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古性のち | Noci Kosho
2018年5月14日 00:30
「ふたりで交換小説をやってみたい」そんな話をしたのは、すこし小雨の降る、京都の町を歩きながら。突然の誘いにきょとんとしながら、それでもすこし考えて「面白そうですね」と返答してくれた彼。そのまま近くの(と言っても、20分ほど歩かせてしまった)ちいさなカフェで、チャイと、チョコブラウニーを食べながら(しかも同じメニューを注文して)、はじめて書いた小説が「喫茶ねこのひたい」だった。 砂漠で一
2018年4月12日 00:02
(今週の共通テーマ:眠れぬ夜)ふと、体に触れた温度が変わったような気がして、目が覚めた。ここはどこなのか、自分が何をしていたのか。頭が混乱している。頭上に広がった薄っすらと見える天井には、少し、古めかしい傘の付いた電球が付いていて、ゆらゆらと揺れたかと思うと見知らぬ声がした。「おや。起こしてしまった?」声の主の、姿は見えない。「大丈夫。何も心配しなくて良いよ」かわりにもう1度だけ
Masato|TOKIORI
2018年3月22日 00:06
(共通の書き出し:多分、トングのようなもので挟まれている)今回は出だしを書き出し小説名作集「猫は挫折を経て丸くなった」から抜粋し、物語をつくっています。*多分、トングのようなもので挟まれている。まったく身動きが取れない状態だったが、今日はとても目覚めがよかった。目覚めたのはほんの少しまえのことだが、随分と前から、この日を待ち望んでいたように感じる。一刻も早くこの喜びをだれかと分
2018年3月22日 00:03
(共通の書き出し:多分、トングのようなもので挟まれている )*今回は出だしを書き出し小説名作集「猫は挫折を経て丸くなった」から抜粋し、物語をつくっています。*多分、トングのようなもので挟まれている。そんな感覚が走ったのは、授業が終わった後の事だった。するどい、だけれど我慢できなくはないような、そんな違和感。自分の体に集中し、その発症もとを手でたどっていると、「起立」と掛け声がかか
2018年3月15日 00:13
(今週の共有テーマ:朝ごはん)半熟たまごの目玉焼き短冊切りのまっかなトマトこんがり焼け目のさくさくパンにマーガリンがひとつ。ほっこり湯気たつ紅茶を注げばわたしの今日が幕をあける。ねむりから覚めたばかりのおなかの中にあつい あまい すっぱい にがいが次々に、われさきに、やってくる。何重も、何重も、層のようにかさなって次第におおきなオーケストラをかなで出す。「たのしか
2018年3月15日 00:02
(今週のテーマ:朝ごはん)*会議のための資料を急ぎで作る。「明日の朝一でも間に合うだろう」と昨夜帰ってしまった結果が、いまのこの状況だ。「こうなることは想像できただろう!」と問われると、想像できたに決まってる。できたとしても帰りたくなることだってあるはずだ。そんなことを頭の片隅で考えながら、ラップトップのキーボードを指先立てて叩いている。マルチタスクと呼ばれるものが大の苦手
2018年3月8日 00:01
(今週の共通テーマ:くつ下)*「靴下を売るお店をひらいちゃいました」なんてあの人が聞いたら、どんな顔をするだろうか。少なくとも「おめでとう!」と言っている顔は、まったく想像ができない。だけれど、たぶんあからさまに怒りはしないだろう。そんな、感情がおおきな波のように表に出るひとではないから。カラン…とベルが鳴る音がして顔を見上げると、地元の女子高生らしきふたり組が、店のなかにはいって
2018年3月1日 00:02
(今週の共通テーマ: 映画館)*「今日のテーマは映画館でお願いします」彼からのメッセージが、いつものようにポーンと届いた。映画館...。映画館? 映画館かあ。わたしは電車の中で、うーんと少し考えてから、読みかけの本を閉じた。彼とのオンラインでの言葉あそび(と呼んでいる)がはじまって、1ヶ月近くが経過した。毎週2回、お互いがテーマを出し合って、それに沿って文章を書く。エッ
2018年2月22日 00:03
(今週の共通テーマ:手のひら)心の中にある感情を、うまく言葉に変換するのが苦手だ。言葉を噛み締めて、じっくりじっくり、考えてしまう。ようするに、口下手な人間だ。「多分あのとき、こう言いたかったんだな」と気付いたときには、相手はとっくのとうにその場からいなくなっている。おかげさまで、相手に届かずに志半ばで死んでしまった言葉たちのお墓の敷地は、広がるばかり(たまにお参りにいく)ペラペ
2018年2月22日 00:02
(今週のテーマ:手のひら)*日中の日差しが恋しくなる少し肌寒い日のこと。今日もいつもと変わらず1日アポ続きで、本日最後、4件目の打ち合わせだった。夕方になる頃にはやや疲れが出てきたが、ジャケット一枚羽織って歩ける、心地よい気温が唯一の救いだった。最後のアポイントは、とある大手企業との打ち合わせで、今回が2回目の訪問だった。このための準備はしっかりとしてきたし、何事もうまくいくような
2018年2月15日 00:02
(今週の共通テーマ: 空港)「到着便のご案内をいたします。アルゼンチンからのEK318は、ただいま到着いたしました」 ついに来た。指先に、ぐっと熱がこもる。僕は片手に持っていた、もうすでにだいぶぬるくなってしまった缶コーヒーをぐいっとあおった。甘さで舌がざらつく。 僕は空港が嫌いだ。世界中とつながっているせいで、大切なものを、手のとどかないほど遠くまで、簡単に運んでいってしま
2018年2月8日 00:02
(今週の共通テーマ:真夜中の散歩)*またどこからか、何度目かわからぬ夜がやってきた。右、左、右、左、右。自分の足が地面をとらえていることに、それを頭がきちんと自覚できていることに、とたん、嬉しくなる。静かなまち。誰もいない道。ドクン、ドクン、と一定のリズムを刻む自分の心臓の音だけに、耳がかたむいていく。どうやら今日もちゃんと「わたし」が帰ってきた。おかえりなさい。ただいま。
2018年2月1日 00:02
(今週のテーマ:喫茶店)*軽快なジャズピアノが流れる店内。久しぶりに友人と話す場所としては、我ながらナイスな選択だった。「大人になったなあって思う瞬間、ある?」唐突に友人が、そう尋ねてきた。彼のブラックコーヒーを眺めながら、初めて喫茶店に訪れたときのことを思い出す。とある男性が、質素なブレックファーストにホットのブラックを飲んでいる最中、ある女性と出会う。映画冒頭のワンシーンの
(今週の共通テーマ:喫茶店)*カラコロと小気味よいベルの音が、乾いた大地に響きわたる。細くあけたドアの間からは、パラパラと細かなオレンジの砂が舞い込んできた。今月は、まだ雨が降っていないからだろう。ぽつり、ぽつりとわずかに生えた緑たちも首をうなだれている。 オレンジの砂の山の向こうに見える空が夜のベールを脱ぎ、薄紫色の化粧をはじめている。こういう日は特別に暑く、雲ひとつなくなること