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ノンデジ旅 #4

 一夜が明け、旅の高揚感に満ちた朝。フェリーを使って長崎県島原に行くことにした。調べてみると、熊本港ー島原港の区間を二社が運行しているらしい。一つは30分で片道1100円。もう一つは1時間で630円というものだった。時間はお金でお金で買えるのか〜と思いながらも、迷いなく後者のフェリーを予約した。熊本駅ー熊本港を結ぶシャトルバスが運行されているようで、前日に予約が必要とのことだったが、空きがあったので当日に乗車、乗船することができた。

着眼する船


 熊本港につき乗船をしようと並んでいると、不思議なことに人が5、6人ほどしか居ない。「なるほど、この船は車でも乗船できるから多くの人は車で利用するのだな」と思っていたが、大して車も乗船してこない。最終的に船を利用していたのは15人ほどだった。定員485名の船に15人とはコロナ禍の影響もあるのだろうか。

船内に人は少なく…

 船は少しエンジンを吹かし、熊本港を離岸した。

 船が速度を上げ有明海に出ると、カモメたちが並んで羽ばたくようになった。甲板に出ると、手が届く距離までカモメが飛んでくる。中には船にとまって休んでいるのもいる。後から気づいたのだが、このフェリーの名前がレインボーかもめというのも納得である。

後ろについているボートは見切れてしまったか…
かもめと並走する

 40分ほどすると、前方に雲仙岳であろうと思われる山々が微かに見えてくる。この日は残念ながら霞があり、満足のいく姿を見ることが出来なかった。それと同時に、近くに座っていたおじさんからイルカが見えると教えてもらった。その方角を見ると、確かにイルカの群れと思われる背びれを見ることが出来た。イルカウォッチングを普通の鈍行船で見ることができて、優美な体験であった。

 船は島原港に到着した。島原港ー島原の間は少し離れているらしく、島原鉄道を使って移動することにした。島原港ー島原駅に向かっている途中、おもしろいものを見つけた。そうめんの自動販売機である。その姿にを撮ろうとカメラを構えていると、一人の男性から話しかけられた。「この自動販売機はめっさ珍しいのに、テレビでなかなか紹介されないんだよ」記憶が曖昧なので方言の使い方が合っているのかわからないが、恐らくこのようなことを言っていた。確かに、珍しい自動販売機などで取り上げられるのは昆虫食やラーメン、焼肉のタレなどでそうめんは聞いたことがない。男性の不憫な気持ちも少し理解できる。あの男性の為にもテレビ紹介してもくれ!私の自動販売機にまつわるエピソードがまた一つ増えた。

霞んでいる
そうめんの自動販売機

 島原港駅ー島原駅は島原鉄道が運行する列車で接続されている。島原に着くと、観光案内所に行った。ちょうど雛祭りのシーズンということもあって、雛人形が町の至る所に設置されているらしい。
 地図を確認して、まずは武家屋敷に行くことにした。武家屋敷を連ねる通りは真ん中に用水路を設けている。この水が、古くから島原の人々を支えているらしい。それぞれの武家屋敷の中には雛人形が飾ってあり、とても美しかった。武家屋敷の通り抜け、島原城に行った。梅は七分咲きだったが、島原城ともよくあっていて侘び寂びを感じた。

こんな案内板も
島原城

 時刻は12時を回ろうとしている頃で、お昼にすることにした。せっかくなので、島原の郷土料理を食べたいと思っていると、島原城にほど近い姫松屋で具雑煮を食べることにした。出汁が甘くないということに衝撃を受けながらも、この具雑煮にしてこの出汁だなと納得しながら平らげた。とても美味しかった。

具雑煮

 島原は街の至るとこに綺麗な水が流れている。鯉がいる用水路があると書いてある観光看板をみて、そこへ行くことにした。確かに用水路に鯉が泳いでいる。また、その近くに日本庭園があるらしく、そこへも行った。鯉は日本の偉大な産物だなと思いながら、そろそろ港の方へ戻ることにした。一番通りという、二番があるのかは知らない通りを抜けていくと、菓子屋があり饅頭とアップルパイを買って帰りの船で食べることにした。

 駅に向かおうと、ただ海の方面へと歩いているとやけに銀水という文字が目立つ。案内板の通りに進んでいくと、見覚えのある光景が見えてきた。湧水を使用した共同洗い場である。洗い場は4つの区分に分かれていて、それぞれ食品、食器、洗濯といったように使い分けがされている。

 そしてその近くには「銀水」という店があった。店先の案内板によると、以前にドラマで紹介されたことがあるらしい。どうやら「かんざらし」というお菓子が島原の名物らしい。店内に入り、すこし高いなぁと内心思いつつ500円の「かんざらし」を注文した。簡単にかんざらしの見た目を表現すると、琥珀色のシロップに白玉を入れたようなものだ。一口食べてみると、舌に覚えのある味がした。端的に味を表現すると鼈甲飴を水に溶かし、白玉を漬けたような味がした。正直にいって、新鮮味のある、素晴らしい味ではなかった。「まぁ、素晴らしい景色を見ることができてよかったな」と自らを納得させていると、船の時間が近づいていることに気づき、急いで島原港に戻った。

店内からの眺め
かんざらし

 熊本駅に戻ると、私の中で九州新幹線のつばめを見たいという気持ちが湧いてきた。九州新幹線には少し思い入れがある。私が初めて九州に行ったとき、800系新幹線の素晴らしさに感動した。東海道新幹線とは異なり、観光客を意識した内装は、初めての体験だった。
 熊本駅の入場券を購入し、ホームに駆け上がると10年ぶりにつばめに会うことができた。今回の旅で乗車する予定はないが、一目見ることができただけでも満足だった。

これ以上にかっこいい新幹線はあるのか。いや、ないだろう。


 せっかくなので駅弁を夕食にすることにした。これで旅の気分も高まる。購入した駅弁は九州名物でなく、鹿児島の海老飯だったが、、、

続けて#5も読んでいただくと、幸いです。


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