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いとしきひと、いとしき作品

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宮沢賢治「なめとこ山の熊」*小十郎と熊たち~奪い/奪われゆくいのちと反転思想の愛についての覚書

宮沢賢治「なめとこ山の熊」*小十郎と熊たち~奪い/奪われゆくいのちと反転思想の愛についての覚書

すっと引き下がり静かに世界をまなざすと。
もうほんとに絵に描いたように、共同体の秩序維持装置としてすべてが供犠(くぎ)とスティグマの物語へと回収されてゆく。国家であれ王権であれ個のレベルであれ。繰り返し繰り返し共同体はスティグマを欲し続けてやまない。内/外。中心/周縁。われら/かれら。

伊藤三巳華先生が『スピ散歩』第2巻(朝日新聞出版)で視ていた、奈良の畝傍山山頂での古代の供犠の現場がとても面白

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あらためて、太郎さん敏子さんに想う

あらためて、太郎さん敏子さんに想う

すでにこの世になく、それでもなおその言葉や作品や足跡に烈しく心を揺さぶられるひとは岡本太郎さんだ。その透徹したまなざしと言葉の凄み。一瞬一瞬に生命をひらききり、血の噴き出すような痛みにたえずその身を投げ出し続けることを厭わなかったひと。敏子さんの手記を読むと痛いほどにそれがわかる。

生活の中の取るに足らない選択のひとつさえも命がけで選び、最期まで岡本太郎であることをつらぬいた。けっして奇矯な爆発

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すべらかに素肌でそのひとと抱きあう。そのからだにおけるすべてのわたしたちの、

すべらかに素肌でそのひとと抱きあう。そのからだにおけるすべてのわたしたちの、

記憶を幾重にもこの皮膚にしたがわせ。
ただひたすらこの夜の中、静かにやわらかく肌と肌をかさねいのちをさしだして…あたたかく埋もれつづけて。
ぶあつく指を這わせてそのさきの宵闇までまどかに届かせた。
わたしたち。たしかにここでこうして生きていたのね。


そうなの。ほんとうに滝本さんはからだの音楽のひとでもあると。
窓辺のスケッチや暑い夏や花びんや落下や雨の日の午後や…最新曲みずいろにいたるまで。

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太郎巫女・岡本敏子さん|岡本太郎のいのちとたましいにありったけに感熱感電し続けたそのひとにお逢いして

太郎巫女・岡本敏子さん|岡本太郎のいのちとたましいにありったけに感熱感電し続けたそのひとにお逢いして

見出し画像左より
『奇跡』岡本敏子/集英社(同・文庫版もあり)
『岡本太郎に乾杯』岡本敏子/新潮文庫
『岡本太郎 神秘』岡本敏子・内藤正敏共著/二玄社


サインの0度はもっともそのサインの性質をビビッドにあらわすというけど、やっぱ私の体質もそれなのかな。
アセンは魚だけど体質はむしろ月山羊が強く出てる。いまの疾患も山羊由来。しかも山羊0度で10室カルミネイト。土星オポ冥王星スクエア。太陽木星合

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風を読み風を解き風を編む風のひと、滝本晃司さん

風を読み風を解き風を編む風のひと、滝本晃司さん

この空を選んだ風の吹く夕暮れ
(2020年12月10日16:19 東京西部・多摩丘陵のほとりより南西方向をのぞむ)


そう。そうなんだよな。
ガンシップは風を切り裂くけど、
メーヴェは上昇気流をとらえて、
そこにふわっと躯体を乗せ空の高度まで舞い上がる。
鳥たちの飛行と同じ。

目には見えない。
けれどもたしかに風は吹いてそこに存在していて。

宮崎駿さんのメーヴェの飛行シーンは鳥たちの体感を

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