The Beatles 全曲解説 Vol.212 〜You Know My Name (Look Up The Number)
シングル『Let It Be』B面。
ジョンの作品で、リードボーカルはジョンとポールの2人で務めます。
ビートルズはやっぱり楽しい!4人のユーモアセンスが結集した全力コミックソング “You Know My Name (Look Up The Number)”
いよいよビートルズ全曲解説、解散前の楽曲としては最後の曲紹介に移ります!
取り上げるのは、本国イギリスでのラストシングル『Let It Be』のB面に収められたこの曲です。
発表は1970年ですが、実はその3年前にあたる1967年に大部分のレコーディングがなされていたこの曲。
ある日ジョンが電話帳をめくっていたところ曲のイメージが湧き、ポールに曲の構想を持ち込みます。
書かれていた歌詞は「You know my name, look up the number 俺の名前知ってるんだろ、電話帳で調べてみろよ」の一節のみ。
あまりの単純さにポールも「たったこれだけ?」と呆気に取られたのだとか。
ジョンは当たり前のように「そう、これだけ」。
常識破りで本能的なジョンのアイデアをポールも面白がり、レコーディングへと移ります。
曲は5パターン録音され、それぞれをメドレーのように繋げる構成となりました。
そのとき完成した初期バージョンがこちら。
豪快なボーカルが聴けるパート1。
コミカルでタイトな演奏のパート2。
ポールのダンディなボーカルが光るパート3。
ジョンとポールが奇声を上げるパート4。
最後を締めるジャジーなパート5。
どこをとってもカラフルで、サイケ期ビートルズらしい遊び心に溢れています。
リリースバージョンではパート2が削除され、約6分あった演奏が4分ほどに縮められての発表となりました。
聴きどころはやはりパート3でしょう。
パブ「スラガ」のお客のざわめきに乗せ、ポールが「デニス・オーベル」という場末のシンガーに扮して登場します。
普段曲でふざけることの少ないポールが、ここでは色気あるジャズシンガーを全力で(?)演じており、ファンの爆笑を誘います。
パート4以降の演奏にはマル・エヴァンズやローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズも参加。
関係者も巻き込んで全力のおふざけを見せる、ビートルズのユーモアセンスが結集された楽曲と言えるでしょう。
ビートルズの公式発表曲全213曲の解説はこれでラストですが、連載が終盤に差し掛かるにつれ、どうしてもこの曲の解説で締めたい!との思いが強まっていたのがこの “You Know My Name (Look Up The Number)” でした。
何故かというと、最もメンバーが「楽しんで」レコーディングしたのが伝わってくるのがこの曲だからです。
筆者含めこの地球上にいる何億ものビートルズファンの人々。
何故皆さんはビートルズが好きなのでしょうか?
愛が伝わる、勇気をもらえる、演奏が上手い、常識の破り方がスゴい…。
色々な理由があると思いますが、共通して根底にあるのはシンプルにどんな曲も「楽しい」からではないでしょうか?
ビートルズは、楽しい。
他のどのミュージシャンよりも、楽しいんです。
ハンブルグで粗野な演奏を8時間行った。
悲鳴を上げるビートルマニアを前に戦慄した。
スタジオにこもり、多彩な音に挑戦した。
バンド崩壊に抗いながらも有終の美を飾った。
ビートルズはその歴史のどんなタイミングでも、ユーモアを忘れませんでした。
楽しむことを忘れませんでした。
それは解散から半世紀を過ぎたこの困難な時代において、私達が最も忘れてはならないことです。
ですが、恐れることはありませんよね。
彼らが遺してくれた音がある限り。
前に進むのが怖くなった時。
全てを諦めそうになった時。
いつでもビートルズは「楽しさ」で背中を押してくれます。
そんな時代に生きている幸運に感謝して、解説を終わりにしたいと思います。
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