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ヌレガミの短編

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大和ヌレガミの短編です。ジャンルばらばらですが気軽に読んでやってください。
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記事一覧

短編小説「ボトルアクアリウム・ブルー」

短編小説「ボトルアクアリウム・ブルー」

飼い犬のポックンが余命宣告をうけた。獣医師からは真顔で「もって三か月というところですね」と言われてしまった。悪性リンパ腫の場合は三か月、とマニュアルで決められているかのように、きっぱりと断言されてしまった。

妻と離婚して以来、独り身となった俺の部屋に訪問介護と称し、月一ペースで遊びに来てくれる友人がいる。友人の名は宮本。その宮本もコロナの第六波がおとずれ、ここ三か月ほどうちに遊びに来なくなった。

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短編小説「アナログ・エロス・トレーダー」

短編小説「アナログ・エロス・トレーダー」

 俺の中での三大至福のとき。それは山頂で飲むエスプレッソ。こたつの中でいただく冷凍みかん。仕事中に読むエロ本……ん? 最後のは異論しかないやて? 若いな。尖っているな。まぁ、俺の話を聞け。納得できなかったら酒の一杯でもおごってやろう。

      ※

 その仕事はとある清掃工場の受付だった。施設手前に設けられた小部屋で、ゴミ収集車の運転手から伝票を受け取り、判をおして返すというもの。

 そこ

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短編小説「RPGモブキャラクター」

短編小説「RPGモブキャラクター」

 都内の一日感染者数が二桁代におちたころ、俺はひさしぶりに友人の宮本を飲みに誘った。ほんの数ヶ月前はファミレスでも食事するときはマスクをしてくださいと店員に注意されたりしたものだが、まわりの客たちは気にしないで大声で笑っていたりした。

「どうですか? 最近はなにか面白いことあった?」

「コロナだからね、イベントもなくてつまらないよ。家と職場の往復。映画館も漫画喫茶も行けないしね」

 宮本はそ

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短編小説「ジローインスパイア・タイムトラベラー」

短編小説「ジローインスパイア・タイムトラベラー」

 ラーメン屋の食券機について俺は思う。店員の注文を省略し、客の回転を速くする目的もあるだろうが、それだけではないと思う。たとえば行列店で後ろに客がひかえているとき、なんとなくせっつかれている感じになり、ついつい余計なトッピングをつけたりしたことはないだろうか?

 これはとある昼下がり、人気ラーメン屋でおきた不思議な物語。

 俺はその日、セミナーで都心にまで来ていた。オフィスとガード下の飲み屋で

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短編小説「グルメの大将」(裸の大将放浪記パロディ)

短編小説「グルメの大将」(裸の大将放浪記パロディ)

 小川からすこし離れた獣道を歩いていると、一人の男が行き倒れていた。

「あの、おじさん、だいじょうぶですか?」

 肩をゆっくりとさすってやると、男は気がついた。

「ど、どうやらぼくはお腹が減っていたみたいなんだな」

 男は独特なしゃべり方だった。が、特筆すべきはその出で立ちにあった。もうすぐ冬だというのにタンクトップにショートパンツ。リュックに赤い蝙蝠傘。極めつけに足元は下駄。まさしく地元

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短編小説『バス・マナー』

短編小説『バス・マナー』

 ある日の朝、バスを待つ列の中にイザワさんの姿を見つけた。
 栗色に染めたショートボブ。ショルダーバッグがずり落ちそうな撫で肩、だけど凛とした立ち姿。間違いなく彼女だ。
「おはよう、珍しいね。今日はこれで?」
「うん、たまには違うルートも試してみようと思って」
 挨拶をすませた俺はイザワさんの四つ後ろ、列の最後尾にまわった。
 イザワさんは前にたびたび、俺の通勤ルートについて聞いてきた。「バスに乗

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短編小説「ファンタジア」5

短編小説「ファンタジア」5

#眠れない夜に

 ピピピピ……ピピピ……。
 飾り気のないアラーム音が俺を起こす。なんだか頭がぼんやりする。下着姿のまま、鏡に向かう。昨日までの俺とは何かが違うような、変わってしまったような気がする。が、顔にはなんの印も刻まれていない。ただ、ねむたそうだとしか言いようがない。
 朝飯をウィダーインゼリーですまし、椅子にかけられているジーンズを手にとった。ジーンズの膝はどろどろに汚れている。
 そ

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短編小説「ファンタジア」4

短編小説「ファンタジア」4

#眠れない夜に

「ごめ~ん。ちょっと来て~。レポート手伝ってほしいね~ん」
 隣の部屋ががらりと空き、タマキさんが手招きした。気を使ってなのか、たまたまのタイミングかわからないが、もちろんエスケイプ。わんわん泣くタマキ父を、距離をとって見ることで、やっと気がついた。タマキ父が役者をあきらめたのは彼の中で正解なのだ。彼はその正解を条件、状況、素質を問わずに他人にまであてはめたがっていたのだ……。

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短編小説「ファンタジア」3

短編小説「ファンタジア」3

#眠れない夜に

 そして転送先では知らんオッさんとオバはんが、あぐらをかきながら飯を食っていた。オバはんのほうはダボっとしたスウェット姿だったが、オッさんは銀色の全身タイツを着用していた。ピッチピッチのジャストサイズだったため、贅肉のラインが丸わかりでみっともなかった。
「オマエハナクソ! オマエハナクソ! オマエ、メハナダチクソ!」
 カーテンレールにとまっている九官鳥がいち早く俺に気がつき、

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短編小説「ファンタジア」2

短編小説「ファンタジア」2

#眠れない夜に

↑これまでのあらすじ

「このへんでえっか」
 タマキさんは自分のショルダーバッグをガサゴソといじると「あれ、タクトないな……あ、昨日リュック使ってたから、そっちか……」と一人ごちた。そして突如、木の枝をパキリと折った。
「お、お前、なにしてんねん?」
「あ~、だいじょぶ、だいじょぶ。どーせ、すぐに生えてくるさかい」
 そう言うと、枝を持って地面に五芒星を書き込んだ。
「じゃあ、

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短編小説「ファンタジア」1

短編小説「ファンタジア」1

#眠れない夜に

 国道沿いの景色が俺は嫌いだ。
 それが知らない町だと、よりいっそう居心地が悪い。
 電車を二本乗り継ぎ、俺は知らない町に来ていた。千葉よりの東京で、歩いている若者のジャージ率が高く、ヤンキーが多そうな印象を受けた。
 駅の北口を出て、まっすぐ寂れた商店街を抜けると大通りに出る。その大通りを右に曲がって十分ほどするとクリーニング屋が見える。さらに五十メートルほど歩くと国道沿いに出

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