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深夜、堕落したブルーライト、ぼくら勝手に孤独になって輪廻。

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散文詩/自由詩まとめ。
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2020年1月の記事一覧

電脳式カーマ・デーヴァ

 
セックスのうしろで光る液晶で命を賭してたたかう少女

三時間六千円のガチャの中あたしURじゃなくてごめんね

ゴーグルがなくとも濡れたまなうらでプレイできちゃうVRきみ

棒読みの愛があなたと似てたからあだるとびでおを見て泣いてんの

プラグ抜けたからなにもかも消えました愛はセーブできないとかバグかよ

 
 
 

すっごい技術でふたりの間をいったりきたりしてたはずの愛、

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おいしいごはんのかくしあじ

 
 
 コンソメスープの中で、膝を抱えて泣くこと。やり場のない怒りが、鶏肉といっしょに卵でとじられること。どうしようもなく冷たかった孤独が、じゃがいもによりそってコトコトと煮込まれていくこと。心からこぼれたマイナスの感情は大きな鍋やフライパンの中にぼたぼたと落ちていって、女ひとりでは到底食べきれない量の料理に混ざる。
 できた料理が素知らぬ顔で食卓に並んで、それが、彼の口の中に運ばれていくのをじ

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ばたふらい・えふぇくと

 
どうせあたしたち今日にしか住めないので、タイムマシンなんかなんの意味もないような気がしませんか、過去は過去だしあたしきっともう蝶になれるし、そうしたらさなぎも暮らしていた樹の色も、もうどうだっていい。
 
 
ぱた
 
羽ばたきひとつで変わっていくかもしれない、未来のどこにも君は
 
ぱた
 
あたし妖精じゃないから、重たいからだひとつ運ぶのに精一杯なの
 
ぱた
 
ぱらぱらと流し見しただけ

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あんたの首輪は赤いから

 
 わたし生まれ変わったら、来世は、犬になりたいのだ。

 
 だいすきなあなたが飼っているちいさなフレンチブルドッグになって、赤い首輪をつけられて、たべものの名前(ココアとかわさびとか)をつけられて、可愛がりたいときにだけわしゃわしゃと撫でられて、ごはんをもらって、ふだんは家でさみしく帰りを待って、ドアが開く音で駆け寄って、リードをつけられて散歩に連れて行ってもらって、たまにベッドにもぐりこ

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魚たちは賛美歌をうたえない

 

ぼくがさみしいあいだは君にもさみしくあってほしいと思うこと、恋だとか愛だとかじゃないなら、なんて呼んだら文学であれるかわからなかった。君がなんびきも飼っているちいさな銀色の熱帯魚、ララ、リザ、ルーシィ、レイ、ロンド、うつくしい歌をうたうような名前の熱帯魚、ぼくにはいっぴきも見分けがつかない、いなくなったって構わない、熱帯魚。

水槽をひっくり返さない理由なんて君が泣くから以外になくって

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モノクローム・エス

 
しろいワンピースのおばけになって
大樹にかじりつく夢を見た
おなかが空いていたんだと思う

しろいネグリジェのおばけになって
海を飲みこむ夢を見た
のどが乾いていたんだと思う

そのうちハダカのおばけになって
彼とまざりあう夢を見た
きっと
さみしかったんだと思う

ぼくにはいつもおうとつがあって
ながい髪をよごしていたので
夢だとすぐに気づいてしまう
大樹を食べつくして
海を飲みほして

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最後の魔法で除夜をころして

 
ふしぎなペットもきらきらの衣装もいつかなくなるならいらなかったしセカイのために命なんかかけらんないけど魔法少女になれますか、守ってあげるから守ってくんないかな、ずいぶん薄くなった液晶の中で彼女たちはきっと、本当はなんにも守らなくても守られていて、守られていくはずだった、だから、戦えたんでしょう。
エネルギー、愛、なんて呼ぶより、欲、のほうが美しくない?
あいつら108回蹴り飛ばして君のヘイワく

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