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「年刊花林花2023」を読む⑧福田淑子氏

花林花という句会がある。
先日「年刊花林花2023」を頂いた。

各同人の花林花抄二十句の連作から、掲載順に感銘句を紹介。

福田淑子氏「菊かをる」より。

遥かなる宇宙の果てに菊かをる

菊の花を選択した点が、作者らしさだと思う。宇宙から地球に映像が移り、それがどんどん拡大されて(グーグルアースのように)、地球上の菊と、その香りを嗅く作者で映像が終わる。菊が咲くのではなく、かをるという嗅覚が結句であるのも工夫を感じる。

夏到来黒き海原抱きつつ

海が黒いのは汚染などではなく、景の喩だと読んだ。両手を広げて海を眺めている開放的な映像が浮かぶ。ただ、青ではなく黒なので、爽やかさだけではなく、作者の海への畏敬の念を感じた。

蝉しぐれこの世に遺すものいくつ

蟬の命の儚さと、自分が遺せるものはいくつかという切実さが重なっている。蝉しぐれの季語の選択により夏の終戦記念日も思わせるが、そこまで明記されていないので穿ち過ぎかもしれない。

命、宇宙、地球、自然などに対して感度が高い作者なのではないかと思った。命への真摯さや切実さもある。

以上。

続く。

最後までお読みいただきありがとうございました。 もっと面白い記事を書けるように日々頑張ります。 次回もお楽しみに!