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俳句・句集

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2023年3月の記事一覧

「年刊花林花2023」を読む⑫渡邊慧七氏

「年刊花林花2023」を読む⑫渡邊慧七氏

花林花という句会がある。
先日「年刊花林花2023」を頂いた。

各同人の花林花抄二十句の連作から、掲載順に感銘句を紹介。
※新しい同人のため十句連作が掲載されている。

渡邊慧七氏「寂寞」より。

種田山頭火の「分け入っても分け入っても青い山」を彷彿とさせるが、更に作者らしさや、定型句などの要素がある。空を掬うという魅力的な設定が、この句を爽やかにしている。

蟹を食べる場面なので、家族団らんだ

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「年刊花林花2023」を読む⑪内藤都望氏

「年刊花林花2023」を読む⑪内藤都望氏

花林花という句会がある。
先日「年刊花林花2023」を頂いた。

各同人の花林花抄二十句の連作から、掲載順に感銘句を紹介。
※新しい同人のため十句連作が掲載されている。

内藤都望氏「幽霊人」より。

ひまわり目線の句だと読みました。ひまわりが元気に咲いている時ではなく、終わりかけで中心部分が種になりかけて、うつむき始めている頃の様子。元気なひまわりの句が多い中で着眼点が良い。

クチナシの甘くて

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「年刊花林花2023」を読む⑩杉山一陽氏

「年刊花林花2023」を読む⑩杉山一陽氏

花林花という句会がある。
先日「年刊花林花2023」を頂いた。

各同人の花林花抄二十句の連作から、掲載順に感銘句を紹介。

杉山一陽氏「ゆううつ」より。

こたつとこたつの外との温度差で震えたのだろう。観察眼がある。なんとなく犬の性格も伝わってくる。

大きい鮫ではなく、小さなサイズの鮫だと思いました。鮫が大きかったら「かな」で詠嘆できずにもっと怖がるでしょうから。

ふるさとのほのぼのとした情

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「年刊花林花2023」を読む⑨宮崎裕氏

「年刊花林花2023」を読む⑨宮崎裕氏

花林花という句会がある。
先日「年刊花林花2023」を頂いた。

各同人の花林花抄二十句の連作から、掲載順に感銘句を紹介。

宮崎裕氏「願い」より。

なんとなく短冊をたくさん書いて笹にさげることはしない七夕。風習と日本人の慎ましさだろうか。

砂浜で貝殻拾いをしていて、きれいな貝を拾うことができたら一緒に来た誰かに(家族、友人、恋人などなど)見せる。動詞と名詞だけの構成でそれが分かる不思議さと上

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「年刊花林花2023」を読む⑧福田淑子氏

「年刊花林花2023」を読む⑧福田淑子氏

花林花という句会がある。
先日「年刊花林花2023」を頂いた。

各同人の花林花抄二十句の連作から、掲載順に感銘句を紹介。

福田淑子氏「菊かをる」より。

菊の花を選択した点が、作者らしさだと思う。宇宙から地球に映像が移り、それがどんどん拡大されて(グーグルアースのように)、地球上の菊と、その香りを嗅く作者で映像が終わる。菊が咲くのではなく、かをるという嗅覚が結句であるのも工夫を感じる。

海が

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「年刊花林花2023」を読む⑦鈴木光影氏

「年刊花林花2023」を読む⑦鈴木光影氏

花林花という句会がある。
先日「年刊花林花2023」を頂いた。

各同人の花林花抄二十句の連作から、掲載順に感銘句を紹介。

鈴木光影氏「一行物」より。

地面に落ちたことを「地の記憶始まれり」としている点が上手い上に、その後の葉っぱの運命が気になる物語性がある。

噴水に、ガラスが割れるような音が当てられていて面白いと思った。語順にも工夫がある。オノマトペで句の半分ほどを使う勇気や工夫もすごい。

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「年刊花林花2023」を読む⑤金井銀井氏

「年刊花林花2023」を読む⑤金井銀井氏

花林花という句会がある。
先日「年刊花林花2023」を頂いた。

各同人の花林花抄二十句の連作から、掲載順に感銘句を紹介。

金井銀井氏「スラックライン」より。

薬狩とは、山野で薬草や薬効のある鹿の角を採る風習だそうです。
ナイキのスニーカーをこの日のために買っておいて気合十分。

そういえば確かに!の句。テレビの映像と音から、ラジオで音の話題が移った後で、夏の雨の季語が出て、雨の音で終わるとい

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「年刊花林花2023」を読む④石田恭介氏

「年刊花林花2023」を読む④石田恭介氏

花林花という句会がある。
先日「年刊花林花2023」を頂いた。

各同人の花林花抄二十句の連作から、掲載順に感銘句を紹介。

石田恭介氏「どくだみの園」より。

「ゆらら」の浮遊感が、屋敷跡の「跡」感を強めているように思った。また、闇と屋敷跡の取り合わせが句全体の雰囲気を作っている。

世界平和を願う句とも、作者自身の未来への句とも読める。そう思ったのは
世界の涯の涯の字が、生涯の涯だからだった。

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「年刊花林花2023」を読む③榎並潤子氏

「年刊花林花2023」を読む③榎並潤子氏

花林花という句会がある。
先日「年刊花林花2023」を頂いた。

各同人の花林花抄二十句の連作から、掲載順に感銘句を紹介。

榎並潤子氏「クロッカス」より。

獣道の道をひらがなにしたことで、独特のやわらかさが出た。映像が浮かぶ句。

小さくて桃色な桜貝の形が、喩として活きている。血色の良さも伝わってくる。この句も映像が浮かぶ。

追憶の句だろうか。小さな映画館だと思う。映画よりも驟雨の方が気にな

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「年刊花林花2023」を読む②廣澤田を氏

「年刊花林花2023」を読む②廣澤田を氏

花林花という句会がある。
先日「年刊花林花2023」を頂いた。

各同人の花林花抄二十句の連作から、掲載順に感銘句を紹介。

廣澤田を氏「花野風」より。

ひな人形は独特の重さがある。ひな壇は重いが人形自体は重くなく軽くないイメージだ。それを「よき重さ」としたことで、雛の存在の重さも寿いでいる気がする。

空から若葉への視線の移動が面白いと思った。作者の視点を追体験できる句。「柿若葉」の季語の選択

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「年刊花林花2023」を読む①髙澤晶子氏

「年刊花林花2023」を読む①髙澤晶子氏

花林花という句会がある。
先日「年刊花林花2023」を頂いた。

各同人の花林花抄二十句の連作から、掲載順に感銘句を紹介。

代表の髙澤晶子氏「七回忌」より。

コロナ禍で色々な問題が浮き彫りになった。「コロナ」とは一言も書いていないが、世相を感じた。

詩のような謎めいた一首。擬人化されて秋風がしゃべる構図。この句がある連作のタイトルが「七回忌」であり、「わたしは誰でしょう」は実は故人の声ではな

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