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私を大事にしてくれた人のこと
長年お世話になっているカウンセラーがいる。その人に「あなたはおばあさんがいたから生きてこれたのかも知れませんね」と言われたことがある。私はその時不思議だった。おばあさんとは、同居していた父方の祖母のことだが、私はカウンセラーに聞かれるまで存在をほとんど忘れていたのだ。
そして、それを言われて、ぶわっとたくさんのことを思い出した。
うちは私が生まれたとき、父方の祖父母、私の両親、兄の6人家族だっ
坂口安吾全集を売った日
思い出話をしよう。
私は東大の日本語日本文学の研究室に学部〜修士課程まで、合計5年在籍していた(学部で1年留年している。研究室配属前を含め、大学を7年かけて卒業した計算になる)。専攻は散々迷ったけど近代文学で、これも散々迷ったけど、実はタイトルの坂口安吾ではない作家を研究していた。といっても研究と言えるほどのことは何一つできていなかったけど。
坂口安吾について、私は先行研究より深く研究できる気
「でも、ここまで育ててもらったんでしょ?」という言葉
「でも、ここまで育ててもらったんでしょ?」
「世の中には大変な人はたくさんいるから、あなたは恵まれてるよ」
これはとても残酷な言葉だと思う。人の地獄に相対はない。私はそう思っている。一人一人の、一つ一つの地獄が、ただ個別の事象として存在しているのだから、比べられるものではない。
確かに衣食住に不自由したことはなかったし、現役で東大に行けるくらいの教育費はかけてもらった。学部の学費も出してもら
なぜ家族のことを書くのか
家族のことを書いていると、忘れていたシーンを驚くほどたくさん思い出す。
パジャマのまま玄関から締め出されて、通行人に横目で見られる恥ずかしさ。小学校で脊椎側湾症という病気だと言われ、母に病院に連れて行ってもらうよう頼んだけど、うるさいと一喝されたときの目の前が真っ暗になった感じ。熱を出すたびに怒られたこと。小学校のドッジボールのチーム分けで、いつも誰からも望まれず最後まで残ってしまっていたこと。