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は?こちとら" Hausfrau(主婦)"や!

 ここ最近旅行での出来事を多く書いていますが、海外赴任に付き添った人や、なにかの事情で仕事を辞めたり休んだりしたら1度はありそうな出来事に遭遇したので、今日はそれを書いておこうと思います。


 家族が海外赴任をするとき、夫婦や家族の誰かが会社を辞めたり学校を転校することになったり、なにかしらの変化が必要になります。

 私も海外へ行くため、一旦仕事を手放しました。
幸いなことに海外生活が安定する前からお声を掛けてくださる方もいましたが、先日別の記事でも書いた通り今はビザの関係もあって、本格的な就労ができない状態です。

 お子さんがいる人なら、学校や幼稚園などの準備も必要ですし、我が家のように夫婦だけで海外に来ていても色々なことがあって、海外生活のスタートはずっと夫婦ともどもバタバタとしているわけです。


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 そんな中、以前お仕事でお世話になった人たちがお昼に食事会をするので、乾杯のときだけでもリモート参加しないかとお話をもらいました。
お声がけがとても嬉しかったので「ぜひご挨拶をさせてほしい」とお話したのです。


 しかしドイツと日本の時差は夏場で7時間、冬場は8時間あります。
今はサマータイム中なので、食事会がもし13時くらいに始まるなら、ドイツは朝6時にリモートでつなげる準備を整える必要があります。

 普段から6時半位には起きていますが、最低限の身支度を整えるとなると少なくとも30分前には起きていたいところです。ネット環境がいつも不安定なので、そのチェックも考えると6時前には起床するが無難なところ。

 普段よりも早起きになるので、万が一を考えて時差のことも伝えた上で「もし寝坊したらすみません。(笑)」と冗談混じりに言ったのです。


するとその方から返事が届きました。



「そっか、今無職だもんね。その時間寝てるよね。いいよねぇ無職は」






「は?」



 


 ちょっと私、ぽかんとしてしまって。
この食事会、休日の開催なんですよ。お仕事がお休みなら、いつもよりゆっくり眠る人なんてたくさんいると思うんです。

 その方を含めた皆さんは13時以降に集まるそうで、遠方から来る方もいないのでせいぜい2,3時間前に起きれば充分準備は整います。
一方私は、移動する時間がないとはいえ、時差の関係上5時台、ギリギリを攻めるとしても6時起床がマストとなってくるわけです。


休日の5時台に起きるって食事会の準備時間やない、
もはやサーファーかキャンパー、
もしくはスキーヤーの出発時間やん!!


「 無職だから起きてない 」ってどゆこと?
ってかその言い方結構トゲない?



返信を読んでから数分もしないうちに、
そんな言葉が一気に頭の中を駆け巡りまして。
(別に生まれも育ちも関西じゃないのですが、なんでか心の中のツッコミが関西風でしたすみません)


 実際のサーファーさんやキャンパーさんはもっと早い時間に起きて準備されてるかもしれないんで、それは本当にお疲れ様です、楽しんできてください……って感じなのですが。

 結婚式などの冠婚葬祭などならまだしも、朝5時台に起きて食事会の準備は、それはもはやゲストじゃなくてホスト側の仕込み時間じゃないですか。
(ホスト側の方だって、そこまですることはそうそうないと思う)


 無職だから毎日ルーズに起きて、ぐーたらと気楽に生きてると思われ、それに対して羨ましいと言いながらもうっすらバカにしてる感じがしてしまって、ものすごくイラッとしてしまったのです。

無職の人だって事情があって仕事をしていないなら、朝早起きする無職の人だっているはずですし、「無職 = 怠けている」とは限らないじゃないですか。働きたくても働けなくて、結果無職という人だっているはずです。


冗談という前提でかわす返事をしましたが、
ジョークにしてはちょっとエッジが立ちすぎです。

そしてそれと同時に、「はー、これか!!」とも思ったりもしてしまって。



これが世に聞く、
働く人が専業主婦や産休育休中の人に掛ける
「 心無い言葉 」ってやつか…!



それに気づいたとき、
イラッとしていたはずなのにちょっと感動してしまって。
(大分情緒不安定ですが。笑)


「 マウント 」という言葉が最近はびこりすぎてあまり好きではないのですが、これはもう典型的なやつですね。
働いている自分のほうが忙しく、偉く、優位な存在なのだ、という前提がどうしてもしてしまいます。

そういう前提で考えているからこそ、働かずに生きている私が、辛い思いもせず安穏と幸せそうに生きていると思い、ずるいと思ったり、妬みや嫉みそねみを感じているようにも見えました。


***


 私は老若男女関係なく、働く働かないは自分の意思と都合で選べばいいと思っているところがあるので(もちろん自分の意思や都合で決められない事情もあるでしょうが)、社会に出てたくさんの給料を貰うことだけが偉いとかそういう考え方があまりありません。

 隣で机を並べて同じ仕事をしているのに、もらえるお金に差があるのなら、不満に思うこともあるでしょうが、そのくらい比べやすい状況でなければあまり他人を意識する必要はないと思っています。
というか、こちらに迷惑を掛けてこないなら、好きに生きてくれと思います。

 他人に自分の常識を押し付けるほど、疲れるけど無意味なことってないと思うのです。
これに気づいてから、私は大分生きるのが楽になったような気がしています。でもそうじゃない、人のことをとやかく言う人ってめちゃくちゃたくさんいますし、そっと距離を置いても気づいたら隣りにいる……みたいなことが結構あるのが現実です。


***


 今回のことについても、実際は水面下でちょっと動いているし、やりたいことに向けての準備もしているのですが、「 無職 」なのは事実としてあります。
 何度も言いますが、「 無職 」だっていいと思うんですけどね。それぞれ
の事情もあるでしょうし、他人に迷惑を掛けているわけでもないなら、なおのこと。


 そしてなにより、私は「 主婦 」でもあるのです。
これは公的な書類などにも選択肢としてある、真っ当な職業です。今のところ私の職業と言えば、海外生活を必死に立ち上げようとしている「Hausfrau」なのです。


ドイツ語で主婦のことを「Hausfrau」と言います。
(「Haus = 家」の「Frau = 女性」でHausfrau、「Haus = 家」の「Mann =
男性」で「Hausmann=主夫」という言葉もあります)
私は現状、ドイツで書く書類などの職業記載欄では、Hausfrauにしています。


一応言っておくと、
「 主婦 」は「 無職 」ではありません。


 うちは海外生活のスタートが散々だったので、家族の療養のために食事の準備に普段以上の配慮が必要でしたし、今も色々なトラブルにぶつかっては先陣を切って対処に当たる担当として、ネットで調べたり大家さんや周りに相談しては実行するを繰り返し、少しでも暮らし安定させるために必死なソルジャー的な主婦Hausfrauをしています。

 海外生活をしてるしてないに限らず、世の主婦や主夫の方は、家の中に発生する数々のトラブルと戦い改善しようとする、ソルジャー的な部分があるように思います。
 トラブルが無いようにするのが当たり前で、安定させ続けてしまうとどれだけ高水準でそれを保っても「普通」と思われてしまう、難儀なお仕事です。

 ついでに言っておくと兼業主婦(主夫)は「 実質ダブルワーカー 」だと思っています。専業主婦(主夫)の仕事や役目が少ないのではなく、兼業主婦(主夫)の仕事が多いのです。
給与が発生しないから副業扱いにならないというだけ、くらいに思っています。
 それに主婦や主夫は家に1人である必要もなくて、夫婦で主婦・主夫くらいの気持ちで家を支えた方が良い時期や家族関係だってあってもいいはずです。共働きでどちらかが兼業状態になっているのなら、なおのこと家族での相談と皆の合意が必要だと思います。


***


 話を戻しますが、うちにはうちの事情があるように、ほかのご家庭にはほかのご家庭なりの事情や苦労やトラブルがあって、家族が健康に生きるというだけでいっぱいいっぱいの時期があります。

 それは海外で暮らすご家庭に限らず、日本で暮らす方々だってそうで、それぞれの家庭の事情で泣く泣く仕事を辞めなければいけないこともあれば、逆に夫婦ともに働かなくていいくらい「人生超楽勝!」みたいなご家庭だってあるかもしれません。皆それぞれに色々な事情を抱えているわけなの
で、無職であることも全然問題ないはずなのです。


 それにどんな家庭で、夫婦や家族の収入や労働状況、家事などの配分がどうであろうと、家庭内で折り合いがついていればいいことですし、他人がそれを評価したりとやかく言う筋合いはないのです。
なにより、言ったところでなんも意味はなく、ちょっとした憂さ晴らしをしたつもりで、結局自分の心が汚れるだけと私は思います。


***


 私はその方にドイツ生活の大変さを事細かに伝えているわけではないので、SNS等でよく見かけるような、キラキラの海外赴任生活をしていると思っていたのでしょう。

 実際その方とお話する中で、そう思われている感じが何度もありました。家事をする以外暇で、働かずに優雅に暮らしていると。なんなら「その国の中でも高級なレジデンスに住んで、お手伝いさんでもついているんでしょ?」みたいな前提の話なのです。
この円安の時代にそんな優雅な海外赴任生活、どこの国だとでできるのでしょうね……できるなら私だってやりたい。(笑)

 我が家は今のところ自炊率90%以上ですし、当然ながらお手伝いさんもいないし、言葉の通じない環境でオドオドしながら生活に慣れていこうとしている真っ最中なのですが、誤解を解こうと事実を伝えても、謙遜と勘違いされてあまりわかってもらえませんでした。「またまたぁ!」って感じです。

 事実を伝えても伝わらないならもう仕方ないっすね。うん、仕方がない。
こちらはもう事実を伝えたので、理解してもらうことは諦めました。



いい経験をさせてもらったけれど、
やっぱりこういうことが起きるとイラッとしたり、モヤッとしたりしてしまうもので。


でもこれ以上、ここに時間を使うのはもったいないので。
バシッと切り替えて、私は私の生活を続けようと思います!


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