前世の記憶が、陰陽師だった件。

最近、前世の記憶が蘇った。

誰も興味ないだろうな、と思って話していなかったけど。

僕の前世は陰陽師だった。

ありふれている職業なので、わざわざ書こうか迷った。

「なんだ、陰陽師か」と思われた方は、そのままブラウザバックしていただいて。甘いものでも食べて、昼寝でもして、空を漂う雲になった夢でも見ていてほしい。

かくいう僕自身も『もうちょっと特殊な職業がよかったな』と落胆したので。


おおまかに説明すると、僕の勤め先は除霊を専門にしていた。

一年目は、慣れなくて苦労したこともいっぱいある。

例えば霊を払いきれていなくて、憑けたまま寝てしまったり。

オフの日に友人たちと写真を撮ったら、それが映り込んでしまったり。

柴犬の式神を出しっぱなしにして、ご近所から騒音の苦情が来たり。(僕の住んでいたところは、ペット禁止だった)

詳しいことは前世の記憶で曖昧だから、質問されても答えられないです。

でもそう悪いことばかりでもなかったような気がする。

学んだことも多い。

困っている人を助ける、という仕事にはやりがいがあった。

そのため、つい頑張りすぎてしまうことも。


あれはたしか、悪霊の動きを止めるための御札を作っているときだった。

ご存じの方は多いと思うけど、御札は陰陽師の必須アイテムである。

調理師でいうと、包丁とかトルションくらい必須。

しかし一度つかうと燃えてなくなってしまうため、何枚も用意しておかなくてはいけない。

その御札の支度は、一年目から三年目くらいの新人の大切な仕事だった。

むしろ、それくらいしかすることがなかった。

詳しい作り方は前世の記憶だから、おぼろげです。


特定の字を特定の紙に書いていくという単調な作業。

僕がついその作業に入れ込んでいると、いつのまにか定時をすっかり過ぎて、外回りに行っていた先輩が帰ってきた。

そのときに言われたこと。

「なあいいか。お前がこれからも陰陽師をやっていくつもりなら、このことだけは覚えておけ。『絶対にやりすぎるな』。おれたちは確かに悪霊や妖怪に悩まされている人を救ってるかもしれない。でもそのおれたちが一日のノルマを超えて、延々と仕事し続けても、絶対にどこかで限界はくる。この仕事に終わりはないからな。それこそ人が生きてる限り。恨みや怨嗟が消えることはない。お前が疲労でぶっ倒れたら、誰が明日から御札を支度するんだ?」

およそそんなようなことだった。話が長いなあ、と思った。


でもたしかにそのとおりだ、と思った僕はそれから設定されたノルマを逸脱することなく陰陽師という仕事を続けた。

それから順調にキャリアを積んで、数多の名だたる悪霊や大妖怪『鵺』や『ぬらりひょん』と戦った気もする。

しかしなにしろ前世の記憶なので、詳しく書くことはできない。許してください。

でも陰陽師なんかは珍しくもない職種だと思うので、気になった方は人づてに聞いてみるといいかもしれない。

友人の友人、くらいで何人かみつかると思います。

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