倭寇軍の戦術【瓦氏夫人第78回】
倭寇軍の戦術
川の北側には、上陸した敵を王江涇へと誘い込む任を負う胡宗憲がいる。
胡宗憲は策を好む。この日、胡宗憲がどう動いたかについては、このときから七年後の嘉靖四十一(一五六二)年に記された『籌海図編(ちゅうかいずへん)』に詳しく書かれている。籌海図編の著者鄭若曽(ていじゃくそう)は胡宗憲の幕僚のひとりなので、胡宗憲の業績についての記述は多少割り引いて読む必要があるのだが、それによれば、胡宗憲は毒を投入した酒甕百余を船二艘に載せ、官軍の陣中慰労の酒と偽装し倭寇兵に奪