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図書館スタッフが教える「きちんとした」本を選ぶコツ

最近Twitterで「知りたいことがある時、なぜきちんとした本ではなく安直な本に手を出すのだろう」という呟きを見かけました。

また、トンデモ本と呼ばれる学術的な信ぴょう性の低い「自称・研究本」が話題に上がることも増えてきています。普通の顔して本屋に並んでいるこれらを、見分ける方法はあるのでしょうか。

その方法は、実はとっても簡単。しかも、家から一歩も出ずにチェックできる方法もあるのです。今回は、①本屋で②おうちで「きちんとした」本かどうかを見分ける方法をお伝えします。

なお、今回の記事で使う「きちんとした」本という言葉の定義は、そのテーマについて、信ぴょう性のある参考文献を使って書かれた本のこととし、小説は除きます。

①本屋で

1.著者の経歴を見る
本のカバーの内側に、著者の顔写真と経歴が載っていますよね。目を通さない、という人もいるかもしれませんが、ヒントはそこにあります。著者が今、どんな仕事をしているのか。大学や大学院で、どんなことを学んだのか。それらが本の内容と近ければ、その本は「きちんとした」本の可能性が高いです。

2.過激なタイトルの本は避ける
私が大学時代、歴史の講演会に出かけた時に教わったテクニックをご紹介します。

そこで出会った在野の研究者が言うには「隠された○○」や「○○の真実」、また「織田信長は本能寺の変で死んでいなかった」というような、定説を覆すようなタイトルは避けた方が無難、とのことです。なぜなら、新説というのはそんなに頻繁に出てくるものではないから。研究とは、長い時間をかけて積み上がっていく地層のようなものなのです。そして新説は、大抵はまず学会で発表され、そこで受けた数々の批判をもとに再検証されてからようやく一般に発表されるのではないでしょうか。目を引くようなタイトルで新説を語る本は怪しいと、私はいつも疑ってかかっています。

3.使っている参考文献を見る
Wikipediaはダメです。
他には、きちんと論文を読んでいるか、一次資料(オリジナルな情報のこと。政府が出している統計や、テーマになる出来事の本人が書いたもの)を使っているか、などが判断の基準になります。

もちろん、適切な資料が挙がっていても、その本の著者が自分の都合のいいように使っている可能性もありますが……その手の本は、上記の2つの方法で撃退できるでしょう。

例外もあります

そうは言っても、実は上の3つの方法は100%正しいわけではないのです。例えば、職業は作家でも、小説以外に「きちんとした」本も書く場合だってありますし、過激なタイトルの本の著者を見てみたら研究者が書いていてびっくりした経験もあります。しかし、これらは言うなら上級者向けです。慣れてきて、その分野の通説や基本資料、代表的な研究者についての知識がついてきてから手を出すことをおすすめします。

②おうちで

知りたいことがあるけれど、どんな本を読んだらいいか分からない。よし、Googleで検索してみよう……。
ちょっと待った!Googleのかわりに、大学図書館のOPACを使ってみましょう!
みなさんは、大学図書館や公共図書館のパソコンで本を検索したことはありますか?それがOPAC(蔵書検索)です。

公共図書館ではなく「大学」と指定した理由は、公共図書館にある本は玉石混交だからです。公共図書館は様々な人が様々な目的で利用するため、必ずしも正しい情報とは言えないような本も置いてあります。

大学図書館のOPACを使う方法は簡単。Googleで「○○大学 OPAC」と検索するだけです。もちろん貸出などはできませんが、蔵書検索だけなら外部の人間も使えます。

このOPACの検索画面で、自分の知りたいキーワードを入れます。例えば「心理学」や「新選組」など。大学の図書館なので難しい本もたくさん出てきますが、大学図書館の蔵書は多種多様です。学術的に信頼できる上に分かりやすい本も、必ず見つかります。大学には、ついこの前まで高校生だったような学生もいるわけですし、低学年の学生に向けた入門講座も開いていることを頭に入れれば納得できるはずです。

ポイントは、大きな大学のOPACで検索すること。その方が蔵書が多いため、ヒットする本が多いからです。あまりにヒット数が多い場合は詳細検索で、条件を絞って再チャレンジしてみてくださいね。

まとめ

実際に本屋で実物を手に取れる時は、1.著者の経歴 2.タイトル 3.使っている参考文献 の3つをチェックして購入すれば、かなりの確率で「きちんとした」情報を手に入れることができます。

ネットで探す場合は、大学図書館のOPACで知りたいことをキーワード検索すれば、Googleよりも確実に信ぴょう性のある情報をゲットできるでしょう。気になる本を見つけたら別のサイトでレビューをチェックし、Amazonで購入すれば、家から出ずに質の高い情報を手に入れられるのです。

正しい情報を手に入れるって、思ったよりずっとカジュアルにできることなんです。自分はあまり知識がないから……と、何となく目に付いたものだけを選ぶのはとてももったいない。知識なんていりません。調べ方さえ体得すれば、勝手にあとから着いてくるのですから。

情報過多な現代だからこそ、それを取捨選択する力は絶対に必要です。この記事が、皆さんが溢れる情報の海から必要なものを取り出すための力になりますように。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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