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ゲストハウスオーナーの悲喜交々

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長野市の小さなゲストハウス・1166バックパッカーズの飯室がゲストハウス経営の悲喜交々を綴ります。現場の話からスタッフ育成、宿をこれからどう育ててゆくか大きな声で言えない葛藤なん…
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#日々のこと

この場所から、いつだって思い出せる

この場所から、いつだって思い出せる

 8月の終わりに、2人の訃報が届いた。ここで宿を始めるにあたって、そしてここで宿を始めてから、大変お世話になった人生の先輩たち。死は誰にでも訪れるものだし、年齢だったり病気だったりでそこまで長くはないんだろうな、と知らされていたにもかかわらず、もうお会いすることがないんだと思うと、ぼーっとしてしまう。

近所のおばあちゃん

 おばあちゃんは開業前からとても気にかけてくれた。電気もガスもまだ通って

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繁忙期も心地よく過ごしてほしいけれど...

繁忙期も心地よく過ごしてほしいけれど...

 8月はお盆、その前後も含めてゲストリストがみっちり埋まる日々でした。暑さでただでさえ体力を奪われているなか、健康に乗り切ってくれたスタッフに感謝。行きたいところはきっとたくさんあるだろうなかで、1166バックパッカーズを思い出し、早々に予約をとってくださった旅人たちに感謝。この夏はこれなくとも、SNSなどで近況をチェックしてくれている旅人たちに感謝。

閑散期の宿泊がラッキーで、繁忙期の宿泊がツ

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自分で自分の仕事をおもしろくする

自分で自分の仕事をおもしろくする

 アルバイトのスタッフが仕事で何か凡ミスをしても、あまり怒らないようになった。同じことでも、以前は怒っていたかもしれない。でもこの数年はほとんど怒っていない。

怒らなくなった理由

 怒らなくなった理由は、アルバイトと経営者では、その仕事にかける必死さが全くもって異なるということを理解したからだ。凡ミスに都度怒ったって、その労力に見合った見返りはない。

凡ミスにはどんな弊害があるか

 例えば

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15〜21歳の女性ゲストを迎え思うこと

15〜21歳の女性ゲストを迎え思うこと

 ワーホリ@ながので滞在している女性、さとのば大学で滞在している6人の女性たち。それ以外にもここのところ、15歳〜21歳くらいの女の子たちの宿泊が続く。もちろん、15歳と21歳を一括りにできない成長差はある。親の庇護のもとに過ごしてきた時から、「自分」として外界と接してゆく境目。そんな場所に立っているゲストと過ごす時間は、なぜかこちらがドキドキしてしまったりもする。自分の子供でもないのに。

「若

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ドイツから53歳と18歳の父息子旅

ドイツから53歳と18歳の父息子旅

 お父さんにとっては2度目の日本、息子にとっては初めての日本。「どうして今回は旅に?」と尋ねると、「funny story なんだけれどもね…」と話してくれた。どうやら、もう一人の息子(お兄ちゃん)が少し前に日本に留学していて、本当はその際に訪ねようと航空券を手配していたのに、諸事情でこれなくて。そうこうしているうちにお兄ちゃんはドイツに戻ってきたんだけれど、やっぱり行きたい!ってなって、弟と一緒

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海外からのゲストにとっての長野

海外からのゲストにとっての長野

 昨夜はサウジアラビア2名、イスラエル、オーストラリア、イギリスから各1名、そして長野、静岡、香川、岩手から一人旅の面々が集まった夜。

イスラエルちゃんから見た長野市

 サウジアラビア、イスラエルからの旅人3人が口をそろえて言ったのが、「長野市は歩きやすい!」と。なかでも、イスラエルからの女の子は2ヶ月の日本滞在で多くの都市を歩いている。「兵役と大学の間のギャップイヤーで、イスラエルの若い人は

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旅先のおせっかいなお母ちゃんでいたい

旅先のおせっかいなお母ちゃんでいたい

 「どんなとき、楽しいな〜って思う?」という何気ない話をスタッフとしていたとき、私は「人が家に来てくれると楽しいなー」と答えたところ、ちょっと驚かれた。そう、私は自宅に友だちがご飯食べにきてくれたり、泊まりに来てくれたりすると嬉しい(ずっと、になるとつかれるんだろうけれども)。

ゲストハウスは旅先の家

 そういう性格なので、ゲストハウスの運営は楽しんでやれているのかもしれない。あまり大きなパー

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自分の知らない世界とのつながりかた

自分の知らない世界とのつながりかた

 昨年、オンライン登壇で大学の授業に出たとき、学生さんたちの多くがゲストハウス未経験だった。コロナ禍ど真ん中の学生生活だし、それは仕方がない。でも「学校の友だち、または親」というような限られた世界で自分の居場所を探さなくとも、世界はもっと広くって、どこかに自分にとってすっきりとくる居場所が存在している、そんな事実を知っているだけで生きやすくなるのになぁ、なんて思った。知らない世界があることを知るた

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閑散期における収入と支出(人件費)

閑散期における収入と支出(人件費)

 5月後半から7月の前半は、うちにとっては一年のなかでも一番の閑散期である。この期間は最大14人が泊まれる宿でも、ゲストはまばら。いっそのことゼロであれば休館日にしてしまうんだけれど、1名、2名だけぽつりと入っている夜もある。例えば昨夜。前日の段階で予約は1名だけだった。
 ありがたいことに当日予約でもう1名入りはしたけれど、それでも2名。収入としては4000円の宿泊代が2名で8000円。この時間

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苦手なゲストはいないが、苦手な空気はある

苦手なゲストはいないが、苦手な空気はある

 昨夜、お泊まりのお客さんに「苦手なゲストが泊まりにくることないですか?」と聞かれた。この質問、これまでにも何度かうけたことがある。13年ゲストハウスを運営していると、お客さんに対して「困った…」と思ったことはこれまでにある。一部は先日、noteで書いた。

 ただ、「苦手なゲスト」というわけでもない。もしかすると、私は「苦手な人」というのはそんなに存在しないのかもしれない。ただ、相手がどうこうで

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失敗した

失敗した

 先日のこと、宿の営業において、大きな失敗をした。未明にゲストのひとりを閉め出してしまったのだ。

玄関扉の二重構造

 1166バックパッカーズの玄関には「風除室」と呼ばれる、たたみ1畳くらいの小さなスペースがある。冬場、屋外からの冷気がダイレクトになかに入ってこないよう作った2枚目の玄関扉のことだ。

風除室に荷物を置いてもらう

 風除室を挟む2枚の扉には、両方にキーロックをつけている。スタ

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顧客にとってどんないいことがあるか

顧客にとってどんないいことがあるか

 今日、ある事業に関わっているかたから、その事業内容を聞く中で、「事業者としてやりたいことがいろいろあるのは素敵〜。それとは別に顧客の立場になったときにそのサービスを受けることでどんないいことがあるんだろう」と質問した。

自分をより良い状態にするためにお金を払う

 消費者の立場として、今、私がほしいものを考えたとき、例えば自宅のキッチンの窓にサイズの合う網戸がほしい。虫の心配をしないで窓が開け

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旅と移住は1本の線上にある、のかもしれない

旅と移住は1本の線上にある、のかもしれない

滞在の仕方

 ときどき、お客さんを連れて界隈を散策する。多い日でも5名くらい。少ない日は1名だけということもある。かなりの少人数制だ。朝の9時ころに宿を出て、たとえば路地を歩き、民家の奥に佇む小さなギャラリーを覗き、お祭りの山車をガラス越しに見て、蔵をリノベーションした複合施設を見学して、丘に登って景色を見て、おやつを食べて、古い街並みを歩きながら10時半頃には宿に戻ってくる。

顔を上げてみる

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スーパーのお弁当も美味しいよ、という隙間

スーパーのお弁当も美味しいよ、という隙間

「夕食、何食べるんですか? 明日何するんですか」って聞かないで

 私が初めて、宿泊を伴うひとり旅をしたのは、二十歳くらいの頃だったと思う。実家のある関西を起点に広島、宮島、福岡、熊本、長崎の離島、島根を回って戻ってきた。旅先の宿で「今日はどこに行ってきたんですか? 晩ご飯は何が食べたいですか? 明日は何をしますか?」と矢継ぎ早に聞かれ、(あぁ、どこかに行かないといけないんだ。何か食べに出かけない

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