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#散文詩

【詩】最後の友達

夢の中で、私は時々男の子で、海の見える学校に通っていた。

一人目の友達は、夏休みの前に転校してしまった。
二人目の友達は、空想上の家族に手紙を書いていた。
三人目の友達は、新月の夜について話してくれた。
四人目の友達は、「かしこい兎」と呼ばれていた。
五人目の友達は、この町のことを何でも知っていた。
六人目の友達は、一人目の友達とよく似ていた。
七人目の友達は、飴玉みたいな声で笑っていた。
七人

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【詩】朝になるといなくなる星

ずっと見つめていないと、消えてしまいそうだった。
ずっと見つめていたところで、どうせ消えてしまうんだけど。
「朝になるといなくなる星みたいでしょう。」
だったら星の寿命ぐらい、長生きしてくれたらいいのに。
朝になっても、私が死んだあとも、ずっとそこで、光っていて。

【詩】君が撮る写真

君が撮る写真は、いつも遺影みたいだった。
花も、空も、動物たちも、ぼくも、
ファインダーの中で息絶えて、
いつでも永遠になれたんだ。

【詩】風船が飛んでいくのを見ている

青い空、海の底のように青すぎる空に、
鮮やかな、混ざったことのない絵具のような色の風船が飛んでいく。
君が手を放したのは一度だけなのに、
私は何度も何度も、その風船が飛んでいくのを見ている。
瞳の奥で、脳の裏側で、心臓の端っこで、
あるいは名前も知らない器官のどこかで。
千回見送ったあと、千一回目の風船を眺めながら、
ああ、これが永遠なんだ、と思った。

【詩】神様も、天使も、死神も、みんな同じような顔をしている。

【詩】神様も、天使も、死神も、みんな同じような顔をしている。

神様も、天使も、死神も、みんな同じような顔をしている。
見分けがつかないと言うと、見分ける必要はないと言われた。
望んでいたはずの終わりはあまりに呆気なく、
危うく通り過ぎてしまうところだった。

神様との決別の日。
(日付は何度も書き直している。)

あと何回思い出すのでしょうか。
今日のことを。
思い出すたび、
鉛が砂に沈むように、
少しずつ胸に押し込まれて、
いつかは見えなくなるのでしょうか

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【詩】新しい王子様

新しい王子様が産まれたので、その日は国民の祝日になった。
でもほんとうはずっと前から、私だけの記念日だったのに。
新しい王子様はどろぼうだ、どろぼうだ。
そう言って、大声で泣きながら歩いていたら、
いつのまにか牢屋に入れられてしまった。
私がここにやってきたのは、そういうわけなのです。

【詩】壊れた月

壊れた階段の先にある壊れた窓、
それは壊れた月です
「満月を叩き割りたい、完璧は嫌い、未来がないから。」
そう怒って泣いていた、
君のための月です

【詩】星について

みんなが想像している太陽と、私が想像している太陽は、まるで別物みたいだ。
月もそう。
星は、なんとなく似た形をしているようだった。
だから最近は、星の話ばかりしてしまう。
星の話をしている時だけは、みんなと同じになれたような気がして。

【詩】低気圧だったから

天気予報が外れただけで何をすればいいのか分からないし、
昔好きだった人のことを何て話せばいいのか分からない。

ぼくたちはぼくたちの上に降り注ぐ雨の色を知り得るか?
水で洗えば、すべて綺麗になるとでも思っていそうな土砂降り。

低気圧だったから。
「また会いましょう」という社交辞令が、どうしても言えなかった。

知らない間に水溜まりができて、
知らない間に乾いた道路は、
きっと昨日と同じにしか見え

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【詩】これはぜんぶ昔の話

【詩】これはぜんぶ昔の話

これはぜんぶ昔の話。
そしてこれから起こるかもしれない話。

この物語は実話ですが、フィクションだと思っていただけると幸いです。

どんな店でも半年で潰れる四つ角を曲がり、黒猫が横切るの確認したら、私の家はもうすぐそこである。

友人の結婚式に出る度に「こんな人と暮らすくらいなら一人がいいなぁ」と思い続けてきたけれど、たった一度だけ「羨ましい」と思ったことがあった。

いつまでこの世界にいなければ

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