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お前が娘で良かった

拝啓 反面教師様 を読んでいただきありがとうございました。

こちらは母との思い出を振り返った内容でしたので、
今回は父との思い出を振り返ってみたいと思います。



そもそも私がなぜ日々の日記ではなく、
過去のことばかり書くかと言うと、
今の生活に不服なわけでも、過去に戻りたいわけでもありません。

ただ時が流れていき人生が終わってしまったということがないように
これまでの人生を今一度振り返ってみたいと思ったからです。

印象に残ったことばかりをピックアップするので
どうしてもきれいごとを書いているように思われがちですが
ご理解いただけますと幸いです。





さて父は、先の記事にも書いてあったように
私が「男の子だったらよかったのに」と思っていた人でした。

そのせいか幼少期の私は天真爛漫で
ズボンを履き、高いところによじ登り、町内を走り回っていました。
その分、たくさんケガをしていました。
右瞼は保育園の柱でぶつけてパックリ。
左瞼は小学生の帰り道に車のミラーにぶつけてパックリ。
どちらも大暴れしながら縫ってもらいました。


父はもともと企業のスポーツ選手だったため、
私にさまざまなスポーツをさせてくれました。

テニス、バトミントン、サッカー、バレーボール、ゴルフ
それなりにいろんな種目をこなせるようになりました。


周りより足が速いと気づいたのはは小学校3年生の頃。
体育の50m走で隣にいたサッカー部の男の子よりも速い記録を出しました。
それがなんと学年一の速さ。

それなりにスポーツをこなせても
特に長けているわけではなかったので私は驚きました。



6年生の時は陸上大会にエントリーされ、
いつのまにか市の大会の決勝まですすんでいました。

ここまでくると周りは
陸上クラブに入っている子たちだらけ。


はちまきをしていたり、
ユニフォームにクラブ名が書いてあったり、
皆、キラキラのスパイクシューズを履いていました。

〇〇小 〇〇 とゼッケンに書いた体操服、
底が削れた白スニーカーを履いているのは私だけ。

ちょっと場違いな気もしたけど
緊張でそれどころじゃなかった記憶があります。




ピストル音とともに湧き上がる歓声。

全速力で駆け抜けました。
ゴール線の手前、視界のなかで
1位ではないけど、
これはいけると確信しました。

結果は3位。
無事に県大会出場決定。

私には十分の結果でした。
母も、友達も、先生も
走り終えた私に駆けつけ、声をかけてくれました。




それでも私は一番に父に褒められたかった。
男の子に生まれてくることはできなかったけど認めてほしかった。

皆に囲まれているなかで父の姿を探したが見つけることができず。
駐車場に向かう父を追いかけた。


「お父さん!3位取れたよ!」

すると父は背中を向けたまま
「お前は最後まで走り切らなかった」
とだけ言いました。


私の笑顔は消えました。
父は振り返りませんでした。


残酷そうに思えますが、
父の言葉は間違っていなかったのです。

私は県大会に行けることを確信し、
ゴール線の手前で力を抜きました。
それに気づいていたのは父だけでした。

父は落胆したのでしょう。
負けてもいい、ドベでもいい、
最後まで走り抜いて欲しかったと。


それから県大会まで
何度も何度も何度も何度も走りました。

ゴールの線を超えるまで
一生懸命腕を振って、足を動かして。

今度こそ父に認めてもらえるように。




練習に疲れた私は
父が仕事で帰るよりも早くに寝てしまい、
自主的に朝練をしていた私は
朝、父に会うことが少なくなりました。

県大会数週間前。
朝起きると頭元に箱が置いてありました。
クリスマスでもないのになんだろうと思いながら箱を開けると
新品のスパイクシューズが入っていました。


父が買ってくれたことはすぐにわかりました。

私はそのスパイクシューズをぎゅっと抱きしめました。
スパイクシューズが手に入ったことよりも、父が応援してくれていることがわかって嬉しかったのです。





県大会当日。

市大会とは違う物々しい雰囲気。
でも不思議と緊張よりも楽しみが勝ちました。

私はひとりじゃない、そう思えたから。


結果は8人中、7位と残念な結果。
全国大会に進むことはできませんでした。

それでも私は最後まで走り切りました。


悔しいけど気持ちよかった。
走ることが楽しくして仕方なかった。


「よくやったな」父の声が聞こえました。

父は陸上を通して、不器用ながらに大切なことを教えてくれました。
男の子として生まれてくることはできなかったけど、父の期待に応えることができたのではないかと思いました。






2年前の結婚式当日。
父のエスコートのもとチャペルへ入場。

バージンロードは花嫁の一生を意味します。

ドアが開く前、
父が私に言った
「お前が娘で良かった」

私はその言葉を絶対に忘れません。






冒頭で述べた 拝啓 反面教師様 はこちらです。

#創作大賞2023 #エッセイ部門
乱文失礼しました。
随時修正予定です。

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