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深夜、堕落したブルーライト、ぼくら勝手に孤独になって輪廻。

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散文詩/自由詩まとめ。
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#散文詩

どれだけ泣いても海はできません

突然、わけのわからないことで死んでしまう以外に、あたしがきみを泣かせる方法なんてあるの。
 
 
きみが死ぬことをかなしむために生きているのではなくてあたしが死ぬことをきみにかなしんでほしいから生きているだけだって、気づいてしまった日の海が穏やかに凪いでいる。 
本物の灯台を見たことがないってこと、誰にも言えないまま皮膚はゆっくりと乾いていく。
それなのにお腹の中の海にぽつんと建った灯台はやけに鮮

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まだころしてないだけ

蹴らなかったガードレールはどうせわたしが蹴ったって曲がりも歪みもしないガードレールで、だから蹴らなかったわけじゃないけど、だから蹴らなくてもよかった。

(怒らないで、)
意味のないものを排除したとき、わたしの庭は更地になる、
(焦らないで、)
寝転がって部屋の隅の埃を見つけたとき、死神だけがわたしを抱きしめたがる、
(祈らないで、)
はつ恋のひと以外を信仰したとき、わたしはつまらない罪人になる、

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金木犀は永遠の香り

 
死ぬタイミングを間違えなければ永遠になれるから焦らなくていいよ、
永遠が君のかたちになることはないけれど、君が永遠のかたちになることはできるから焦ることないよ。
 
 
永遠は、世界一可愛くて世界一嫌いなあの子のかたちともまったく似ておらず、液体のふりをしてふくよかな土のなかに決して染み込まずに寝そべっている。
金木犀の木の下に埋まっているのは死体ではなくて永遠で、だから代替できない香りがする

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つめたくてなめらかなひふ

 
おばあちゃんの家にある、古い、四角いマッチ箱の中には、わたしがこわがるもの(たとえば愛とか)が入っているって知っているから開けられない、火をつけたことがない、わたしは、命を、愛を、燃やしたことがない。 
 
 
息を吹きかけて蝋燭の炎を消す、
ゆっくりと短くなっていく線香の香りが消えるまで離れるとどこにあるか分からないそれぞれの(ほんとうの)心臓の香りが混ざった薄いにおいがして、この火をつけた

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花に嵐

ベイビー、わたしのする復讐って
葬式の最中に棺桶から起き上がることだよ
棺桶から起き上がったとき
できるだけ美しいほうがいいから
水をたくさん、たくさん飲むんだよ

死はいつも窓辺の安い一輪挿しの中で枯れたり咲いたりしているのに、対岸でぽつんと立っていると思ってるから君はわたしが水を毎日取り替えていることに気が付かない、

1日のうち、一生のうち、良かったことと良くなかったことだけを流暢に話すけど

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ハローメアリー、おやすみリトルバグ

 
羽虫を殺したこと以外に、咎められることがあっただろうか。
 
 
夢に見る絞首台はピンク色で懺悔より怖くなかった。
いつも階段を上る前に目が覚めるから、わたしはわたしのことを少しも責めていないことが分かって、すこやかに起きる朝に昨日たらしたはちみつくらいの、ちいさなスプーン1杯分の不快感が残っている。
 
前世の名前はマリーじゃなくてメアリーだった(本当はエイミーが良かったけど、その名前は年の

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ドント、ヘルプミー。

ドントヘルプミー、
おれ以外みんな、ほどけない靴紐の結び方を知っているような気がする。
ドントアスクミー、
おれ以外みんな、道を間違えたりしないような気がする。
ドントラヴミー、
おれ以外みんな、上手に折り紙を折れるような気がする。
 
 
 
好きでも嫌いでもなかった母校はまだ取り壊されないからどうせ孤独になりきれない、まだ爆破のチャンスがあるってことじゃん、と、おれがなりたかった悪魔が頭の中で

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うちゅういちぶきよう

 
だれのこともなぐらずに今日を終えたことをほめてほしい、どうしてもなぐりたい人がいたわけでもなかった今の今まで、だれのこともなぐらずにいたことをほめてほしい。
まだじょうずにはさみを使えない茉莉とする手のひらだけのじゃんけんのはなし、ロックもシザーもともだちになれない異星の学校、ぼくたちはじゃんけんのどれでもない異星人、茉莉のとばした紙飛行機が、へろへろと星を出てすぐに燃えつきる。
 
 

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四十六億年草

 
何にもなれないならせめて何にもならずわたしのままでいようと思ったのに、わたしはわたしのかたちを保つこともできずに骨をひとつ、ふたつ、歪めている。
 
 
 
背骨が曲がったままじゃ額縁に入れないらしい。
 
曲がった背骨に詩情を植え付けては枯らしているこの時間を、美しく咲いた多年草たちが輪廻と呼ぶから根こそぎ掘り起こしてめちゃくちゃにしてやろうかと思う。
美しくしゃんと立つひとの背中の芯が何で

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ラブノットイコールユー

 
ラブノットイコールミー、ラブノットイコールオール、
あなたのためのわたしじゃない、わたしのためのわたしがこの目で見る、わたしのためじゃない世界、の青さ、ニアリーイコールラブ。
 
 
軽薄でいてください、
清潔でいてください、
ふたつが矛盾しないことを理解してください、
軽薄でいたかった、
清潔でいたかった、こと、 
世界をレモンのように輪切りにしたときわたしが種のようにそこで丸まっていても、

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エンドオブホワイト

君のねむる、牛乳みたいにしろいまくら、
清潔、
だというしるしのためにだけ、しろいまくら、
映画、
みたいになれないあおい焦燥、
君のためにだけ腰かけたあおい椅子が、
あかくなるまでの世界。


ふれあったところだけ皮膚がするするとまろやかになって、夏を怖がらずにいられる。
下書きのままでよかったのに夏の天使が勝手にペン入れした景色、芸術のわからないことを笑われているみたいに鮮明な輪郭が怖くって

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草食のワニ、半円のひとみ

信号が青に変わるまできちんと待っていれば、白線を踏むごとに正解の音がなると思っていた、
あの虫をころさずにいれば、ころされずにすむと思っていた。

かみさまは黒い黒いもやみたいなかたちをしている、
かと思えば特別美しくもない人間のかたちに見えるときもあって、
そういうときは度の強い眼鏡を外してまるまって眠ることにする。ドーム型の殻の中で。
わたしのつくった半透明のきれいなきれいな殻は時折ひかりを反

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なみだにだけは触れられるねゴースト

忘れないでほしいと忘れたくないをのせた天秤が釣り合わないと開かない大きな扉の前で立ちすくむ、死ぬまで釣り合わなければ死なないでいられるんだったらそれで良かったのに、それよりもっと前の、幸福だの何だのの前にこの扉はあるらしい。
句読点の打ち方が今日も分からないのに、分からなくても幸せになれるんだよと君は言うから泣きたくなる、
泣きたいのは悲しいときだけじゃないし、腹立たしいときだけでもないって、もう

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海が歌うからわたしは

 
歌にしないとやってらんないことばっかり詩にして、
そのくせ踊りださないようにって座らせる、いちばんきれいな服を着せて、いちばん綺麗な椅子に、いちばんかわいいポーズで。
サニー、わたし音楽の鳴る部屋にいられなかった日のことを覚えてるの、だから歌いたいの、歌いたいの、だから、ぜったいに、歌えないの。
 
 
リーブ・ミー・アローン
ぬいぐるみになれって
言われてみたかった
言われないのにぬいぐるみ

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