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#エッセイ 記事まとめ

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noteに投稿されたエッセイをまとめていきます。
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2021年5月の記事一覧

じいちゃんと、一生の後悔。

 大好きなじいちゃんがガンを患ったと知ったのは、暑い夏の日だったか。  日直係の元気の良い号令の後に続いて、口パクのさようならを言う。4年生になってからは、帰りの会が終わるとひとりで帰ることが多くなった。いわゆる「思春期」の前段階に突入していたらしく、先生、親、それまで仲の良かった友達にまで、理由もなくとがった態度を取るようになった。代わりに、スクールカーストの上の階層に位置していた、少しやんちゃな子たちと仲良くするようになった。何をするにもやる気が出ず、かと思えばすぐに感

切り離す過去

 髪の毛は大切だ。  ありすぎても鬱陶しいし、少なすぎても悲しくなる。  髪の量が多いか少ないか。長いか短いか。  その差で周りから見られる印象は大分変わる。実年齢と見た目年齢もそれで左右されるものだ。  自分の一部のそれにハサミを入れて切り離しても痛みは感じないが、本当に痛くないのだろうか。  感じようとすれば、心はざわつくものなのかもしれない。    私はその髪について、美容院へと行った翌日に「髪切った?」と聞かれるのがものすごく苦手だ。  髪を切ったという質問の後にプラ

23年前のCDコンポを捨てることにしたら予想外の結果に

コンポを捨てることにした。 大学入学のときに両親に買ってもらったコンポ。MDが録音できるやつ。 1998年に買ったやつだから、もう23年も前のやつ。まだまだ全然動く。さすがSONY。 大学に入学したあの日、6畳ひと間の部屋にホームセンターナフコで買ってきたラック。その1番上に置いて、松たか子のサクラ・フワリを流した。 めちゃくちゃいい。松たか子の綺麗なvocalの伸びが良い!めちゃくちゃ気に入った! それまではアイワのCDラジカセにKENWOODのMDウォークマンをつ

ひろみちおにいさんといっしょ

みなさんは「おかあさんといっしょ」をご存知だろうか。 私もその昔、毎日おかあさんといっしょを見ていた子どもの1人だ。中でも大好きだったのは、ひろみちおにいさんだ。 ご存知ない方のために説明すると、ひろみちお兄さんはNHK10代目たいそうのお兄さんとして1993〜2005年まで活躍された体操のインストラクターである。 私の同世代からしたらキングオブおにいさんと言っても過言ではない。「おかあさんといっしょ」にはうたのおにいさんも勿論いたが、途中で入れ替わりがあったので私にとっ

ポストが好きである。

ポストが好きである。 信号を確認するのと同じくらいの心持ちで、ポストの位置を確認して町を歩いている。 黒や茶色、ピンク色のポストもあるが、私はとにかく赤いポストが好きである。町の中で、こんなにも豪快で潔い赤を他に見ない。紛うことない赤色が、ポストの存在価値のほとんどを締めていると思っている。そして素晴らしいことに、使い古されたポストであっても日々の雨風に負けることなく、その赤を持ち続けている。意志のある赤だと思う。 赤とは、不思議な色である。 書道作品の中にも赤がある

白昼夢

 お昼寝って幸せ。  一人でするお昼寝はただスッキリするだけだが、彼女と一緒にするお昼寝はとても幸せだ。  昨日はお昼過ぎくらいに彼女の家に行き、ソファーでしばらく喋ってから「なんか頭が痛いから少しだけ寝ていい?」と言って寝室に向かった。    彼女と付き合って2年4ヶ月。  付き合いたての頃は「頭が痛いから寝たい」なんて弱い部分を見せたくなくて言えなかった。  しかし、付き合っていくにつれて考え方も変わった。  自分の弱い部分を見せないと彼女も弱い部分を見せれない。  

言葉の船を漕げる人になる。

日ごろ生活していると、相手になんと言葉をかければいいのか分からない場面が、多々ある。 たとえば、「相手を励ますときの言葉」がそのうちの1つだ。共感するところがある人もいるかもしれないが、わたしは「自分と立場や境遇の異なる人」にかける言葉を見つけることが、けっこう苦手だ。わたしはその人とおなじ状況に置かれたことがないから、まるでその人の気持ちを知っているかのような顔をして言葉をかけることなんてできない。なにも言葉が見つからないとき、わたしは慎重になるあまりに「黙って」しまうこ

リタイアは「魂のため」のボーナスタイム

「そういえば最近イチロー神はどうしているのだろう」とふと気になって、最近の動向を調べてみた。引退直後こそ草野球に興じたり中高生に指導する姿が話題になったが、時間が経つに連れて彼のニュースを目にする機会も減ったように感じていたからだ。引退直後は環境の変化もあって新しい人生を楽しめていたかもしれないけれど、そのアドレナリンが切れて「イチロー」ではなくなっていたらどうしよう、と勝手に心配までしていた。大変余計なお世話である。 調べてみた結果、つい最近も古巣のマリナーズでノックを受

今日ここであなたに譲れてよかったな、いつも空けてた地下鉄の席

緊急事態宣言も3回目ともなると、朝も夜も地下鉄の空き具合には大して影響はない気がする。 今朝のタイムラインで「緊急事態宣言が解除されるとテレワークの実施率が2~3割下がる」なんてニュースを見たけれど、かくいう私も、緊急事態宣言下ではリモートワークが許可されるものの、そうじゃなければ毎日地下鉄に揺られて通勤している。 不幸中の幸いとでも言えばいいのか、私が地下鉄に乗っている時間は大して長くない。 ターミナル駅にある職場から、最寄駅までの乗車時間は10分にもならない。 何駅

「30年前に母が書いた幼稚園の連絡帳を読んだら、共感の嵐だった」を、ダイヤモンド・オンライン様に寄稿しました。

すでに文章部分は削除済みですが、2021年5月に「今日の注目記事」でご紹介いただいたnote「30年前に母が書いた幼稚園の連絡帳を読んだら、共感の嵐だった」を、ダイヤモンド・オンライン様に掲載いただきました。 もしこぴさん(@moshikopi)にご協力いただき、母だけじゃなく、父の立場で書いた連絡帳の内容もご紹介しています。 加筆版となっていますので、ぜひ、お読みいただけたらうれしいです。 (元記事にコメントをいただいた皆さま、ありがとうございました。わたしが見返した

父は寿司屋を営んでいた。 私が跡を継がないという理由で15年くらい前に廃業したけど、幼少期の私にとって父が経営する寿司屋は、格好の遊び場であり、魚の捌き方を教わった料理教室であり、大人のお客様との接し方を学んだ社交場であった。 ずらりと並んだカウンターの一番奥が私の特等席だった。 目の前にはそれなりに大きな生け簀がおかれ、鯵や鯛が泳ぐ姿を心ゆくまで見ることができたからだ。学校の帰りに小走りに立ち寄っては、夜の営業が始まるまで特等席に座って宿題をしたり、仕込みを手伝わせてもら

陽キャであれ Be ambitious

「陽キャ」「陰キャ」なんて言葉があるそうです。 一般的なイメージで言えば、陽キャは性格が明るく社交的で友達が多いアウトドア派、陰キャは引っ込み思案でおとなしく物静かなインドア派みたいな印象を受けます。言うならば、昔からあった「根明」「根暗」なんて言葉が今風に変化している感じですかね。実際意味や印象もかなり近いものを感じます。 とは言え、そのときの状況や条件によって性質なんていくらでも変わりますし、人間性や性格なんてものは一言で表せるはずもありません。このように二極化してしまう

蕎麦湯が来ないと思ったことはないけれど

現実逃避中。インスタもツイッターも見ず、週末をひとりで過ごしてる。子供を産んで約10年で、初めてだと思う。 土曜、いろいろなことに限界を感じた。土曜の夜仕事から帰ってきた夫に、明日、予定ある?と聞くと、ないという。じゃあさ、わたし、ひとりで他のところに泊まって、月曜日の朝に帰ってきてもいい?と夫に聞くと、「いいよ」と。深く聞かないところが私と随分違う。わたしなら「は?え?なんで?どこいくの?」って聞く。間違いなく、聞く。なんならたぶんちょっと怒る。でも夫は全く聞かない。聞か

おいしい人生の必需品

 ねぇ、カートリッジ換えた? 今日のお米、おいしいね!  当時 小学1年生だった娘のことばに、心底おどろいた。たしかに炊飯前、わたしは浄水器のカートリッジを交換した。白米を食べて、水の味の違いをわかるだなんて、どんな繊細な舌を持ってるんだろう。天才じゃあるまいか。もう、この子は料理人に育てるしかない!と思ったかどうかは忘れたけれど、わたしは舞い上がった。  今思えば、すべての幼いこどもは天才だし、娘は料理人になりそうにない。   ❅    我が家のキッチンには、ポッ