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23年前のCDコンポを捨てることにしたら予想外の結果に

コンポを捨てることにした。
大学入学のときに両親に買ってもらったコンポ。MDが録音できるやつ。

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1998年に買ったやつだから、もう23年も前のやつ。まだまだ全然動く。さすがSONY。

大学に入学したあの日、6畳ひと間の部屋にホームセンターナフコで買ってきたラック。その1番上に置いて、松たか子のサクラ・フワリを流した。

めちゃくちゃいい。松たか子の綺麗なvocalの伸びが良い!めちゃくちゃ気に入った!

それまではアイワのCDラジカセにKENWOODのMDウォークマンをつないで音楽を聞いてたので格段にレベルが上がった!これはすごい。それからというもの、大学時代、社会人とずっとこいつにお世話になってきた。

いろんな音楽を聞いたなぁ。カウントダウンTVでオリコンをチェックして、隔週くらいでレンタルショップで借りたシングルをまとめたMDを作ったりなんかして。みんなで車で遊びに行くときは、いつも僕が作ったMDを流してた的なね。あの時代の大学生は必ずBGM担当がひとりはいたはず。

春にはGLAYのsoul loveを聞いて、夏にはポケビのPOWERを聞いた。秋にはミスチルの終わりなき旅で復活に歓喜し、冬には広瀬香美のストロボで「冬はこれだな」って思ってた。

1998年は奇しくもCDが最も売れた年であり、音楽業界が盛り上がってた時期だった。上記にあげた曲以外にもたくさんの名曲がリリースされてる。それらは全部このコンポが聞かせてくれた。そんな思い出の詰まったCDコンポ。今日、僕はこいつを捨てることに決めた。

というのも、もう随分こいつで音楽を聞いてない。いまや音楽を聞くのはApple Musicか iTunesに取り込んだ音源ばかり。ものすごく便利な時代になったわけですよ。

加えて、昨年から新型コロナウィルスの影響で俗にいう「おうち時間」が増えた。どうせなら家を快適にしたい。それからというもの、メルカリとか断捨離で不要なものを売ったり捨てたりしてきたわけです。

不思議なもので、不用品がなくなっていくと家が広くなって快適になる。いや、こんなの多分、不思議でもなんでもないんだろうけど、モノを捨てるのが苦手だった僕には新鮮だった。捨てたら広くなる。広くなれば快適になる。快適になれば気分がいい。これはすごいことだ。捨てるってすごくね?

集めたプロ野球チップスカード、着なくなった服、1回だけ余興で使ったうさぎの着ぐるみ、厳選した漫画やCDなどなど。この1年でいろんなモノを処分してきた。

その代わり絶賛ハマってるおジャ魔女どれみのグッズがめちゃくちゃ増えたのでスペース的にはプラマイゼロくらい。プラマイゼロかよ!って感じなんだけど、今まではプラスしかなかったのでプラマイゼロでもすごい快適だなって思った。生きている限りモノが増え続けてた僕にとってプラマイゼロは革命的なわけすよ。

今日も、もう何年も使ってないシーツとかカーペットとか。そういうモノをガサッと捨てようと大型ゴミ処理場に行こうと不用品をまとめてた。そんなとき、目に入っちまったんだ、こいつが…

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「これ…もう随分使ってないよな…」

そう思った僕は決めた。捨てよう、と。

今までの僕だったらこんな決断はできない。使わないとかそういうことでは無く、こいつは思い出だから。捨てたところでたった80cm×30cmくらいのスペースしかあかない。そのくらい許容できない大人でどうする?って感じの気持ち。

でも僕は知ってしまった。そのわずかな積み重ねが部屋を狭くし、そのわずかをコツコツ処分することで家が快適になることを。

そうか、そうだよな。もう使ってないし、これからも使わないもんな。

「よし!」

決めた。捨てよう。人は成長するものだと誇らしい気持ちになり、でもちょっとさみしかったから写真撮ってツイートして、それからゴミ処理場に向けて出発した。

ゴミ処理場に向けて車を走らせる。

いよいよオレもこのレベルの不用品を捨てれるようになったわけか。

車を走らせながらしみじみと大学の頃を思い出してた。ゴミ処理場が近づくとその思いは大きくなっていった。そう、何の因果かゴミ処理場がある安佐南区沼田ってところは、大学時代に僕が住んでた町だったのだ。



町は随分変わってる。そりゃそうだ、23年もたってるんだから。


「ああ、はじめてバイトした酒屋はもう無くなってるんだな」

「ここ、ポプラだったなーよく弁当買ったな」

「あ、こんなところに百均できてる!」

「この坂を登った先輩の家でみんゴルやったなぁ」


とめどなく思い出が溢れてくる。で、ガソリンスタンドがある交差点を曲がったとき、僕の中のセンチメンタルジャーニーがピークに達した。

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大学の頃に住んでたマンション…

思わず駐車場に入って眺めてしまった。変わってないなぁ、いや、この手前のところは駐車場でなく庭だったはず。で、一階は管理人さんが住んでたんだっけ。3部屋に分けて前を駐車場にしたのか。

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通りに出てみる。

「あ、ここ幼稚園だったのに…無くなったんだ」

跡形もなく駐車場になってた。大学にはほとんど行ってなかったけど、たまに行くときここの前を通ると子供たちが寄ってきてかわいかったなぁ…あの子たちももう大人になってるわけか。

いやいや、センチな気分に浸ってる場合じゃない。僕は今日、それらも含めた思い出を捨てに行くわけなんだから。23年ってそーゆーことよ。駐車場を後にし、車を走らせる。

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ふと助手席を見ると乱雑にコンポが置いてある。

イママデアリガトウ、23ネンモ、ツカッテクレテ、ウレシカッタヨ

マジかよ、こいつ…しゃべれるのか…

そんな風に言われると胸が締めつけられる。ごめんな、もう時代が違うんよ。MDなんてどこにも売ってないし、CDすらほとんど聞かなくなったんよ。

デモ、オンガクハ、マダナッテルデショウ?

…そりゃもちろん。
僕はDJをやってる。だから音楽が鳴り止むことはないよ。でも、もうその役目はお前じゃないんだよ。

ソレハワカッテル。オンガクガ、ナクナラナイナラ、ソレデジュウブンナンダ

涙が溢れてきた。

ああ、モノを捨てるってこんなつらいんだな。けど、もうこれは決めたことだから。Twitterにも宣言したし、捨てないとダメなんだから。

ゴミ処理場に向けて車を走らせる。入り口は平日だというのに、けっこうな渋滞になってた。これだけ不用品を捨てる人がいるんだな、と思うといくらか気分が楽になってくる。人はいつだって「自分だけじゃない」と言える言い訳を探してるのかもしれない。



そう、僕だけじゃないんだ。誰もがこうして、思い出の詰まったモノを捨て、今の自分の生活を大事にしていくんだ。

僕だけじゃないんだ。そんなことを考えながら受付の列に並んでると、もう気分はスッキリしてた。うん。

最後にこいつと話せてよかった。思えば僕がDJをやれてるのもこいつのおかげなんだよな、こいつがたくさんの音楽を聞かせてくれたから。もう感謝しかない。たくさんの音楽をありがとう。



「えーーー今日は何をお持ちになられましたか?」

僕の番が来た。係の人が何を捨てるのか聞いてくる。僕は凛として答える。

「カーペットと…ぬいぐるみと。あと子供のおもちゃと…」

「えーーーー家庭ゴミですね、あと、そちらは?」

助手席のこいつと係の人の目があった。僕は迷わず、淀みなく、キッパリと答えた。今、振り返っても実に堂々としていたと思う。




「これは違います。これは別の場所に移動させてるだけです」




「あ、そうなんですね!それは失礼しました!」





そして今、僕はこいつを見ながらこのnoteを書いている。

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どうかしてたんだよ。

たかだかちょっとくらい部屋が広くなる?それだけのことでこいつを捨てようだなんて。

だいたい、こいつが無くなったら家にあるCDはどーやって再生するんだよ?こいつを捨てるならCDも捨てなきゃならないじゃん。そんなのできるはずもなく、つまり理論が破綻してる。

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それにこれから出る新しいCDはどーすんだよ?CDコンポないのにCD買うのか?

そりゃ買うだろうよ、でもなんかそれって違うじゃん。たしかにCD買う頻度は前と比べて段違いに少ないよ!でも応援してるアーティストはやっぱ買うじゃん。そのとき使う使わないは別として、コンポあるのとないのとじゃ違うじゃん。

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あとクローゼットの中にボックスに入れたCDが大量にあるけどそれは割愛

っていうか、この1年でいくつかのCD売ったことにすら後悔の念が湧いてきた。

なんだよ、ちょっと部屋が広くなるくらいでCDとかコンポとか無くそうとしてたのかよ!お前、そんなんでいいのかよ!違うだろ、時代とか他のみんなとか関係ない。お前は違うだろ!お前はそーじゃないじゃん!

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こないだ買ったこのおジャ魔女どれみシリーズの中でも最高峰の出来と言える「ずっとずっと、フレンズ」の劇中曲である「Frends」が入ったMAHO堂ソロヴォーカルアルバムも、せっかく手に入れたのにまだ聞いてないじゃん!コンポねーと聞けねーじゃん!

いや、パソコンに取り込んでiTunesで聞けるって?

いやいや、そーゆーのはナシじゃん!その通りだけどそうじゃないことってあるじゃん!これがまさにそれじゃん!

そう、つまりこのコンポ、買ってよかった。

noteのハッシュタグテーマのひとつである #買ってよかったもの 。たぶんこれはそーゆーことじゃない。最近買ったもので、みんなが参考になるやつを書くやつのはず。

でもこれでいいんだ。なんかもう、言葉に表せないほどの気持ちであふれてる。こいつは僕の親友だ!もうぜってー捨てねーーーーからな!!

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2021.6.10 続編を書きました

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