マガジンのカバー画像

音楽の話をする時は大丈夫な時

25
その人の好きな音楽を知ることは、その人の心の中に流れる音楽を知ることだ
運営しているクリエイター

記事一覧

夢は、僕の生活には必要ない。

もう10年も前の、つまらない思い出。

あるアーティストのライブに行った。当時は長男が1歳になったばかりで、妻に「悪いけどちょっと行ってくる」と言って暇をもらったのだった。

開始前に物販を眺めて、ドリンクを買ったことは憶えている。しかし、肝心のライブの内容はまったく憶えていない。

それなりに良かったとは思う。思う、というのは、記憶が飛んでしまったからである。

そつなく本編が終わり、立て板に水

もっとみる
「団体」の話

「団体」の話

インターネット上で、音楽4団体の自民党支持が批判されている。「コロナの時に自民党は何もしてくれなかったではないか」「音楽に政治を持ち込むな」等々。

うん、音楽業界内でよく議論すればいい話だと思う。

個人的な感想を言えば、この国は(他の国のことはよく知らないけど)「団体」に泥仕事を任せ過ぎる。昔、著作権の仕事をしている頃、私的録音録画補償金の問題、著作権の保護期間延長問題等々を巡る様々な対立を見

もっとみる

いのち輝く / 熊木杏里

人生はゲームでしょうか。

武器を取って、仲間を見つけて、何かに打ち勝つべきものでしょうか。

あるいは、人生は物語でしょうか。

起承転結、描いたゴールまで、無事たどり着けるでしょうか。

そうか、横軸でとらえるのではなく、瞬間で、点でとらえるんだ。

Happiness is a journey, not a destination.

水 / SHERBET

水 / SHERBET

この曲を聴くのは何年振りくらいだろうか。

いい曲なのだ。浅井健一の作る音楽が好きな人なら、必ず名曲だと言うであろう、ファンならば誰でも知っている曲。

いい曲なのだが、しかし、僕にとっては、日常的に聴く曲ではない。

なぜかと言えば、それは、もう心の中に流れている曲だから。

この世界で、どれだけの人が、愛する人に想いを告げられずにいることだろう。

ごめん、ちょっと気持ち悪かった。

でもいい

もっとみる

自分たちのヒーロー

これは矛盾だらけで、偏見に満ちた話。

先日、職場の若手と好きな音楽の話になった。彼はMr.Childrenが好きなのだと言う。

「へえ、他には?」
「他は…あんまりないですね。ミスチルばっかり聴いてます」
「えっ?24歳でしょ?なんかこう、あいみょんとか聴かないの?私あいみょん好きだけど」
「いや、あいみょんはあんまり」
「別にあいみょんじゃなくてもいいんだけど、若者の音楽というか。というか、

もっとみる

Lotus in the dirt / 槇原敬之

「やった後悔よりも、やらなかった後悔の方が大きい」

そう言われている。

しかし、両者にそう違いはないんじゃないか。3年前くらいにそう思った。

「やった後悔」も、結局「どうしてもっとうまくやれなかったのだろう」という「やらなかった後悔」になるから同じこと。

その時はそこまで。

この年末に、ふと思ったのは、「諦めない」ということ。

そうか、「どうしてもっとうまくやれなかったのだろう」は、現

もっとみる

音楽の話をする時は大丈夫な時

「何だァ?是永、怒ってんのかァ?」

顧問が僕に言った。弓道部だった高校時代、放課後の部活中の1コマだ。

部員のA子が取り成そうとする。

「怒ってないよね?ね?もともとこういう顔なんだよね?」

なかなか酷い言いようだ。

「そうです」と僕は応えた。

本当は直前に顧問が言った何かの言葉に猛烈に腹が立って、ずっと鬼の形相をしていたのだが、ここはA子に免じて許すことにしよう。

「君は、憎めない

もっとみる

LOVE LETTER / 槇原敬之

昼間に街中で制服姿を見かけ、ああ、もう卒業式は終わったんだな、と思う。

僕の学生時代は、夜の校舎窓ガラス壊して回るほど抑圧されてはいなかったが、今なら言えるだろうか偽りのない言葉、と思うほど素直でもなく、割と人混みに流されても変わっていかない方だった。

ふと槇原敬之の『LOVE LETTER』が頭の中に流れてくる。ファン投票では必ず上位に来るアルバム曲だ。ファンが好きな曲、というのはそのアーテ

もっとみる
不良の森 / Blankey Jet City

不良の森 / Blankey Jet City

僕は人に好かれる方である。

それはなぜかと言えば、人が好きだからだと思う。

人は、自分を嫌う人のことを好きにはならない。

当たり前のことだよね。

そして、僕がなぜ人が好きかと言えば、他人に期待していないから。

期待していないから、基本がゼロ。

ちょっとでも面白かったり優しかったりすれば、もうその人はプラスになる。

だから、好きになる。

最初から僕に悪意を持って接してくる人も、マイナ

もっとみる

ボーイフレンド / aiko

世界には、aikoを讃える千の言葉がある。

それはきっと的確で、適切で、また美しいから、僕が付け加えることは何もない。

だから僕は他の誰にも語り得ない、個人的な思い出を書き留めておくことにする。

大学時代のある日、男女のグループでカラオケに行った。

90年代の若者にとってカラオケは教養であった。大して興味もない新譜をチェックしてレパートリーにしたり、歌詞に秘めた想いを託して歌い上げたりして

もっとみる

槇原敬之

1999年、僕は金沢・武蔵ヶ辻辺りの信号待ちで、カーラジオから槇原敬之逮捕のニュースを聞いた。

特に不思議には思わなかった。

今回、前回よりも残念ではあるが、やはり驚きはしない。

槇原の歌は、弱くて卑怯で小さな最低の人間が、後悔し、反省し、もがきながら、それでも何とか真っ当でありたいと願う人の歌だから。

僕ら古参のファン、いや少なくとも僕は、「好きなものは好き!」とか「僕が一番欲しかったも

もっとみる
Cana sotte bosse Live@茅場町七針 2020.1.26(Sun) -小林未季 × Cana sotte bosse-

Cana sotte bosse Live@茅場町七針 2020.1.26(Sun) -小林未季 × Cana sotte bosse-

新年、あけましておめでとうございます。

まあ、そう言わないで。

今回は、2020年、新年初のCanaさんのライブ。Cana初め、Cana詣でなのである。

河岸は茅場町七針。僕には未知の箱。

駅の名前としての茅場町は知っている。証券会社が立ち並ぶビジネス街。ライブハウスがあるとは思っていなかった。

きっと労働に疲れた企業戦士たちが夜な夜な集う隠れ家的スペースなのだろう。

これはまた…随

もっとみる

Love was sleeping. / 槇原敬之

ある春の日のこと。

大学の食堂で友人と食事をした後、外に出ると雨が降っていた。

特に珍しいことではない。

石川県には「弁当忘れても傘忘れるな」という格言がある。

そして、大雨でも予想されない限り、いちいち傘を持ち歩かないのも県民の気質だ。

僕は構わず歩き出し、用意のいい友人は傘を差した。

「入る?」

彼女は言った。

「いや、大丈夫」

僕は軽く手を挙げて振ってみせた。

ふと一言が

もっとみる
Cana sotte bosse Live@下北沢440 2019.11.16(Sat) -Púca presents two-man show! PAVILION vol.5 Púca × Cana sotte bosse-

Cana sotte bosse Live@下北沢440 2019.11.16(Sat) -Púca presents two-man show! PAVILION vol.5 Púca × Cana sotte bosse-

Canaさんのソロライブは今年これが最後だという。

「ことし、さいご…」

僕はうわ言のように呟いた。

行くしか、ない。

野口英世には4人ほど死んでもらうことになるだろう。戦略上、避けられないことだ。

今回は「Púca(プーカ)」という何やらプカプカしたバンドとのタイマン勝負、いやツーマンショウらしい。

オケージョンは下北沢440。僕には初めての場所だ。Googleマップを頼りに現地に向

もっとみる