【5分で読める】四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(憎悪の火26)【無料試読あり】
このお話のあらすじ
ユリノ様が去り、主人公はスオウの呼ぶ声を頼りに目を覚ます。そして澪と最後の会話を交わした。
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以下本文
「この勾玉・・・・・・」
「これは渚が持っているべき物だ。しかし、力のことや我らのことを忘れたいと思うなら、これは私が持って行こう。時間はかかるだろうが、記憶が薄まると同時にその身の力は弱まり、やがて消える。そなたは普通の人間として暮らせるだろう」
「普通の人間として?」
「そうだ」
妖力を持っていない普通の人。霊感の無い普通の人。こうやって自分や家族が命賭けの戦いに巻き込まれることのない、平和な毎日。こうなった最初の頃に、「普通になりたい」と一瞬よぎったことを思い出す。
でも、私はその勾玉を受け取った。そっとユリノ様の手に自分の手を重ね、しっかりとユリノ様の目を見て勾玉を握りしめた。『忘れる』という選択肢は、今の私には無かった。
ユリノ様が小さく笑う。釣られて私も笑う。これでもう、ユリノ様とはお別れなのだ。なんと言っていいのかわからず、沈黙してしまう。でもその沈黙は気まずいものではなく、お互いの幸せを静かに願う温かな沈黙だった。
「きっと私は父に怒られるな」
「え、なんでですか?」
「こんなに地上をめちゃめちゃにして、たくさんの者の命を奪ってしまうきっかけになったんだ。あの短気な父は今頃上で激高してるだろう」
「そんなことないですよ。だってスサノオって今は神様として人間に慕われてますし、これだけ長い時間が経ったんですもん。きっと丸くなってますよ。それに元はと言えばユリノ様のお父さんが悪いんです!」
「そうか・・・・・・ふふ。そうだといいな。やっと、みんなに会える」
ユリノ様が天高くを慈しむように見上げる。肩の荷が下りたユリノ様の体は、向こう側が透けてきていた。私も、早くみんなに会いたくなった。
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