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たりないお話

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たりない、たりない、たりてる?
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笑え

笑え

そんなこと言ったってね。
しんどい時に笑える人間なんて数少なくて、どん底まで落ちた時は砕けただけの心が底には散らばっていて破片で怪我をして、また泣いて。私は自分の意見を言葉にするのも苦手だし、"怒り"とかマイナスの感情をそのまま直球で自分のものにすることが出来ない。帰路についてる時とか、シャワーしてる時とか、寝る前とか、なんか漠然と人間が考え事をする時間に怒りの確定判子を押すから「その場で言って欲

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鶴

鶴、と聞いて1番に思い出す暖かくて寂しい思い出がある。それは、親友のような存在の祖母との最期の寂しくて暖かい思い出だ。
私の尊敬する祖母は、亡くなる前によく、鶴を折っていた。最初は病気で動きにくくなる手の硬直を和らげるためだと言っていた。だがどんどんと「鶴の折り方が思い出せないから」と私に折り方を教えてくれと頼むようになった。昔は器用に紙1枚でなんでも作って、色んなものの作り方を教えてくれた祖母が

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日曜日18時の話

日曜日18時の話

さくらももこさんの皮肉が効いているのに暖かくて優しい感じが私には時折必要になります。日曜日、18時。毎週始まるあの子たちの日常、ちびまる子ちゃんには特に思い入れがあります。心に残ってる回がいくつもあるんです。月火水木金と、学校へ行き、土日はすぐ終わる。やっと宿題を終わらせたような時刻に、月曜日がやってくる憂鬱さを抱えた家族と、リビングで見ているちびまる子ちゃんは今思えば幸せの具現化のような時間で、

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音楽

音楽

初めて、心臓が鼓動したのだと思った。
当時2歳ほどであっただろうか。人生で思い出せる限りの最古の記憶は人混みの中、父に抱えられて聞いた音楽だ。どこか祭りのような場所にいて、歩き疲れた私は父に抱えられていて、隣には母がいた。幸せを絵に描いたような光景のなか、それは突如起こった。
戦争が始まったのだと、そのくらいの恐怖を覚えた。自分の鼓動を変えてしまうほど強いドラム、ベースは血管を揺らし、その後に鳴っ

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違和感

違和感

例えば、道にマスクが落ちてたとして、これはいつどういう経緯で誰が落としたのか容易に想像がつく。ハンカチや、片耳だけのイヤホンも、もしかしたら、とんでもないドラマがあったのかもしれないけど、それでもだいたい予想はできる。
落し物の多いこの街で、私が求めてるのはハートの5。あの日横断歩道に落ちていたトランプの違和感だ。

信号は赤に変わったばかり。電車が遅れていたため駆け足でバイト先に向かっていた。ふ

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新しいこと

新しいこと

とにかく新しいことを求めていた。新しい自分になりたかった、変わりたかった。 いつしか、色んなものを目で見たいと思うようになり、日を追う事にその願望は強まっていく。そんな思いとは裏腹に、なかなか踏み出すことが出来ず燻っていた、そんな私の新しいこと1つ目の話。
2023が始まった時やってみたかったことを全てやろうと、積極的に動こう、そう決意した。もとより消極的で自信を持つことが出来ない私にとっては大き

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