恵美

書道講師の仮面をかぶった、書き順フェチの硯コレクターです。 コラム的なものを好き放題書…

恵美

書道講師の仮面をかぶった、書き順フェチの硯コレクターです。 コラム的なものを好き放題書きます。

マガジン

  • 平井オープンボックス 活動情報

    • 174本

    平井オープンボックスに関わる皆さんのご自身の活動レポートや、関連投稿、小さな発見などをまとめたマガジンです。

最近の記事

電子書籍の導入

 悩んでいる。  最近Kindle Unlimitedを登録した。Kindleの電子書籍の一部を自由に無料で読むことができる、いわば「本のサブスク」のようなものだ。  月額980円。本を一冊買うよりも安い。あっという間にもとが取れてしまうシステムだ。  今までも何度か登録しようか迷っていたのだが、「でも本はやっぱり紙だよなぁ」なんて思って、なかなか踏み出せずにいた。そのくせ青空文庫のアプリはやたら愛用していて、人間とはほとほと矛盾を積み重ねて生きるものである。  Ki

    • 私の友達の作り方

       私は1人行動が多い。  今でこそ「お一人様」が普通になっているが、その以前から私は一人でどこへでも出かけていた。高校の制服を来て平然と一人で吉野家で牛丼を食べていた。旅行もディズニーも一人で行く。どこか行きたいところがあるときに「誰かを誘おう」という発想がない。だからといって「一人がラク」という考えもない。一人でも誰かと一緒でも、「どっちも同じ」と思っている。  つまりは友達がいないのだ。学生時代の友達はほとんどいないし、仲間のような所属先もない。ハッキリ言って、友達と

      • 人生ではじめて買った本

         私は小さい頃から図書館派で、というのも家から歩いて3分ぐらいのところに図書館があり、物心付く前から、いやむしろお腹にいるときから通っていた。  子供の頃から絵本も紙芝居も図書館で借りていたのでいわゆる”自分の本”というものを持ったことがなかった。本は読むものであって所有するものでなく、楽しい本がいくらでも借りられる図書館さえあれば、”持っている”必要性は全く感じたことがなかった。  そんな私がはじめて自分のお小遣いで本を買った。小学2年生の梅雨の頃である。  まあ、み

        • 東京都民から千葉県民になって変わったこと

           千葉県民になった。一昨年の秋のことである。  私は生まれも育ちも東京で、知っている限り祖父の代から東京なので、完全に東京文化の中で生きてきた。東京と言っても山の手ではなく下町の方で、江戸っ子と人情と祭り好きの熱っ苦しい人に囲まれて生きてきた。学友もほとんどが祖父の代からの東京都民で、出身校の校歌を3代で歌える家も少なくなかった。我が家も中学の校歌を兄と私に教えてくれたのは父だった。物忘れの多い父が兄の中学進学直後に突然校歌を熱唱し始めた日は家族全員度肝を抜かれた。青春時代

        電子書籍の導入

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        • 平井オープンボックス 活動情報
          174本

        記事

          6本353円の筆を買った

           私の書いた字を見た人に言われて若干イラッとすることがある。 「上手いですね。さぞかし高くて良い筆を使っているのでしょうね」  こいつ何言ってんだよ。  口は悪いがそう思う。じゃああなたが高くて良い筆を買って、書いてみろよ、上手く。  当たり前だが、高くて良い筆を使っているから字が上手いなんてことはあり得ない。しかしそれを理解できていない人のあまりに多いことか。  どんなに高いパソコンを買っても、使う人の能力がなければただの箱なのだ。多才なソフトもプログラムも、使い

          6本353円の筆を買った

          字が古くなる

           『ひらがなテキスト』というものをたまに販売している。  普段のペン字教室で生徒さんが使うのを目的に作ったのが始まりであるが、通えない人にも販売してほしいとの要望を多くいただき、オンラインやイベントなどでも販売していた。  初代ひらがなテキストを何度か完売・増刷を繰り返したあと、私はそれ以上の販売を中止し、新しいひらがなテキストの制作にとりかかった。そして半年後くらいに『新・ひらがなテキスト』の販売を開始した。  この『新・ひらがなテキスト』も何度も完売・増刷を繰り返し

          字が古くなる

          2023年 マニアを超えて生きていく

           年末に風邪を引いた。それはそれはもう、なんでこれがコロナでもなければインフルエンザでもないのか、許しがたいほどの風邪であった。二週間たった今も鼻炎が続いていて、鼻を拭き過ぎで鼻周辺の皮膚がむけ、肌が荒れ、こんなに毛穴ケアに気を使っているのに無惨にも乾燥毛穴が開くばかりである。  思い返せば10月ごろにも風邪をひいた。そのときは朦朧とする中、筆をとり、暦を書いた私であるが(過去記事参照)さすがに今回は筆を取らずに大人しく寝る他なかった。とにかく体が重くて仕方ないのだ。全身の

          2023年 マニアを超えて生きていく

          松山が好きである。

           ――まことに小さな国が、開花期を迎えようとしている。  司馬遼太郎の小説『坂の上の雲』の冒頭である。  私はこの一説がいたく好きだ。  2009年から2011年にNHK大河ドラマの特別編として放映されたドラマ『坂の上の雲』でも毎話の冒頭に渡辺謙さんのナレーションが入った。 「まことに小さな国が、開花期を迎えようとしている」  このナレーションを聞くだけで、あらゆる痛みを乗り越えながらも世界の一員になるべく希望に向かってひた走る日本の姿が想像でき、高揚感に胸がいっぱ

          松山が好きである。

          今年もこの季節が来てしまった!!!【令和六年甲辰略暦】PART2

          ⇨⇨⇨前回からの続き  猛烈な風邪で意識朦朧とする中、暦を作るために机に向かった私。  ここですぐに筆を持ち始めると想像されるかもしれないが、いやいや甘いぜ! 暦の中で一番時間がかかり大変なのは「構図」、そして「割付」である。つまりは「何をどこにどう書くか?」という設計図のようなものである。  オーソドックスなカレンダーであれば「何を記載するか」がほぼ決まっているため、そこまで大変な思いをすることはない。月日、曜日、祝日などを書き込んで終わりだ。しかし略暦になるとそうは

          今年もこの季節が来てしまった!!!【令和六年甲辰略暦】PART2

          今年もこの季節が来てしまった!【令和六年甲辰略暦】

           今年も残すところあと2ヶ月を切った。  私はというと、9月ごろからずっとソワソワしていた。実態のないなにかに追われている気がしてならなかった。  夏の終わりの寂しさ。あっけなさ。猛暑に耐え抜いた達成感。そして秋の訪れの高揚感。買い物に出たときにふと薫る枯れ葉の匂いに、ノスタルジックを求めてついCLASSの「夏の日の1993」を聞き返してしまう。そして思い出すのだ。私にはやらなければならないことがある、ということを。  暦作りだ。  そう、暦。暦が私を待っている。これ

          今年もこの季節が来てしまった!【令和六年甲辰略暦】

          今日このあとビルらない?

           去年末くらいのことであるが、職場のお偉い上司が小松川高校出身と知って驚いた。  小松川高校とは平井駅南口から徒歩約20分という、とんでもなく通学しにくい位置にある進学校である。このあたりの高校では珍しくセーラー服の制服で、私が物心ついた頃から一度も変わっていない。上司に訊いてみたら、上司の時代から変わっていないという。うっかり制服の話を持ち出してしまったものだから、そのあと小松川高校の制服に関するウンチクを聞かされることになったのだが、右から左に受け流しすぎて全く覚えてい

          今日このあとビルらない?

          紙のはなし

           前回2回にわたって筆の話を書いた。  書道というものはどうしても金がかかる。趣味や芸事にはそれぞれ金がかかるものだとは思うが、私は書道の先生を名乗っているにもかかわらず、人に書道をはじめることをあまり推奨できない。それくらいにお金がかかる。  例えば衣装を使う芸事ならば、おさがりという対処法がある。フィギュアスケートの衣装などを手縫いでやりくりしているという話もテレビでよく見る。その点、書道でおさがりできるのは硯だけだ。手作りできるのは……えーっと……紙とか!?  し

          紙のはなし

          送料込み82円の筆を使った

           (前回の記事がまだな人はそちらから読んでね!)  送料込み82円の筆を買った、そして届いた。  日本で封筒を郵便で送る場合の切手料金は84円である。私は84円切手を貼って通信講座を郵送している。紙っぺら1枚で84円である。それが細長い固形の物体、筆を封入して82円。もうこの時点で赤字は明らかである。  一体全体どういう神経をしていたらこんな商売をしようと思いつくのか。それを知るためには実際に使ってみるしか方法はない。  みなさん筆を買ったことがあると思うのでご存知だ

          送料込み82円の筆を使った

          送料込み82円の筆を買った

           ネットで買い物をするのが好きである。  特別高いものを買うことはない。オークションやらで珍しいものを求めることもない。コスメを買ったり洋服を買ったり。家の中で買い物をして家まで届けてくれるという「ぐうたらどんとこい!」なシステムが根っからの出不精の私にシンデレラフィットするのだ。  ネットで買い物をするのが好きなもう一つの理由は、「嘘だろう?」というほど安い品物に出会えることである。  いわゆる”最安値”を探しているわけではない。Aという品物を安く買うためにBサイトや

          送料込み82円の筆を買った

          拾っても硯

           「みんなが小学生のときに使ってたプラスチックの硯って、厳密には『硯』じゃないって言ったほうが近いんだよね」 なんてことをつい口走ってしまうと 「え、じゃあ硯の定義って何?」   と深く掘り下げられてしまう。  あぁ〜またやっちゃったなぁ……なんて思いながら、長々硯の説明をすることになる。  硯とはザクッと言えば「墨を磨る道具」で、墨さえ磨れれば形状は問わない。丸でも四角でも、なんでもいい。それこそ、みんなによく驚かれるのだが、水を貯める場所のない「ただの石の板」でも

          拾っても硯

          プロポーズをされたことが三回ある 

           実は、プロポーズをされたことが三回ある。  うち、二回が平井の町で起こった出来事だから、こりゃ平井オープンボックスに身を置くものとして書かないわけにはいかない。  平井というのは私が生まれ育った町で、東京の下町と言っては聞こえはいいが、四方八方を川に囲まれた島国のようなとてもとても小さな町である。  平井駅から小松川という方向に向かって大黒柱のように商店街が一本通っていて、町の民が商店街を歩かない日は一日もなかろうというくらい常に混み合っている。私も毎日通っていた。

          プロポーズをされたことが三回ある