化学って何だろう? その1

大学受験を控えて理系の学部を選ぼうとしている受験生も多いのではなかろうか。
その理系の中で化学が関係するところは多い。
高校や大学の先生とはちょっと違った視点で化学の話をしたい。
受験生の進路選択や社会人のリスキリングの一助になれば嬉しい。

基礎的なところで理学部の化学系、生物化学系、分子生物学系、高分子学系などがある。
理学部の化学は高校化学の延長に近いとイメージして良いだろう。
しかし、「基礎=簡単」という意味ではない。
科学技術や文明社会の基盤となるサイエンスとしての化学であり、幅が広く深掘りだ。
具体的には、周期律表の元素の性質や反応性を原子の構造から理解する。
それら元素の組合せからなる物質の構造、反応性、分析法、物質を創り出す合成法の理解へと展開する。
同時に、研究手法を身につけ、新たなサイエンスを見出す研究に取り組む。
新たなサイエンスを見出すには神様の微笑みが必要となる場合が多い。そのために学部に加えて大学院までかかるかもしれない。
高校までの化学はインプットが中心だったろうが、大学での化学はアウトプットまで目指す。

応用的なところだと、工学系の物質材料、生物工学、環境、燃料、地質や資源などがある。
農学系だと農芸化学、栄養学、応用生物/生命など。
薬学系でも化学は重要な分野だ。
そもそも医薬品は化学物質だ。
繊維系でも材料を考えるとき化学が重要だ。
繊維は高分子化学を利活用している古くて新しいハイテクだ。

機械系でのプラントや装置の設計などには化学工場の設計も含まれ、ここでも化学が関係する。

化学は物理学や生物学との境界が曖昧だ。
原子分子の話だと量子力学や電磁気学の知識も必要となる。
原子分子の集合体を考えるときは統計熱力学や物性論にも重なる。
半導体や有機ELなどの材料科学は化学と物理学との境界分野だ。
燃料電池やリチウムイオン電池は酸化還元反応を基本とする電気化学を中心とする分野だ。
放射性物質の理解には化学に加えて放射性壊変等の原子核に関係する物理学の知識も必要となる。

一方で、化学は生物学とも密接だ。
DNA、RNA、タンパク質などは生体高分子と言われて生命現象を司る物質でもあるし、遺伝情報を世代を超えてつなぐ重要な役割を担っている。このような調和の取れた仕組みは見事なもので神が創り出したと思わずにはいられない。
多様な物質は生体を構成する基本的なものであり、生命現象は生体での多くの化学反応(生化学反応)の集合とみることが出来る。
そんなところが、生物系の分野に化学が深く入り込む理由だ。
薬(医薬品)は物質だ。最近では、古くからの有機化合物だけでなく、生体高分子も薬として利用されている。
薬に限らず食物に含まれる栄養素も物質として考えられる。
何故に物質が薬や栄養素に関係するのか。繰り返しになるが、それは生体が物質でできていて、生命現象が生化学反応の集合だからだ。

さらに、生体の構成物質や生体が生産する物質を利活用する分野、生物の仕組みや機能を真似た技術の分野でも化学が関係している。

物質のあるところに化学あり。広い分野に化学は関係している。


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