね。これは知識のあるなしに関わらず、誰もができることです。知識は、本で身に着ければ十分。博物館では、あなたの感じることを大切にしてみてください。そうすることで、教科書的な「歴史」とあなたの「感覚」が混ざり合い、「あなただけの歴史」となるのです。世の中に発表することのない、する必要もない、完全にあなただけのもの。すなわちそれは、あなたのアイデンティティの一部になり得るでしょう。

この記事が、誰もが博物館・美術館を楽しめる社会になるためのきっかけになりますように。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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