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「団体」の話

インターネット上で、音楽4団体の自民党支持が批判されている。「コロナの時に自民党は何もしてくれなかったではないか」「音楽に政治を持ち込むな」等々。

うん、音楽業界内でよく議論すればいい話だと思う。

個人的な感想を言えば、この国は(他の国のことはよく知らないけど)「団体」に泥仕事を任せ過ぎる。昔、著作権の仕事をしている頃、私的録音録画補償金の問題、著作権の保護期間延長問題等々を巡る様々な対立を見ていて思ったのは、(こんな問題、有名なアーティストが発言すれば一発で解決するだろうに)ということだった。ナントカ協会、ナントカ連盟…前に出てくるのはいつも団体で、批判されるのもいつも団体。そして外野が騒いで、皆いつしか忘却する。

著名な写真家の方から聞いた話だが、旧共産圏のあるキュレーターが日本に来て驚いたのは、日本ではいまだに「美」が芸術のテーマたり得ていたことだという。彼らの国では、「政治」「権力」「欲望」、そういったものが芸術のテーマになっているのだと。

美を追求するアーティストと、泥仕事をする団体。正直言って、その構図が間違っているのかどうか、私にはよくわからない。これも大きな視点で見れば、一つの在り方なのかもしれない。

山本七平さんの『日本はなぜ敗れるのかー敗因21カ条』にこういう記述がある。

 社会主義とか資本主義とか、体制とか反体制とか、さまざまな理論とか主張とかーしかし、人びとは忘れている、人間という生物の社会機構の基本とは、実は、食物を各人に配給する機構だという事実を。
 もちろんこの配給の形態は種々さまざまである。貨幣・配給切符・直接給食等々々……。しかし、つまるところは、人の口に食物をとどけることが、社会機構の基本であって、これが逆転して機構のため食物が途絶すれば、その機構は一瞬で崩壊するー資本主義体制であれ、社会主義体制であれ、また日本軍の"鉄の軍紀"であれ……。

団体がなぜ存在しているのかと考えれば、それは所属者の生活を守っているからだろう。

「音楽に政治を持ち込むな」と言う時、誰かがその政治を引き受けている。生活を守るために。

その団体は本当に生活を守れているのかどうか、いずれにしても、外野ではなく、それを生活の糧としている音楽業界内でよく議論すればいい話だと思うのだ。

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