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創作大賞への応募のため、はじめました。使い方がまだよくわかっていないのでビビりながら使っております。2023.7.8~

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とっておきの「エモい」をあげる 【呼応する星たち】短編 一万字強

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 十七歳にして人生が終わった、と思った。

 教室の扉が開いた瞬間、わたしの心臓は鷲掴みされた。

「だめじゃん、小春ちゃん。いくら好きだからって、人のもの盗んじゃ」

 そう咎められ、咄嗟にポケットに隠した佐野のシャープペンシルは、汗でぬるぬると滑った。

 教室のなかは凍えるほど寒いというのに、身体じゅうの汗が止まらない。グラウンドから聞こえていたはずの野球部のけたたましい掛け声が、途端に聞こ

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ずっとなりたかったんです。詩織様の、下僕に「、を喰らう」第四章 ー 2 【、を×める】

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***

「パートナーは解消しましたよね」

 私を出迎えた氷山は、ひどく冷静にそう言い放った。
 氷柱のように鋭い一言に、胸を一突きにされる。

 玄関まで通してはくれたものの、部屋のなかに招き入れる様子はなかった。

 ああ、やっぱり氷山には新しい女王様がいる。

 妄想は確信へと変わり、胸の業火は劫火へと変わった。
 新しい女王様との世界なんて、いますぐ溶かしてやりたい。

「あのあと……」

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ずっとなりたかったんです。詩織様の、下僕に「、を喰らう」第四章 ー 1 【、を×める】

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 群青の空に丸いオレンジが溶け、紫に染まっていく。
 これからもっと夜が長くなり、風が冷たくなるのかと思うとため息がこぼれた。

 氷の世界の冷たさは恋しいけれど、それ以外の冷たさは私を物悲しくさせるだけだ。

 あれから私は一人きりの週末を何度か迎えた。

 昼過ぎに起きて、洗濯機が回る音を聞きながら遅い朝ご飯を食べ、サブスクで海外ドラマを漁り、気が向いたら筋トレをして汗を流し、お風呂にゆっくり

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ずっとなりたかったんです。詩織様の、下僕に「、を喰らう」第三章 ー 6 【、を舐める】

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***

 次の土曜日も、氷山はいつも通り土下座して私を出迎え、いつも通りアイスコーヒーを淹れてくれた。
 喉を滑る黒い液体は、いつもよりやけに重い。

 氷山の淹れたホットコーヒーも飲んでみたかったな、なんて未練がましく思ってしまう。

 「詩織様……」

 床に膝をついた氷山はテーブルの上のアイマスクにそっと手をのばし、私を見上げた。
 その視線に決意を揺さぶられてしまいそうになり、下唇をぎゅ

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***

 主従関係に信頼は大切だと、なにかで聞いた気がする。

 いや、主従関係だけではない。
 信頼は人間関係において大切なものだ。

 信頼がなければ家族だって友達だって仕事だって失ってしまう。

 それなのに、私は最初から嘘をついてしまった。

 女王様以前に、人として不正解。
 まったく正しくない、曲がった行為。
 
 

「えっ?」

 思わず、パスタを巻いていた手が止まった。

 彼

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ずっとなりたかったんです。詩織様の、下僕に「、を喰らう」第三章 ー 4 【、を舐める】

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***

 それから毎週末、氷山と私は氷山の家で逢瀬を重ねた。

 一日中女王様と下僕プレイをしているわけではなく、コーヒーを飲みながら話すこともある。
 話すのは主に私で、会話をしている時間よりも沈黙の方がずっと長いけれど、氷の世界ではそれは苦ではなかった。

 なぜなら私の目は毎秒氷山を捕え、私の鼓膜は氷山の呼吸一つ一つを拾い、私の舌は氷山のアイスコーヒーで潤わされ、私の鼻は氷山の香りを吸い込

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***

 氷山への返信は、一晩置いた。

『会ってあげてもいいけど』

 この返事が女王様として正解なのかはわからないけれど、氷山からのお礼の返信はすぐにきた。
 それはまるでスマートフォンにべったりと貼りついて私からの返信を待っていたかのような素早さで、その後のやりとりも間髪空けずに返信がきた。

 どうやら私の想像以上に、氷山には詩織様の存在が深く刻まれているようだった。

「暑いなかわざわ

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***

 昼のチャイムが鳴り、フロアにいる半数ほどの社員は昼食を求めて席を立った。

 午前中の業務はちっとも捗らなかった。
 おまけにコーヒーカップを二回ほど倒しそうになり、キーボードの音しかしないフロアで「わあ!」とちいさな悲鳴をあげてしまった。

 午後はしっかり集中しよう。
 ミスをして叱責される姿を氷山に見られたくはないし、公私混同もしたくない、と思ったけれど、買い出しにかこつけて連絡

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 ブルーマンデーならぬ、ディープブルーマンデー。

 重い足取りで出社した私に、氷山はいつもの顔で「おはようございます」と言った。
 土曜日の出来事がすべて私の妄想だったのではないかと錯覚する。

 妄想ならありがたい。
 妄想であって欲しい。

 しかしグラスの破片で切れた指先は、絆創膏を赤く染めていた。

 氷山にねっとりと舐め上げられた指。
 あの舌の感触も温度も高揚も、すべて完璧に思い出せ

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 帰宅した私は脱皮するかのごとくずるりと服を脱ぎ、下着姿になった。
 冷蔵庫からハイボール缶を取り出し、プルタブを引く。
 反射的に腰に手を当てながらごくごくと飲み、喉を潤わせていった。
 プハーッと大きく息を吐きだしてから、缶に残ったハイボールをグラスへ注いでいく。

 きらきらしゅわしゅわ。
 煌めく琥珀色。
 眩しい世界。
 真っ黒な氷の世界とは、真逆の世界。

 どうやら氷山は、

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 私は泣く泣く氷山を止める。

「ひ、氷山、やめて……」

 氷山はすぐさま指先から舌をほどき、身体を離した。
 指先はてらてらとひかり、少しだけ血が滲んでいた。

「申し訳ありませんでした、詩織様。僕ごときが詩織様の血を舐めるだなんて……。勘違いも甚だしかったです」

 氷山はまだ笑えない冗談を続ける。

「ねえ、その冗談、もうやめない?」

「僕に手当をさせてくれませんか、詩織様」

 嚙み合

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「もちろんいいよ」

「ありがとうございます、詩織様」

「なに、様なんか付けちゃって。詩織でいいよ」

 驚いた。氷山でも冗談なんて言うのか。
 別に笑える冗談ではないけれど、この変化はうれしい。氷山と私は、もうただの同期ではないのだ。

 これからたくさん、いろいろな氷山を見ることができる。
 誰よりも、一番近くで。

「いいえ。詩織様です」

「それ、なんの冗談?」

「詩織様……」

 し

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「どうぞ」

 しなやかな指先がアイスコーヒーを差し出した。

 氷山の体躯のように、すらりとしたシルエットのグラス。
 疚しいことばかり考えていた自分に少しの罪悪感を覚えながら、私はグラスに手をのばした。水滴が、ひたりと指を濡らす。

「豆からだなんて、すごいね。本格的」

「たいしたものではありません」

 氷山がつくっている時点で、それはもう「たいしたもの」。
 どこのバリスタがつくったもの

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***

 氷山の家にはすぐに着いた。

 まだ築年数の浅そうな大きなマンション。
 入社二年目でこんなところに住めるものだろうか。しかも住んでいるのは最上階だという。

 氷山は愛想以外なんでも持っている。

「どうしてこんなに立派なところに住めるの?」

「ここは親戚の所有しているマンションで、手頃な価格で貸してもらえたんです」

 氷山はエレベーターのボタンを押しながら淡々と答えた。

「い

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ずっとなりたかったんです。詩織様の、下僕に「、を喰らう」第二章 ー 2  【、を舐める】

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***

 土曜日、待ち合わせのちょうど10分前に氷山は現れた。

「お待たせしました、火山さん」

 いつもの調子で言われた。社外でも社内でも、なんら変わりはない。

「待ってないよ。私も、さっきちょうど着いたところ。行こうか」

「はい」

 平静を装ってみるものの、私のなかではちいさな私があちこちをジタバタしながら駆け回っていた。

 まさか氷山が半袖だなんて。
 まさか鎖骨が見えるなんて。

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 茹だるような昼下がり、幸運は突如舞い降りた。

「ダブルヒヤマでビンゴの景品を買ってきてくれないか? 来週末の飲み会までに、お願いしたいんだけど」

 氷山と私を手招きした部長は、たぬきのような笑顔でそう命じた。

 どうして飲み会に来ない氷山と私を指名するのか。
 今時、買い出しではなくネット通販で済ませたりはしないのか。

 部長にツッコミを入れたい点はあるけれど、これは私にとってまたとない

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