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495.大工さんをやめて、営業マンになったお話
coucouさんのお仕事論⑲
1.大工さんが営業マンになった話
この不況下の中で仕事がない、と嘆いている小さな工務店がたくさんある。coucouさんは仕事上、建築や、内装会社とのつきあいが多い。
それは、お店関係の取引が多いし、その世界でも長かったからね。
工務店とはいっても元請けよりも下請けの仕事が多い。
coucouさんはもう20年近くこの工務店さんの顧問を引き受けているんだ。
社長はさんはね、元々大工さんだった。
仕事とも順調に伸びて、現場から離れて大工さんたちを育て、大工さん中心の本当の工事屋さん。
coucouさんは顧問と言っても仕事を紹介したり、coucouさん自身のプロデュースするお店などは、いつもの小さなジョイントベンチャーで力を合わせている。
もちろん、この会社も様々なところと取引して現在に至っているのだけれど、やはり、567の中では大苦戦していた。
だって、こんな状況でリフォームしたり、わざわざ銀行借り入れをしてローンを組んで家を建てる人なんて少ない。
そこで、中堅の建設業者からの下請けなどで食いつないできたのだけれど、その中堅クラスの建設業者でさえ大競争の中で苦しみ喘いでいる状態。
そう、業種や業界関係なしの大不況下なんだもの。
特に、時代も変わり、長年、腕に磨きをかけてきた大工さんたちにとっては、プレハブ工法の仕事へと変化し、技術よりもマニュアル優先型となり、以前のような純粋な木造住宅の仕事は激減していた。
大手の建設業が台頭する中で、小さな工務店は次々と仕事を大手に取られてしまう。その理由は、ネームバリューによる「信用面」にあるみたいだね。テレビのCMや大量の宣伝チラシ、新聞折り込みなどを考えるだけでも、まるで勝ち目のないことがわかる。何よりも、イメージで決まってしまう。
大手企業はスーツ姿にネクタイ、アタッシュケースを持参し、二・三人で営業活動を行い、企業のブランドの入った名刺やパンフレットを配る。
当然ながら、営業力、販売力にはとても太刀打ちすることができない。
でもね、この不況下の中で好成績を上げられるようになった工務店がある。
この工務店さんは、大工さんが15人集まって活動している組織。組織という言い方でなければグループだよね。
ここが、coucouさんの顧問先なんだ。
彼らとは、いつものcoucouさんのブレーンストーミングによる「業態の変化」「見せ方の変化」によって、なんとか、この大不況下の中で希望を見出し現在浮上し始めてきた。
その大きな理由は、一切の下請け体質を捨てて、元請け(直接取引)に切り替えることにしたんだ。
だって、利益の薄い、儲けを出せない下請けシステムなんだもの。
そもそも、建築屋さん、工務店は以前もお話した通り、小さなジョイントベンチャーの固まりを昔から行っていた。また、大工さんのシステム時代が互いに支え合うしくみとなっている。
例えば、この会社は、15人全員が「ひとり親方」というシステムで、全員が社長(個人事業主)なんだ。そう、みんなひとりぼっち社長さ。
また、グループ全体を任されている大親方がいて、その彼が陣頭指揮を執っている。彼は大親方で建材屋もしている。
建材屋って、資材・木材を指示通りに加工して工務店に納品する仕事。
そこで、15人、みんなと話し合いをすることにした。
その中の意見の大半は、大手企業の売り方、見せ方にはかなわない…。
そのための新しい方法として、自分たちもスーツを着込み、アタッシュケースを持って、さらにノートパソコンも必需品。
今までのイメージを払拭しようという話となった。
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2.これからは、新しい業態(見せ方)が必要なんだ
だけど、彼は頭を抱えていた…。
個人が大手と勝負するなんて、巨大な水車に戦いを挑んだドンキホーテのように感じていた。資金力、イメージ、対応等、勝てる見込みがない。
しいて言えば価格では勝てるかも知れないが、大手のイメージはなんといっても「安心」「信頼」「保証」がある。価格だけでも勝てる見込みがない。
ましてや、この街には大手の建設会社、リフォーム会社がネームバリューを効かして、大量宣伝、営業をかけているのだからまさに勝ち目なし。
coucouさんはいつものブレーンストーミングを始めた。
そこでは、みんなの考えや意見を否定しない。
みんなの意志が最優先。
でも、みんなも社長と同じ、勝てるわけがない、と思い込んでいる。
coucouさんもみんなの考えや意見を聞き続けていたが、みんなからの突破口がない…。
ただ、沈黙が続く暗い会議となってしまった。
すると、50歳くらいの若い?大工がこんな意見をいったんだ…。
「じゃあ、もう大工をやめようかな?運送屋は人手が不足しているし、賃金がいいようだから仕事を変えるのも一つの方法だよな~」
一瞬だけど、みんなも頷いた…。
「え~今から運転手?配送業だって?俺たちは大工なんだよ!もう何十年も見の世界で生きて来たんだぜ。今さら運転手なんて…」
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大親方の彼も頭を抱えた。彼は現在76歳。
中学卒業後、北海道からこの街に住み、それから住み込みで大工修行をしながら夜間高校を卒業。
それから馬車馬のように働き続け、結婚と同時に独立を果たす。
26歳と言う若さで夫婦で力を合わせて一人親方での工務店を開業。
当時の仲間たちが一人ずつ集まり40年近く一緒に仕事をし続けていた。
おそらく、彼の優しさと人望がみんなを集めたのだと思う。
彼の心配は、家族のことはもちろんだけれど、一番は一緒に仕事をしてきた仲間たち。15人のメンバーの40代、50代は彼が大工の一からすべてを教えて来た弟子たち。それ以外は60歳代の仲間たち。
さあ、どう生きればいいんだ~
何の結論もないまま、みんなは、coucouさんに意見を求めて来た…。
coucouさんて、真剣な眼差しに弱いんだよ…。
だってね、いい加減な答えなんて言えないし、わずかでも顧問料をいただいている身なんだもの(月30,000也~大きい~)。
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3.大工さんをやめて、みんなで営業を始めよう~
そう、そんなに簡単な答えなんてないよね。だけれど、coucouさんの心に引っかかった言葉があった…。
「じゃあ、もう大工をやめようかな?運送屋は人手が不足しているし、賃金がいいようだから仕事を変えるのも一つの方法だよな~」
そう、こんな言葉があった…。
静まり返った事務所の中に男たち15人、彼の奥さんがひとり。
みんなの息の声が聞こえる。
coucouさんはね、奥様にお茶をお願いして、スーパーで買ってきたお饅頭を配った。
う~ん~
coucouさんはね、嫌なことがあったり、どうしたらいいかわからないとき、迷っているとき、苦しいときはね、甘いものを食べるんだ。
だって、美味しいし、なんだか幸せを感じない~
それにね、ちょっとだけだけれど、ほっとしない?
そう、親父たちだって「もぐもぐタイム」は必要さ。
「では、ご提案しますね。あくなでも案です。じゃあ、『大工をやめようかな…』という方の意見から考えて見ました。そう、今までの大工さんの考え方と大手さんたちのやり方を一切無視してみませんか?その理由はね、今までのみんなの仕事意識に、仕事技術、仕事を通した体験や経験に勝てる者がこの街には誰もいないということです。どう思いますか?」
「そんな?俺たちが特に優れているなんて考えたことはない…」
「そうだよな~大手には研修やら教育にお金もかけているししっかりとしたマニアルもある。俺たちには到底勝てる部分がないと思う…」
「ねえ、これって「否定」だよね。この会は一切の否定はなし、coucouさんもみんなの意見に一切否定していないでしょ~聞くはただ~無料だよ~やるかやらないか、受け入れるか、受け入れないか、はみんなの無自由。なんの強制もないよ。coucouさんはみんなと同じ、聞かれたことを答えているんだからね…」
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そして、次の提案をしたんだ~
(1)スーツやネクタイ、カバンなどは持たない。
(2)ねじり鉢巻きに半纏を着る。
(3)アタッシュケースなど持たない、代わりに腰に道具類を持つ。
(4)スーツなんて着ない。いつもの少し汚れた作業着にする。
(5)ノートパソコンなんていらない。
(6)メジャーや平行器、鉛筆、紙のノートと計算機を持つ。
(7)ノートはその場で図が描けるように無地(スケッチブックでもいい)。
(8)半纏は「お助け職人グループ」と太い墨筆字で描かれたユニフォーム。
(9)材料の伴わない仕事は無料でする。(短時間のみ)
(10)みんなでサインペンで描いたチラシをつくる。
(11)福祉住環境コーディネーターの資格を取る。
そして、
「奥さん、奥さん。何かお困り事はありませんか?」
「ご主人さん、玄関の扉が壊れてますよ!」
「台所の水回りはどうですか?」
「棚が必要ではないですか?」
と、地域を決めて大工さんたちは二人一組で訪問する。
相手が留守の場合、自らが手書きで描いてコピーしたチラシをポストに入れる。決して文字は上手くてはいけない。下手でいい。
そう、気持ちがあればいい。
そして、材料を使わない修理は無料で行う。
その代り、「何かありましたらご相談くださいね!」といって帰る。
取っ手が壊れた、扉の空きが悪い、雨どいに枯葉が詰まっている、棚が欲しい、電気の球を交換したい、街頭の玉が切れている、トイレに取っ手をつけてほしい、などお客様が困っていることを無料で行う。
まさにお助け隊。
建築業界、インテリア業界はとても競争の激しい世界。
見積書なども、最初に出した者は負けてしまう。
他社の見積書を見せれば、必ずそれ以下で交渉できてしまう。
このように、個人の企業は大手企業と勝負して勝てる見込みはないけれど、大手企業のできないこと、儲けが薄い仕事はやらない。
ならば大手のできない、小さな仕事ならば個人の技術で簡単に充分に対処できる。
また、ブランド力や宣伝力がなくとも、スーツを着た若者でなくとも、肩書がなくとも、「大工」「職人」というイメージが、彼らのブランド力になる。
一見、時代と逆行したかのようだけれど、お客様の前で、その場で道具を扱い、プロの腕前を見せる営業マンなどいないもんね。
いかに彼らの違いと目立つががわかる。
彼らは、ほっとした顔で、楽しそうにチラシを描いて、コピーして投函を毎日繰り返す。もちろん、この街では評判になった。
だって親切で丁寧で無料でみんなの困っていることを簡単に解決してしまうのだもの。(街では口コミによって評判が広がる)
特に高齢者の人たちには階段の取っ手、や車いすのスロープ、廊下や風呂まわり、寝室などの小さな工事専門の大工さんたち。当然、改装や新築の仕事だってもらえるようになった。どうしてって、「安心」「信頼」を売っているんだもの。
そして極めつけのcoucouさんの提案、「福祉住環境コーディネーター」をみんな資格を取ってもらった。
そう、みんなアドバイザーになるんだ。
そして、お客さまからお金をいただくのではなく、行政からの補助金をいただいて仕事をするので、「完全なる無料」となる。
これからはさらに高齢化社会の時代、おそらくこんなに喜ばれる仕事はない気がする。
※全国どこにでもある、「介護保険居宅介護(介護予防)住宅改修費支給制度
![](https://assets.st-note.com/img/1667121006492-FeVwOtWpCX.jpg)
実は、coucouさんもこの資格にチャレンジしてみようと思っている~
大手が逆立ちしたって彼らには勝てない方法がここにあるんだ。
この会社は皆が社長で、皆が現場職人で、皆が環境コーディネーター(営業マン)なんだよ~
ネットの時代だけれど、アナログの世界は強いね~
みんな~
ここまでおつきあい~
ありがとう~
coucouさんでした~
みんな~
ごきげんよう~
coucouさんのホームページだよ~みてね~
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