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詩集

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島の夏

島の夏

島の防波堤から

鼻をつまんで紺碧の海に向かって飛び込んだ時

鳥になったようだった

水音と共に

海面をつき破って深く沈んだとき

魚になったようだった

わらじまで灼きつくすような海辺の道を歩き

かっと照りつける太陽をまぶしく見上げた時

太陽になったようだった

故郷の 島の夏

負けるゆとり

負けるゆとり

勝って何あろう。我が意見通らずとも良し。その時は自分の意見が、絶対正しいと信じていても、後で、何てあさはかなと恥ずかしくなる事が、度々なので、負けようと決心して以来、心に「ゆとり」が出来た。あまり、腹が立たなくなったのである。私の「あだ名」は、子供の頃から「外人」、頭は天然パーマ、目は大きい。戦争中は、外に出ると、いじめられるので、家で、本を読んだり、防空壕で「コオロギ」と遊んだりしていた。

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朝の戦争

朝の戦争

「七時やで」二十歳の次男を布団の上からゆすって起こす。

続いて隣の十八歳の三男の部屋に行ってまた起こす。返事はない。

二分間、次男と三男の部屋を行ったり来たりする。たいがい次男が、この間に起きてくれる。かけ足で台所に下りて、みそ汁を温めて、テーブルに置く。

「弁当忘れるんやないで」と声をかけつつ、二階に上がって三男の布団をたたんでゆく。いつもなら掛け布団はすぐたためるのに、今日はしっかりとつ

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喉につまったお弁当(私だって食べにくい!)

喉につまったお弁当(私だって食べにくい!)

主人と私、青年期の息子と大井川鉄道に乗りました。

汽車弁当がおいしいとあったので、ちょうどお昼時になるし、注文しておきました。売店では売り切れていて、汽車の中に売り子さんが入っているからとのことで、私は4歳くらいの子どもとおじいさんの前に座りました。

汽車弁は私たち家族が買うと売り切れ。目の前で、4歳くらいの子どもは「おじいちゃん、おべんとうかって」と泣きわめく。おじいさんは(どっか弁当売って

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散らかっていても

散らかっていても

部屋にはカセットテープや灰皿、マンガに楽器が散らかり放題、開け放った窓から雨風が吹き込んで、びしょぬれになっても大いびきで寝ていたことのある息子。安物の赤いマットレスが色落ちしだして、シーツは真っ赤。ベッドから血のように赤い水がしたたり落ちていました。

その部屋を整理していたら、恋愛と結婚をめぐる本が出てきて、息子がその中のアンケートに回答を書き込んでいます。「部屋のインテリアをコーディネートし

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使えない一円玉って何

使えない一円玉って何

駅前のすし屋ですしを買い、630円のうち「十円」分を五円玉と一円玉で払おうとしたら、「うちは一円は扱ってないので」と断られた。お金として扱われない一円玉って、一体何なのだろう。

消費税の導入によって、一円の価値が見直されたなんてうそ。バスの乗車賃を払うときにも、五円玉を二枚、十円の代わりに混入したら、「あっ、困るな」と言われた。かと思えば、あるとき、急な呼び出しで出かけ、バスに乗ったら、財布の中

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生かされている

生かされている

母のひく大八車には

山で切った木と 白桔梗と

妹たちが乗っていた

私は後押しをしていた

夕日が妹たちの顔を 赤く染めていた

ふいに妹たちが 夕焼け小焼けを歌い出した

ふりかえって母は

ああ 生かされている

と言った

あれから四十年

今日は白桔梗を活けました

母さん 生かされています

ありがとう

息子を想う短歌

息子を想う短歌

口数は 少なくなれど吾子の弾く テンポ早きベースに我も和みぬ

厨房の 仕事を語る吾子は今 少年期を過ぎ 青年の面差し

幾あまたの 豪華な花を踏みにじれば 失意の吾子の 希望とならぬか

しゃぼん玉

しゃぼん玉

子供が二人しゃぼん玉をしている

ぼくのが大きいや いやぼくんや

けんかしているうちに

ふたつのしゃぼん玉がくっついてしまった

ふたつの心が ふたつのしゃぼん玉が

ひとつになって もっと大きくなってとんでった

二人の子供は 手をつないで笑った

心と魂

心と魂

心が悲しみで くずれようとする時

魂が心を支えてくれる

自らを燃やし 人々を暖める太陽のように

時には自転して

寒い冬をも創る地球のように

ひよ

ひよ

ひよの つっついたみかんは

とってもあまいの

ぴいーーー

ひよは細長いくちばしで

ぶつかるように みかんをつっつくの

傷ついたみかんは

ひよが食べたのは あまいよって

ほこらしげに傷口を

すこしきびしくなった風にさらしてるの

午前七時

午前七時

午前七時 私の影は前方にある

私と同じ背の高さ

右足をひきずる事しかできない私にも

二本 人並みな足が出来る時間

つばさある鳥の影が

黄色いかたばみ咲く道を

一緒に歩く時間

生きゆく力が湧く時間

忘れられたベース

忘れられたベース

人待ち顔のベースが窓際で夕日をあびている

高校生だった息子が毎日弾いていたベース

今 彼は油まみれになって働いている

疲れるのか もうベースを弾かない

そっと弾いてみると低くピーンと鳴った

初めて声変わりした時の息子の声のような音で

いつの間にか紫色に黄昏かけている

心のにじ

心のにじ

心の中に にじを作る

しゃぼん玉のように

まろやかで やさしい にじを作る

悲しくて 涙が出たって

思いやりの心があれば

ピンクやブルーのきれいなにじが 

心の中にできる

愛のにじ

勇気のにじ

希望のにじ