【5分で読める】四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(憎悪の火27)【無料試読あり】
このお話のあらすじ
スオウは九尾に奪われた力を主人公から受け取って高らかに戦いの終結宣言をする。
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以下本文
かなり長い時間、私はスオウの腕の中で泣いていたと思う。それでもスオウは文句も言わずにずっと背中をさすり続けてくれていた。その手は大きくて、力強くて、安心できた。
スオウが着物を着ていないことに気づいたのは、もう流せる涙も無くなって、声も出せなくなってからだった。まだしゃくり上げている私をスオウが少し離して、羽織から取り出した手拭いを濡らして戻ってきた時に、羽織の下が洋服になっていることに気がついたのだ。
驚いて目を見開いていることにスオウが気づいて、手拭いを渡してくれながら寂しそうにはにかむ。
「気づいたら小雪の着物が無くなってた。きっと逝っちまったんだな。あの人は。なんにも言わずに・・・・・・」
「うん・・・・・・スオウはきっと泣くから会わないって」
「なんでぇ。またあんたには顔見せたのか。俺ぁ嫌われちまったのかねぇ」
「そんなことない! そんなことないよ・・・・・・」
「・・・・・・わかってる。あいつのことは、よくわかってるさ・・・・・・」
「・・・・・・スオウ。小雪さんから預かったもの、渡すね」
「え?」
私はスオウの顔に近づいて、指をその額に当てる。
「お、おい・・・・・・何を・・・・・・」
戸惑うスオウを無視して、私は目を閉じてユリノ様に言われた通りにイメージする。私の魂からスオウの魂へと移し替えるように。指を伝ってスオウの力と小雪さんの思いをそっと注いでいく。
私の中から何かが移動していく感覚があった。それは私の心臓を出て、腕を通り、スオウの額から心臓へと移動して溶けていく。そっと目を開けると、スオウの周りに風が吹いて着ている服を膨らませていた。羽織が優雅にはためく。スオウは風に弄ばれながら狸の姿へと戻って行った。
羽織を残して完全に狸の姿になると、今度はまとわりついていた空気の流れが背中の方へと移動する。いくつものつむじ風が短い毛の生えた腰の辺りに集まると、それぞれが立派な尻尾に変わっていった。スオウは8本の尻尾が生えた化け狸の姿に戻ったのだ。
「す、すごい・・・・・・ほんとに8本あったんだ」
「こりゃあ、一体・・・・・・」
「小雪さんが、赤子骸に取り込まれたスオウの力を取り戻してくれたの。その力を私に託して、小雪さんは行くべき場所に行くって消えちゃった」
「・・・・・・そうだったのか。ありがとうな」
「私は・・・・・・何も・・・・・・」
「何言ってんだ! あんたが全員を縛っていた呪いを解いたんだ。あんたのお陰で平和になった。俺の力も戻してくれた。きっと、あんたじゃないとこれはできないことだから、小雪はあんたに託したんだ。頭のいい娘だったからな」
「そうなのかな・・・・・・でも、助けてあげられないヒトも居た・・・・・・お母さんも・・・・・・」
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